表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

探偵と怪盗

作者: 笹崎咲


「所長、珈琲が入りましたよぅ」


「有難う」


「それ、今度の依頼ですかぁ?」


「ええ。また何処かの暇な怪盗さんが、お遊びに招待してくれたみたいでね」


「あはは、酷い言われようですねぇ」


「この御時世に怪盗を名乗り、(あまつさ)え予告状まで出すなんて。探偵小説の読み過ぎじゃないかしら」


「探偵小説じゃあ、探偵が主役なんですから怪盗は負ける運命(さだめ)じゃないですかぁ」


「あら、探偵と力関係が拮抗し、数多の良い勝負を演じれば怪盗も読者に好かれる立派なキャラクターになれるのよ。探偵の好敵手(ライバル)として、ね。悪ぶってるお年頃の子供達に人気が出るわ」


「……じゃあ、その依頼の怪盗さんは所長の好敵手ですかねぇ?」


「あらあらとても。……そうね、少しは変装の腕を上げたみたいだけれど、私の好敵手を名乗ろうなんて十年早くてよ? ーー怪盗さん」


「…………バレてたか」


「変装の腕を磨くより先に、珈琲の腕を磨く事ね。私の助手はバリスタの世界大会に名を残しているのよ?」


「マジかよ……あのちんちくりんな嬢ちゃんにそんな特技があるとは」


「人は見掛けによらないものよ」


「全くだ。こんな可憐なお姉さんが探偵事務所の所長だもんなあ……肉体派の」


「あら、私は何処までも頭脳派よ。ただ時々往生際の悪い犯人を屈伏させているだけで」


「頭脳派を名乗る女が元とは言えプロレスラーをフランケンシュタイナーで落とすなよ! 朝刊見て味噌汁吹いたぞ!」


「貴方和食派なの? ……それこそ探偵小説よろしくトリックを暴かれたのなら降参すれば良いだけだったのよ。武術を嗜むものならより一層、散り際は美しく在るべきだわ」


「プロレスって武術か……? 本当に、末恐ろしい女だな」


「そう思うのならわざわざ毎回予告状を警察へ送り付ける度に私を名指しで呼ばないでくれる? 

 顔見知りになってしまった刑事さんに

『いったいあんたらはいつの時代の探偵小説を生きてるんだよ』

 って皮肉を言われたわ」


「世界一の怪盗には世界一の探偵が必要なのさ、光栄に思って欲しいね。それに俺が警察に送ってるのは予告状じゃなくて挑戦状だぜ。あんたへのな」


「本当迷惑だわ。何で警察に送るのよ、真っ直ぐ私に送れば良いじゃない」


「前にそれやったらガン無視したじゃねぇか!」


「だって他の依頼があったのだもの。あのね、探偵は職業なの。雇い雇われ賃金が発生しなければ仕事じゃないわ。

 私は別に探偵小説や探偵ドラマに憧れて探偵になったわけじゃないのよ、ビジネスなの。あなたのお遊びに付き合って私に何の得があるのよ? 

 寧ろ妙な評判ばかり付いて困ってるのよ? やれ、現代の明智小五郎だのシャーロックホームズだの……私の仕事は浮気調査に失踪人の捜索、迷い猫探しなの。突然孤島の西洋館に呼びつけられて殺人事件の推理なんてやりたくないのよ」


「ああ、そんなんもあったらしいな。……でもそれ、確か館に付いてあらましを聞いた瞬間にトリックを暴き犯人を追い詰め、自殺を図った犯人を回し蹴りで昏倒させて解決したんだよな?」


「あんなガッタガタのトリック猿でも解るわよ……トリックなんて高尚な物でも無かったし。行き当たりばったりが上手く嵌っただけだったわ」


「猿じゃ解らなかったからあんたが呼ばれたんだろうが……」


「動機が財閥の旦那様とその妾の間に生まれたが故に冷遇され一族を恨んだってのは、まだ分かるわ。

 でもやった事が瓜二つの正妻の子供と入れ替わって一族の乗っ取りを目論んでの旦那様と正妻を殺害って何? 何時の時代の話? 今時二時間サスペンスでもやらないわ」


「すげぇな、そんな漫画みたいな話本当にあるんだ」


「現代日本で怪盗やってるあなたが言う?」


「それもそうか」


「一番の突っ込みどころは、犯人は男で瓜二つの正妻の子供が女だったって事よね。どうするつもりだったのかしら……

 手術? モロッコに行くの? 男として大事な物失ってまで復讐したかったのかしら」


「まあ、本人も後先は考えて無かったんじゃね?」


「なら先祖の作った歌に見立てて連続殺人とか手の込んだ事しないで欲しいわね……」


「孤島の西洋館、財閥一族、見立て殺人……すげぇ、マジで探偵小説だな」


「他人事なら私だって『今時有り得ないわこの設定ー、ちょーうけるー』とか笑ってたわよ」


「あんた『ちょーうける』とか言うの?」


「生まれてこの方リアルに言ったことは無いわね」


「だよな、古典的怪盗目指してんのに好敵手に決めた探偵に『ちょーうける』とか言われたら自首するレベルで萎える」


「あら、じゃあ今日言おうかしら」


「止めてくださいマジで堪忍」


「そうね……

『やだー、数日前から警備員に変装して内部に入り込み館内を熟知してセキュリティーにハッキングして無効化、時限装置で停電させ煙幕を張って場を混乱させその間に獲物をゲット、

 逃走方法はあえて博物館からの脱出では無く巨大な展示品の中に身を潜ませてあたかも消えたかの様に見せるなんてちょーうけるー』

 みたいな」


「うえっ、やろうとしてることモロバレ!?」


「えっ、本当にそんな幼稚園児みたいな事やろうとしてたの? 次の日アメリカに移動する巨大金属像に隠れて? 

 ……博物館の見取り図見てまさかこんなつまらない事しないわよねーとか思ってたんだけど」


「本気でそう思ってるからタチが悪いよな……」


「あら……その他にもこの獲物ならこうするかしらと十二個程トリックを考えてたのだけれど……無駄になったわね」


「…………今日の挑戦状取り消す……」


「それは有難いわ。今日はとある社長夫人の浮気調査の依頼が入ってるのよ」


「怪盗より浮気調査!?」


「だから、一文にもならないあなたのお遊びより大企業の社長直々の浮気調査依頼の方が私にとっては大切なのよ」


「何で神はこんな女に探偵として最高のスキルを与えたんだ!」


「あら、犯罪者なのに神とか信じてるの」


「あんたは信じて無さそうだよな」


「宗教も一つのビジネスよね」


「全部それで片付けるなよ!」


 初投稿。練習として会話文だけ。地の文書くの苦手なんですよね……修行せねば。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ