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ナニワ風俗潜入レポート

ちゃんと風俗潜入レポートっぽくしてみました。まだ18歳以下でも見られるようになってると思うんですけど、どうなんでしょう?マズイと思ったらご一報ください。18歳以下でも見られるようにあんまり具体的な内容は書かないようにしました。次からは風俗情報誌から逸脱していくと思います。

 月面基地ナニワの風俗はその成り立ちのせいで少し特殊だ。ほとんどが一杯引っ掛けて一発抜く地球の風俗と同じタイプだが、一部の店は地球の風俗とは随分異なる。

 今日は月面基地ナニワの代表的風俗店「おかえりなさい」に潜入してみた。出入り口はケバケバしい電飾はされていない。店内に入るとそこは普通のマンションのロビーのようだ。管理人のような風貌をしたおっさんが暇そうに窓口に座っているのに気付いた。

「おかえりなさい。そこに鍵あるからさっさと家に帰ってやりなよ」

とおっさんは声をかけてきた。窓口の隣りに写真のプレートがあり、それぞれに部屋の鍵がついている。

 エレベーターにのり指定の部屋に向かう。部屋までの廊下やエレベーターなども一般的なマンションとほぼ変わりない。廊下の壁の片側は巨大液晶パネルがはめ込まれていてそこには公園と夕方の公園が映し出されておりまるで地球に居るかのような錯覚を起こす。そうして歩いていくと指定の部屋に着いた。

 部屋に入ると嬢の出向かいはない。部屋の奥から「おかえりなさーい」と言う声が聞こえてくるだけである。

「ご飯は食べてきたの?」

と聞かれる。そう言われてみると昨日、月に着いて支給品のカロリーメイツっぽい宇宙食を食ってから何も口にしてなかったので腹が減っていた。

「いや、喰ってないよ」

思いのほかすんなりと旦那風の返事が出来たのでびっくりした。リビングにある席に着くと

「もう、遅くなりそうな時は電話してって言ってるでしょう。今日はどれぐらい居られるの?」

と彼女は料理をテーブルに置きながら怒っている。「おかえりなさい」は電話予約が可能で予約を入れるといろいろなサービスを追加できるのでそのことを言っているのだろう。「2時間ぐらいで行かなきゃいけないんだ」と答える。遊び心がうれしい。

 晩御飯はカレーライス。どんな褒め上手の料理評論家でもレトルトカレーですねとしか評価しようがない味だ。これを食べ終わるとプレイに入ってしまうなと思い、ゆっくり味わってカレーを食べつつ質問を考えていると

「お隣りの川口さんの旦那さん、穴堀りしてるらしいんだけどなんか変なものが出てきたんだって」

と向こうから世間話をはじめる。説明しておくと穴掘りとは月ではよくある肉体労働でヘリウムスリーやチタンなどの鉱物を掘削する末端の作業員のことである。

「何か変なもんでも見つかったのかい?」

興味もあったし、夫婦の演技を壊さないで仕事の内容について聞くのは難しいのでそのまま世間話を聞くことにした。

「それが何かの遺跡らしいのよ。」

眉唾である。興味も失せたのでプレイに移ることにした。

 プレイ内容は非常に一般的で、お風呂に一緒に入り、体を洗ってもらい、愚息を口に含んでもらったりローションでぬるぬるになったり、シックスナインしてみたり。なかなかテクニシャンでした。地球から月にくるまで身体検査や移動で2週間も溜まっていたためか、重力が少ないのが関係しているのかはわからないが愚息はすぐに昇天してしまった。随分と時間が余ってしまったのでインタビューをしてみることにした。

「実は俺は潜入ライターなんですけどインタビューしてもいいですか?」

と聞くと快く引き受けてくれた。

 21歳で月に来て今年で3年目の23歳、あと数ヶ月で地球に帰るそうだ。

「なんで月で働こうと思ったの?」

と聞くと彼女は少し悲しそうな顔をした。あまり仔細を聞くと泣かしてしまうかもしれないと思いそれ以上は聞くまいと思い、すぐに別の質問を考えたが、彼女は先の質問に答えてくれた。

 普通に高校を卒業し、大学に入って普通の女の子として教育学部で勉強をしていたそうである。大学2年の時に両親が事故で他界、両親に自宅のローン以外に借金はなかったものの学費と実家のローン返済のために風俗店で働くことにしたのだと言う。大学は休学中になっており卒業したら教師になりたいそうだ。月に来たのは学校の先生になった時に風俗嬢をしていたのがバレにくいからとなかなかのしっかり者である。

 「それよりさっきの話の続き聞いてくださいよ」

と彼女のほうから質問を促してきた。月面に遺跡があるという話だ。どう考えても眉唾すぎるのでスルーしたかったのだがこういわれると聞かないわけには行かない。これでもわたくし、いっぱしのジャーナリストなのだ。

「ホントの話なの?」

まるで少女のように目を輝かせて彼女は話し始めた。

 月面基地には多数の掘削場がある。掘削と言っても実際には月表面にしかヘリウムスリーは存在しないらしく表面部分の土砂をブルドーザーでかき集めて集積場へと移送する。土砂集積の作業員と土砂を加熱炉で処理する作業員が月の住人の多くを占めている。彼女が話を聞いたのは土砂集積作業員7名、彼らは全員同じ作業所で働いていて別々の日に作業していたそうだ。

 あまりに風俗情報から話がかけ離れてしまったし、彼女の話も尽きるめどが全然立たないので別の話に変えようと思い

「やっぱりお客さんは土木作業員とか肉体労働の人が多い?」

と別の質問をしてみたが、考えてみればほとんどの住人が肉体労働者なのだから聞くまでもない話だった。そろそろ帰ろうと、服を着てカバンを手に取ると

「今日、お給料日でしょ。」

といきなり夫婦芝居に引き戻された。同時に風俗店に居ると言う事実にも引き戻されたが金を支払い部屋を出た。

「いってらっしゃい。」

 彼女のいってらっしゃいを背に部屋から出て少し思った。私は月に来てまだ2日目、2年3年と家族から離れて生活していると、嫁が自分の娘のような年齢でも擬似家族のようなことをしてでも家族の温もりを思い出したいと思うのかもしれない。

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