発見?
1時間目が終わり、休み時間。
首藤がプリントを健太に渡した。
「やーまじ助かったわー!さんきゅ!」
「まあ俺のじゃねえけどな」
その通り。
俺たちが借りていたのは、河合佑樹のプリント。
ヘル好き仲間の『ゆうき』かもしれない人物のプリント。
悠は思い切って健太に申し出をした。
「あのさ、直接お礼いいたいから、プリント返す時ついてっていい?」
「あ、俺も俺もー」
「おー。いいよ。昼休みな!」
どうやら河合佑樹と健太の間では、返却時の約束も済んでいるらしい。
昼休み。
悠にとって、運命の出会いになるかもしれない時間。
その時間までの授業3つ、どれも全く集中ふることができなかった。
そして運命の昼休み。
「とりあえず佑樹のとこ行ってくっか」
健太の申し出で、昼食の前にプリントを返しに行くことにした。
河合佑樹は隣のクラス、移動など一瞬だ。
隣、2年3組の教室の前の扉は開いていた。
健太は何の迷いもなく、中に入っていく。
「おーい佑樹ー!」
その声で振り向いたのは、黒髪に眼鏡、そして少し日焼けしている、小柄な、どちらかと言わなくても地味な男子だった。
椅子だけ後ろを向けて、後ろの席の友人と一緒に昼食をとっていたようだ。
「あ、健太」
「プリントさんきゅー!」
「いいよ別に」
すごく穏やかな空気を持っている。
こいつが『ゆうき』か?SNSほどの口数の少なさは感じないが……。
「実は俺だけじゃなくて友達にも見せちゃった」
それに大しても、「ふぅん」といった様子で、特別気にする風でもない。
「さんきゅ!」
隣にいた首藤の声で現実に引き戻され、悠もあわててお礼を言う。
「あ、ありがとう!助かった」
「どういたしまして」
こいつは『ゆうき』じゃないのか……?ヘル好きにも見えないし、SNSのような素っ気なさも感じない。
観察している悠など気にせず、健太と河合佑樹とその後ろの席の男子で、放課後の話をしている。
どうやら後ろの席の彼も、テニス部であるようだった。
「じゃ!また明日!」
そう言った健太に続いて、悠たちも3組の教室を後にする。
また明日?ああ、今日は部活休みみたいな話してたな。
『ゆうき』のことが気になって、思考がまとまらず、ぼんやりとそんなことを考える。
考えている間に、あっという間に2組の教室にたどり着いた。
「弁当食おーぜー」
昼食中も、悠は健太や首藤の話になんとなく相槌を打つだけ。
「そういや河合?と仲良いんだな。タイプ違くね」
会話に集中できずにいた悠も、河合佑樹の話題になった途端、会話に食いついた。
「それ俺も思った!どういう知り合い!?」
急に食い気味になった悠に、健太は「お、おう」と少し引いてから、話し始めた。
「中高って、学校も部活も同じだけだよ」
なんてことない、ただそれだけ。
しかし、どんな情報であっても『ゆうき』に繋がる手がかりになるかもしれない。
悠は、河合佑樹についての情報も集めていこう、と決めた。