退屈
「あーあ、なんか面白いことねえかなー」
悠は普段利用しているSNSを覗いた。
そこには、クラスの友人が投稿した、なんてことのない短い発言がずらっと並んでいる。
その文章を読んでいたが、あっという間に読み終わってしまった。
「まだ10時だろ。寝るには早いしなー」
ベッドで横になったまま、天井を見上げた。
しかし天井に何かあるわけでもない。
もう一度スマホを持ち上げ、SNSに目を戻す。
「そういや、繋がってない奴らってどんなこと書き込んでるんだろ」
悠が利用しているSNSは、自分と繋がりを持っている人の投稿は、わざわざ相手のページを覗かなくても、自分のページに一覧になって表示される。
その一覧の分は読みきってしまったので、繋がりを持っていない人のものを読みに、相手のページへといくことにした。
「友達の友達を辿っていけば、誰か面白い奴に会えるかなー」
どんな人のを読もうか、クラスの女子か、はたまた先輩か……面白そうな人を探して、友達の友達へ、更にまたその人の友達へ、とページをジャンプしていく。
何人かの投稿に目を通すが、これといった面白味もない。
「ん?」
しかしジャンプを続けていくうちに、悠の興味を惹く人物を発見した。
『高2/読書/ヘル』
それだけの短い自己紹介文がだったが、悠が興味を持つにはそれだけで十分だった。
「ヘルって……ヘルヘイムのことだよな?え、まじ?」
ヘルヘイムとは、悠が好きなインディーズバンドである。悠の周りに、ヘルのファンは一人もいない。
「おおおおお!すげー!ヘルのファン発見!!」
驚きと興奮で、がばっと上半身を起こし、スマホに食い入るように前のめりの姿勢になった。
「高2って、同い年じゃん!健太のとこから飛んだし、もしかして同じ高校?え、誰だ誰だ」
プロフィール欄の「ヘル」という言葉にばかり目がいっていたため、名前など見ていなかった。
「えーと…『ゆうき』?そんな奴いたっけ?女?」
その名前にピンとこなかった悠は、『ゆうき』の発言を遡ってみた。
『ゆうき』は発言量が少なく、1日に1回投稿するかどうか、といったレベルだった。それも、
『疲れた』
『一週間長い』
『塾』
といったような、内容がまったくといっていいほどないものや、読んだ本の感想ばかり。その感想も
『面白かった』
『微妙』
レベルだったのだが。
ヘルについて書かないのかよ……と思ったところでちょうど
『ライブ楽しみ』
という投稿を発見した。
「ライブ?再来週の土曜のやつか?」
そのライブには悠も行く。
それまでに、何としてでも『ゆうき』の正体をつかんで見せる!と決心した。
直後。
「あ、健太に聞けば一発か」
と気がついた。
明日学校に行った時にでも……と思ったが、また気がついた。
「そうだ。どーせ暇だし、自分で探そ」
まずは投稿を遡ってみよう!と思い、遡り始めた。