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彼の視点(3)
驚いた。
彼女も皆と同じように言うと思っていたから。
彼の外見や雰囲気から、いつも皆「似合わない」と言った。
たとえ似合わないと思われても、自分で決めた道だ。
「似合わない」と言われる度にそのことを再確認した。そうして、意固地になっていく。決意が揺らいだ時に何かを失いそうで怖かったから。
そのくせ、どこかで不安になって。
だから、しっかりと立っておくことしかできなかったのだ。
守る彼と探す彼。
矛盾した気持ちが彼の天秤を揺らす。
そんな彼の天秤を彼女はそっと止めた。
彼女は、
「似合わない」と言わなかった。
ただそれだけの事で、身構えていた心がスルリと解けていくのを感じた。
不思議だ。
ただ認められる事で、こんなにも、
…満たされるのか…