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彼の視点(2)
さすが鷹也さんだ。人間観察力が半端ない。いや、野性的勘と言うべきか?
彼は歩きながら、小さくクスリと笑った。
彼女はこれでまた気付いただろうか。
隠しているつもりでも、鋭い人からしてみると、彼女が思っているほど完璧ではないということ。
彼女が身につけたのは、本質的には、彼女が思っているものとは正反対に位置するものだったということ。
そんなもの、身につけてほしくなかった…
本音を隠して彼は歩く。
隣では、その彼女が歩いている。彼があの頃憧れていた部分を、何故か隠して。