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夏の道  作者: 遠野 紗
1/8

Prologue

 ゛オニさんこちら、手のなるほぉへ〜っ”



 八月の半ばも過ぎた盆の午後。

 蝉の声が響く田舎道でその青年が思い出したのは、呼び声だった。青年がまだ小学校の低学年だった頃、今から約十年前に聞いた声だ。夏休みに父方の実家へ帰る度、遊ぼうと誘いに来た少女の声。


 真っ青な空、

 濃い緑の木々、

 あぜ道、

 蝉の声、

 あの子の呼び声

 …。


 何故か今でもはっきりと思い出すことができる。それだけ鮮やかな記憶として青年の中に残っていた。


「トモくん。明日、れいが帰って来るんじゃけど、駅まで迎えに行ってくれんかねえ。道、忘れとるじゃろうから」


 隣のおばあちゃんに頼まれたのは昨晩のことだ。聞いた瞬間、微かに鼓動が速くなったのを感じた。


 あの子が帰ってくる。


 駅へと続く道の上。ふと見上げれば青い空。



 ゛オニさんこちら、手のなるほぉへ〜っ”



 彼女を探す彼がいた、



 彼女を探す彼がいる、



 あるいは彼を…彼を探している彼がいる、



 ある夏の午後。


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