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第六章・言葉と拳

作者視点と主人公視点って書きずらい。

「レン…ごめんよ…」



「レン…ごめんね…」




「お父さん?…お母さん?…どうして謝るの?」



「え、どこに行くの?待って!ねぇ行かないで!」



「……さよなら…」



「お父さん!お母さーーーーん!!」







バッ!



「ハァ…ハァ………」



窓から朝日が射し込んでいる。空には清々しいほどの青空が広がっていた。




「こんな日ぐらい、良い夢を見たいものね………リリス」




「何〜?」



「着替えるから制服取って」



「オッケ〜」




リリスとは、私が契約している風の精霊だ。見た目は同い年の女の子だが、性格はとても子供っぽい。




「またあの夢見たの?」



着替えているとリリスがそう聞いてきた。




「…何で分かったの?」




スカートをはき、着替え終わると。リリスに聞いてみた。




「だって、その夢の時はいつも朝私の事を呼ぶんだもん」




「そうだっけ?」



意外な所で妙に鋭い…。




「今日は頼むわよ、リリス」



「任せなさい!」




(……アイツのためにも少し頑張ってやろうかな)




「ん?、どうしたの?」



「何でもないわよ……じゃあ、行ってきます」



そして私は学園に向かった。







「この数式は……」



教室には先生の声だけが響く。みんな授業中は静かだ。



「じゃあ、この数式を使って……おっと、時間か…次の授業はP36から始めるからな〜」



と言って先生は早々と教室を去って行った。




「やっと3時限目終わった〜」



「まあ、バカな人には辛い時間だったかしら?」




席に座りながら背伸びをしていると、後ろから毒のある言葉が聞こえてきた。



「確かに大変だろうな、そういう奴らは」



声の主がウィンディだと分かったので、笑顔で会話を試みた。




「いや、そんな人アンタ以外にいるわけないでしょ…」




「俺はバカじゃない!……そう、俺は…アホなんだよ!」



「その発言がすでにバカね」




「くそぉおお!誰か!誰か俺をアホと言ってくれ!」




「バカ+アホね、アンタは」




「ダ、ダブルパンチ…」




俺達の会話が聞こえたのか、カイトが離れた席からこちらを見て呟いていた。




(しかし…)



「珍しいな、そっちから話しかけてくるなんて?」



「え……あっ!、その…これは…」



顔を赤くし、急に慌て始めた。こういう一面が、つい可愛いと思ってしまう。





「ナキ〜良かったな!仲良くなれて!!」




「ああ!やったぜカイト!!」




カイトと喜びの拳合わせをする。小さい頃からずっとやっている。




「別に……仲良くする気はないわ…」




「俺…何か気に障る事したか?」



「え?…」



ウィンディはちょっと意外そうに驚いた。



「何か嫌な部分があったら言ってくれ。直せる部分なら頑張って直してみるから」




「アンタ……」



席から立ち、座っているウィンディに告げる。




「…自分を殺して達成した事に意味はない……アンタこの前、唐突に言ってきたわよね…」



席から立ち上がり、俺を睨むように見ている。




「ああ……」



「その考え…今すぐ否定しなさい」




「それは無理だ…」



「なぜ?……」



「俺は…その考えが間違っていないと思うから」



いつの間にか教室内には、俺達の声だけが響いていた。



「そう…やっぱり仲良くなれそうにないわね」



「ウィンディ、俺が言いたいのは…」



「うるさい!!………もう…いいわよ」




そう言ってウィンディは教室を出て行った。




「………」



「…また怒らせたか……」



「………」



カイトの言葉に返事もせず。ナキはただ、呆然と立ち尽くしていた。









「あの〜……ウィンディさんがいない理由を知っている人はいませんか?…」




4時限目の今、ウィンディは戻って来ていない。




「先生〜ウィンディさんは保健室に行ってるらしいで〜す」



「そ、そうそう、さっき顔色悪そうにしてるのを俺見ました!」




「ほ、保健室ですね。分かりました…」




クラスのみんなが口々に話を合わせる。まだ全員と関わってはいないが、みんな良い奴らだ。




(それなのに俺は…)



「で、では授業を始めます」




(ちゃんと最後まで伝えられなかった…)



「この原理を基礎に…」




(ましてや空気を悪くして、みんなに気まで使わせちまった…)



「なので、この魔法は…」



ガタッ!



「ど、どうしたんですか?アーヴィストくん」




急に席を立った事にリース先生やクラスのみんなが驚きながら、こっちを見る。




「リース先生!」



「は、はい〜!!」



怯えた様子でリース先生はこっちを見る。教卓に身を隠しているので、こちらからは目から上しか見えない。




「……お腹痛いので保健室に行ってきます」



「…はい、分かり…ました…」




みんなの視線を背に受けながら、1人保健室に向かう。




「……相談してみるか…」








「ただいま〜」



「おかえりなさ〜い」




「いやシーノ先生、そこはツッコマないと…」




「そうなんですか?」




ふざけて保健室に入ったら、笑顔でボケられてしまった。まあ…綺麗だから満更でもない。





「…相談事ですか?」



「はい、実は……」



ウィンディとの事について、簡潔に説明した。




「と言うことなんですよ」



「うーん、ウィンディさんとは本当に仲良くなりたいと思っていますか?」




「はい…だけど、毎回伝えられず。今日の事でさらに壁を作ってしまったみたいで…」




「うーん、壁…ですか…」




イスに座り、白いティーカップで紅茶を飲みながら、相談に乗ってくれる。シーノ先生は俺の分まで紅茶をいれてくれた。




「…壊せば良いんじゃないですか?」



「先生、本当に壁がある訳じゃないですから…」



「いえ、そういう意味ではなく……つまりですね、話すと壁を作ってしまう訳なんですよね?」




「はい、そう…ですね…」「なら、話す以外の方法で仲良くなれるきっかけを作ればいいんですよ」




「話す以外の方法?…」



「そう、アーヴィストくんが思う話す以外のやり方で」




(俺の…やり方…)




「きっと…見つかりますよ。私はちょっと職員室に行ってきます」





1人保健室に残り、ひたすら考える。カイトに言われ…シーノ先生にも言われた、俺のやり方を…。




「……あれ?、もう昼かよ!!」




保健室で過ごした4時限目は予想以上に早く過ぎた。保健室を出て宛もなく廊下をさまよっていると、すれ違った男子生徒の話が聞こえてきた。



「まさか、入学してわずか数日で2年生にケンカ売る奴がいるとはな…」

「なんでも、その1年はあの宝石店事件の犯人を捕まえた奴らしいぜ」




「しかも相手は2−Cときた…」



「それ1年に勝ち目ねぇじゃん」




(間違いない……ウィンディの事だ!)




「2年生とケンカ?……何やってんだよ!」




廊下を走り演習場に向かう。








演習場は人で溢れていた。さっきの男子生徒のように、この戦いの事を聞きつけて見に来たのだろう。




「ウィンディ!…もう戦っているのか…」




見物席から戦いの様子が見えた。他にも、中の様子が魔法で映し出されていた。




「リリス!」



「くっ!…まさか契約者(コントラクター)だったなんて…」




契約者

(コントラクター)


精霊や魔物などと契約をし、その力を使う者の事を指す。契約した精霊や魔物は、契約者の魔力供給で動く。




「相手を間違えたみたいね…リリス!」



「こうなったら…」




ウィンディから相手の女に向かって、風の刃が放たれる。




ドガン!バン!



地面から砂煙が上がり、状況が分からない。だが、相手は何もせず立っていただけだった。




「…どうなったんだ?」




「ぐああっ!!」




「ウィンディ!」



砂煙の中から突然、ウィンディが転がるように飛び出してきた。




「うっ…1対1じゃなかったの!?」



「1対1?、俺達はそんな事一度も口にしてねぇぞ?俺達に勝てたらとは言ったけどな!」




「くそっ……」




砂煙が晴れ、状況は2対1になっていた。




「実は俺……契約者なんだよ。こい…ギル!」




相手のゴリラみたいな髪をした男がそう唱えると、男の目の前に赤い魔法陣が出現し、中から1mはある炎の塊の精霊が出てきた。




2対1のうえに相手の片方は契約者…無理だ…。




「ウィンディー!!!もう止めろ!」



見物席から声を張り上げて叫ぶ。周りの目なんか気にしてられるか。




(よし、こっちを向いた)



「よく分からないが、もう止めろ!この状況で勝てるわけがない!…って無視すんな!!」




俺の言葉は聞こえているはずなのに、返事もせず相手の方を向いてしまった。




「何でだよ!…俺の話を……あ…」




その時、頭の中に言葉が響いた。



(話す以外の俺のやり方……)



きっと、それでなければウィンディには伝えられない。



(この状況で俺にできる、俺のやり方…)







「おいおい、どうしたどうした!?もっと来いよ!」




「ハア…ハア……」



「もう疲れたの〜?弱〜い」




(俺の…俺のやり方…)



「うっ……あっ!」



(しまった!足が…!)



「動けねぇのか…なら、トドメだ!」



「吹き飛びなさい!」




「くっ…」


炎の球と風の槍がウィンディ目掛けて放たれる。




「うぉおおお!!!」





刹那、炎の球と風の槍は辺りに砂煙を上げ、近くの木を焦がしていた。




「綺麗さっぱり燃えちまったか?」



「気絶してるんじゃない?かわいそ〜」





「いや〜危なかった、マジで間に合わないかと思ったぜ」



「な、何だお前!?」



「俺は1−Dのナキ・アーヴィスト……です!」



「何思い出したように敬語使ってんだ!」




「ナキ・アーヴィストって……もう1人の方の…」「そうか…友達がやられてるから助けにきたのか?だけど遅かったな、さっき土に帰っちまったよ!」




「誰が土に帰ったって!?私はここにいるわよ」



木の影からウィンディが出てくる。



「それとコイツとは友達じゃないから、関係ない知らない」



「つ、冷たい…」



「で…何で助けに来たの?」



「いや、ただ見物席から足を滑らせただけだよ」



「あっそ、ならすぐ帰ったら」



「道忘れたから、お前に付いていくよ」



「……バカ、好きにしなさい」





「いいぜ…てめぇら燃やし尽くしてやる!!」





「なら俺は…」




「震え上がらせてやるよ!」

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