第三章・突然、偶然、これ運命!?
「ここが1年棟…」
この学園は学年別に校舎が分かれている他に、諸本棟、講堂など様々な建物がある……と、来る途中にあった地図に書かれていた。
「俺どのクラスなんだ?」
歩きながらどうやってクラスを探せば良いか考えていると。
「ナキ〜ナキ・アーヴィスト〜いるか〜」
「あれ?この声は…カイト!、カイト・マグヌスか!?」
廊下の人混みを挟んだ向こうから友人らしき声が聞こえてきたので、返事を返してみた。
「おっ!いたいた!ナキ〜!」
向こうから友人のカイト・マグヌスが駆け寄ってくる、今日も雲のように白い髪の毛がツンツンしている。
「カイト〜!」こちらもカイトに駆け寄る。しかし、忘れていた事が1つあった。
「うっ!……またか…」
「わ、悪いカイト…つい嬉しくて身長差を忘れてた…」
お互いに駆け寄った勢いを殺せず、結果身長が高いカイトの腹に頭突きをくらわす形になってしまった。黄色い目が白目になりかけている。
「大丈夫だ、それより早く教室行こうぜ!!」
カイトはそう言うと廊下を進んでいく。足震えてるけど本当に大丈夫なのか?……。
「というか、カイトと俺一緒のクラスになれたんだな」
「俺達は切っても切れない仲だからな!!」
「そうだな」
頭良いしオマケにイケメンなんだから、友情だけじゃなく恋愛もすればいいのに。
「損な奴だな…」
「ん?…なんか言ったかナキ?」
「いや何でも…」
話していると、1−Dと書かれた教室に着いた。
「机の上に名前が書いてある紙があるから、そこが自分の席だってよ。」
「へえ〜…とりあえず中はいるか…」
ドアを開け、教室の中を見回す。
教室の中はとても綺麗で、後ろや脇の棚に花瓶が置いてあり、教室内から清涼感が感じられる。
「小、中学校とは違うな…」
「ナキ…早く中入ってくれ、俺が入れない」
ドアから退き、今度は中に入り改めて教室内を見回す。
「しかし、このクラスの女子綺麗だな〜だけど、男子もイケメン多いな…」
「けど、ナキは恋愛する気ないんだろ?」
「うん、いろいろ面倒くさいし俺そういうの苦手だから」
自分には恋愛は無理だと分かっている…だが、女性に興味がないというわけではない。普通に可愛い子や綺麗な子は大歓迎だ。性格は気にするけどな……。
「俺の席は廊下から2列目の一番後ろだ、ナキは席どこなんだ?」
「ああ…探してくるよ」
紙が貼られてる机を順番に見ていると、近くで話している女子生徒や男子生徒が察したのか道を譲ってくれた。
(良かったこのクラスは優しい人ばかりだな)
「ねぇ…今の人少し恐くなかった?」
「うん…なんか睨んでたみたいだし…」
「やばいぜアイツは…目が闇に染まってるぜ…」
「…………」
大丈夫…まだ話したこともないからしょうがないよ。しょうが…ないよ。
めげずに探していると、ナキ・アーヴィスト君と紙に書かれている席を見つけた。
「窓側から2列目の前から2番目か…間はあまり好きじゃないんだけどな…」
ここからカイトの席は遠く、静かに会話できる距離ではない。
(後20分くらいか……そこら辺うろつくかな)
「ナキどこ行くんだ?」暇なので教室を出ようとするとカイトに呼び止められた。
「いや、校舎の確認も兼ねてうろつこうかなと思って。一緒に行くか?」
「もちろん!…と言いたい所だが、ちょっとやらなきゃいけないことがあってな」
「何だか忙しそうだな…まあ頑張れよ!」
「おう!、そういえば…何で遅れたか聞いてなかったな」
「それは…まあ、長くなるから後で話すよ」
「そっか、時間までに帰って来いよ」
「分かってる」
教室から出て1人廊下を歩く。他の生徒は全員教室にいるのか、ナキ以外に1人も生徒が見当たらない。
(本当にあの子は何だったのだろう…)
俺を飛ばしたあの攻撃はただの風属性の魔法ではなく、風の精霊による攻撃だった。それもかなりの威力の…。
(それに頭に響いていたあの声も全く聞こえなくなった、俺に何がおきてるんだ?)
「ハァ〜……」
その事を考えていると、気づかぬ内にため息が出ていた。
ドンッ!
考え事をしながら歩いていると曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
「だ、大丈夫…です……か?」
ぶつかった相手に手を差し伸べた時、ナキは呆然とした。
相手は床に尻餅をつき、額を右手で抑えていた。ブラウンの髪とエメラルドの色をした目が似合う、綺麗な女子生徒だった。
(え…もしかして)
「ん〜……あっ…」
「あっ……」
お互いに目が合う、ナキは思わず目線を下に逸らす。
「あっ…」
目線を逸らした先には、赤いスカートから水色の下着が覗いていた。
「!!…」
俺の目線に気付いたのか少女は急いで立ち上がった。
「…う、ううう〜…」
「え!ごめん、いや、本当すいません!!」
少女は顔を下にしたまま、泣き出してしまった。予想外の状態にナキはひたすら頭を下げる事しか方法が思いつかなかった。
「………」
「……?」
頭を下げていると、泣き止んだのか急に静かになった。
(…一回頭上げてみるか)そして頭を上げると…
「うおっ!?」
突如、回し蹴りが来た。左手で蹴りを止め眼前を見ると、攻撃してきたのは少女だった。
「何すん…なっ!?」
タンッ!タンッ!、タンッ!
少女は止まる事なく床を蹴り、壁を蹴って飛んできた。
「だから、一回止まれ!」
「えっ!…」
横に避けながら両手を飛んできた少女の膝と背中に当て、その場で回転し勢いを殺す。
「いくら何でも蹴りはないだろ、蹴りは」
一言告げてから少女を降ろす。
(…柔らかい肌だったな……)
受け止めた時、服越しに触れた少女の柔らかな肌にナキは少しドキドキした。 「あ〜あ、嘘泣きまでしたのに避けられるなんて」
(嘘泣きかよ!)
と、心の中でツッコンでおく。
「えーと…今朝はありがとう、それといろいろごめん…」
やっとお礼が言えた嬉しさと、また飛ばされるのではないかという恐怖が内心あった。
「許してあげるわ、だけどまた変な事したら…」
「き、気をつけます…」
顔は笑っているがすごい怒りが感じられる。
「まあ、アンタとこれ以上関わる事なんてないけどね」
「そう…だな」
少し寂しく思った。学園での初めての出会いだった。それが今終わってしまうことが…。ゴーン!ゴーン!
時間を知らせる鐘が鳴った。軽いうろつきのはずがつい長くなってしまった。
「じゃあ…俺教室に行くよ」
「ええ、それじゃあ…」
1−Dに向かって歩く。名残惜しいが遅れる訳にはいかない。
コツコツコツ
「何で付いて来るのよ…」
「いや、俺もこっちだから…」
早歩きで廊下を進んでいると、1−Dに着いた。
「じゃあ俺「私」この教室だから」
「えっ?」 「えっ?」