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桜井果歩という女

作者:
掲載日:2026/06/05

はわわ。

あわわ。

あたしはこれが口癖だ、当然女子に嫌われている。

男子からは言わずもがな。


今日も廊下で転びかけて思わず、

「あわわわわ」

と言ってしまった。

女子たちからの視線が痛い。

男子たちからはハートが飛んでくる。


「あいつまじであざとくね?アニメ声でなにがあわわわわだよ」

「そんなやつリアルにいるのかって」

「男子も男子よ、あんなのに引っかかってるとか、見る目ねえまじで」


放課後の教室で耳を済ましていると、明らかにあたしの悪口が聞こえてきた。


こっそりその場から立ち去る。


通りがかったクラスでは男子が数人集まって、

「桜井果歩ってかわいいよなあ」

「あの声であわわわわ。とかやばすぎっしょ!」

「かわいいは正義だな」

こっちもこっちでなにか噂している。



桜井果歩十六歳。

アニメ声をいいことに、「はわわ。あわわ。」

などあざとい演技をし、女子からは反感を買い、男子からは熱い視線で見られていた。

本日午後十七時四十五分、望通りにて大型トラックと接触。

即死。


「はわわ、あたしは何も悪いことなんてしてませんよう」

「黙れ!ここ地獄の門ではそのような発言のウソはすぐにばれると思え」

「ちっ!めんどくせえなあ、なんも悪いことなんてしてないじゃん、そりゃあ何人もの男子をつまみ食いしてはポイ捨てしたけど、同じ学校ではやってないし別にいいだろ」


「おまえがつまみ食いとやらをした男子には数名自殺者も出ているよな?」

「あんなんメンタル激弱なだけじゃん、しょうもない」


こん!木槌の音がする


「お前はこれから百年、転生もこの地獄を抜けることもできない」

「は?まじだるっなんなの?担当とかつくの?絶対イケメンにしてよね、あ?鬼ってイケメンいるの?」

「反省のかけらもないとはどういうことだ、百年だぞ怖くないのか」

「怖い?あはははは、余裕余裕」

「??????」

果歩は鬼に連れられて血の池地獄に到着した。

「はわわわわ!暑そおお、果歩こんなの入れないよう、鬼さん代わりに入ってくれる?代わってくれたら手を繋いであげる」

鬼は何も言わずに血の池地獄に入っていった。

その後どの地獄でも同じことが繰り返された。

果歩は顔はそれほど可愛くないが、このあざとさだけで、地獄の鬼たちをも手懐けられるようになった。

地獄の沙汰も金次第と言うが、地獄の沙汰もあざとさ次第なんでしょう。

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