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偽聖女に捨てられた公爵令息ですが、神様に溺愛されているので全く困っていません  作者: 月代


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第12話 闇の核


 初日の夜。シオンとリーシャは東門近くの瘴気の核を狙った。


 テオドールが用意した大神殿の通行証を使い、夜間の巡回を装って移動する。


「この辺りです。地下三メートルほどの深さに……」


 リーシャが両手を地面に当て、探知の光を走らせた。


「見つけました。真下です」


 シオンが剣を地面に突き立てた。金色の光が地中に浸透し、隠された黒水晶の核を貫く。地面が一瞬震え、砕けた核から飛び散る瘴気をリーシャが即座に浄化した。


「一つ目、完了」


「バレてませんか?」


「今のところは。急ごう」


 同じ夜のうちに、南門の核も破壊した。二つ。


 二日目の夜。西門と北門の核を処理した。四つ。


 ここまでは順調だった。問題は最後の一つ——大神殿の地下にある核だ。


「大神殿の核は他のものより大きく、アリシアの部屋の真下に設置されています」


 テオドールが見取り図を広げて説明した。


「聖女殿の私室に繋がる階段を降りた先にある、封じられた祭壇の間。かつて先代の聖女様が祈りを捧げた神聖な場所ですが、今はアリシアが封鎖して誰も入れません」


「アリシアの近くか。気づかれるリスクが高いな」


「ですが、儀式の間にアリシアは確実に大広間にいます。その隙に——」


「待ってください」


 リーシャが遮った。


「儀式の最中に核を壊したら、どうなりますか」


「儀式が暴走する可能性がある。だが逆に言えば——」


「偽物の力を衆目の前で暴露できます」


 シオンが目を細めた。


「つまり、こうか。アリシアが儀式を始めた瞬間に核を破壊する。儀式が暴走すれば、浄化のはずの光が瘴気に変わる。民の前で偽聖女の化けの皮が剥がれる」


「はい。そしてその瘴気はわたしたちが浄化します」


「リスクは高い。暴走した瘴気が制御できなければ、被害が出る」


「でも、核をこっそり壊すだけでは、アリシアの正体は暴かれません。彼女はまた別の方法で同じことを繰り返すでしょう。今ここで、決着をつけないと」


 リーシャの目は真剣だった。あの控えめだった少女は、旅の中で確実に変わっていた。


『リーシャの言う通りです、シオン。ここで偽聖女の正体を暴かなければ、この問題は終わりません。そして——わたしもあなたたちの力を信じています』


 シオンは腕を組み、しばらく考えた後、頷いた。


「わかった。その作戦でいく。——テオドール、一つ頼みがある」


「何でしょう」


「儀式の日、大広間の最前列に場所を確保してくれ。リーシャをそこに立たせる」


「大広間に? しかし聖女殿に見つかれば——」


「見つかっていい。むしろ、見つかるべきだ」


 シオンの目に、静かな決意が灯っていた。


「俺が地下で核を壊す。リーシャは大広間で暴走した瘴気を浄化する。民の目の前で、本物の聖女が誰なのかを示す」


「シオンさん——」


「危険な役は俺が引き受ける。お前は、お前にしかできないことをやれ」


 リーシャは一瞬唇を震わせ、それから強く頷いた。


「わかりました。任せてください」


 三日目——儀式当日の朝が来た。


 シオンは大神殿の地下通路を一人で進んでいた。封じられた祭壇の間に向かって。


 背後からテオドールの祈りの言葉が追いかけてきた。


「エルティア様のご加護がありますように」


 シオンは振り返らず、闇の中へ歩を進めた。

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