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わたくしが主人公ですわ!! 〜悪役令嬢に転生したけど本人の勘違いが止まらない!?〜  作者: ユルム


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7/10

主人公、騎士団長の息子と出会いますわ!

王城での顔合わせとお茶会から、さらに数日後。レティシア・ヴァルローズは王城の回廊を歩いていた。


(今日はアルとのお茶会ではありませんでしたわね。)


王妃に呼ばれて王城を訪れていたのだが、予定より少し早く終わってしまったのだ。


王城の庭園は広い。

散歩がてら歩いていると────


カン、カン、カン。


どこかから何かがぶつかる音が聞こえてきた。


(……剣?)


音のする方へ進むと、訓練場の端が見えてくる。


そしてそこにいたのは、赤い髪の少年だった。自分と同じくらいの年齢だろうか。木剣を握り、何度も何度も剣を振るう。


汗だくで、息も荒い。

それでも止まらない。


(まあ。)


レティシアは少し驚いた。


(随分と必死ですわね。)


そのとき、少年の剣がふらついた。カン、と音をたてて地面に落ちる。


少年は悔しそうに唇を噛み、再び剣を拾う。


だが──


「くそ……!」


小さく吐き捨てる声が聞こえた。


レティシアは首を傾げる。


(怒っていますの?)



主人公はこういう時、何気ない言葉で人を救うものだ。レティシアは自然な足取りで近づいた。


「こんにちは。」


少年がびくっと振り向く。


赤い髪。

少し吊り気味の目。


少年は慌てて剣を背中に隠した。


「えっ、あ、えっと……」


令嬢が来るとは思っていなかったのだろう。視線が泳いでいる。


「ご、ご令嬢……?」


「レティシア・ヴァルローズですわ。」


少年の目が丸くなる。


「ヴァルローズって……公爵家の!?」


「ええ。」


レティシアは頷いた。


「あなたは?」


少年は慌てて姿勢を正した。


「お、俺はレオン!」


ぴしっと名乗る。


「騎士団長の息子、レオン・グランツです!」


(騎士団長の息子…?)


レティシアはすぐ理解した。


(乙女ゲームにいたキャラですわね。)


騎士団長の息子。

赤髪。

努力家。


ゲームの記憶と一致する。


(なるほど、ここが出会いイベント。)


レティシアは満足げに頷いた。

一方、レオンは落ち着かない様子だった。


「えっと……ここ、危ないですよ。剣の練習してるし」


「お気になさらず。」


レティシアは軽く言った。そしてふと、地面を見る。


剣の跡。

足跡。

何度も同じ場所を踏みしめている。


(かなり練習していますわね。)


レオンは頭をかいた。


「……へへ、見られてましたか?」


「ええ。」


「カッコ悪いですよね……」


レオンは苦笑した。


「俺、騎士団長の息子なのに…」


木剣を軽く振る。


「全然強くないんです。親父はめちゃくちゃ強いのに。」


風が吹く。

レティシアは思った。


(なるほど。これは、劣等感イベントですわね。)


乙女ゲームの定番である。


努力しても届かない。

自信がない。

それを主人公が救う。


つまり───


(今、わたくしの主人公としての行動が試されているのですわ!)


レティシアは地面の跡を指さした


「でも、こんなに地面が削れるほど練習する人を、わたくしは知りません。」


レオンはぽかんとした。


「え?」


「強いかどうかは分かりませんが…」


レティシアは続ける。


「努力していることは、誰が見ても分かりますわ。」


レオンの目が揺れるのを見ながらレティシアは首を傾げた。


「それでは不満ですの?」


レオンは慌てて首を振った。


「い、いや!」


そして少し黙ってから。


「……初めて言われました。」


「?」


「努力してるって。」


レオンは笑った。そして少し照れくさそうに言葉を続ける。


「みんな『団長の息子ならできて当然』って言うので。」


レティシアは瞬きをする。


(まぁ!それは確かに大変ですわ)


だからレティシアはさらりと言った。


「当然ではありませんわ!」


「え?」


「努力しているから出来るのです。」


当たり前のことを言っただけだった。


だが。


レオンの目が、大きく見開かれる。


「……そっか。」


ぽつりと呟く。そして、にっと笑った。


「ありがとうございます!」


さっきまでの沈んだ顔が嘘のようだった。


「なんか元気出てきました!」


(成功ですわね。)


レティシアは内心で頷く。

主人公の一言で攻略対象が救われる。


乙女ゲームの王道イベント。


(さすが主人公ですわ。)


レティシアは満足そうに微笑んだ。


「また稽古を続けるのですか?」


レオンは剣を握る。


「はい!」


さっきより力強い声。


「俺、絶対強くなります!それで…」


「?」


レオンは笑った。


「騎士になって、あなたとこの国を守ります!」


レティシアは瞬きをした。とても乙女ゲームらしい台詞である。それに答えるようにレティシアは優雅に微笑んだ。


「楽しみにしておりますわ。」


レオンは照れくさそうに頭をかいて、稽古に戻った。その背中を見ながら、レティシアは思う。


(ふふっ、主人公として順調ですわね。)


レティシアは満足げに庭園を後にした。


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