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わたくしが主人公ですわ!! 〜悪役令嬢に転生したけど本人の勘違いが止まらない!?〜  作者: ユルム


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10/10

主人公、魔法を披露しますわ!

王城の庭園には穏やかな風が吹き、白いテーブルの上では紅茶が湯気を立てている。レティシアとアルベルトは向かい合って座っていた。



「そういえば、」


「はい?」


「レティの魔法は何属性なんだ?」


ここ「リリウムの光」の世界では、魔法は基本的に一人につき一つの属性。


火、水、風。


そしてごく稀に───光。


貴族の子供は生まれてすぐ魔力測定を行う。ヴァルローズ家の令嬢であるレティシアもすでに判明しているはずだ。


するとレティシアは少し胸を張った。


「火属性ですわ。」


「火か。」


アルベルトは素直に感心する。火は攻撃魔法に優れている。戦場でも重宝される属性だ。


「殿下は?」


「水だ。」


「まあ。」


レティシアは嬉しそうに頷いた。


「かっこいいですわね。」


「……そうか?」


「ええ。」


レティシアはうんうんと頷く。


「水の魔法は幅広く応用できますもの。」


その通りだ。水魔法は攻撃力では火に劣るが、応用が広い。氷を出したり、防御を行ったり、乾いた土地に雨を降らせたり。


水は民にとって必要なものであるため、王族が持つと非常に便利な属性だ。アルベルトは少しだけ照れた。


「レティの火も強いだろう。」


「ふふ。」


レティシアは笑う。そして、ふと遠くを見た。


(火、水、風。)


乙女ゲームの定番三元素。



(そして───光。)


少し不思議に思う。光魔法なんて主人公が持つ特別な力として定番なのに。わたくしは光魔法は使えないのですが…?


(…でも、光属性のキャラがゲームで登場していた気がしますわ。)


たしか、そのキャラは女の子だった気が…。わたくしは光魔法は使えず、光魔法を使える女の子がいる。

つまり───


(わたくしの親友キャラですわね。もしくはライバル。)


レティシアは真剣に頷いた。アルベルトは不思議そうに見ている。


「どうした?」


「いいえ。」


レティシアはにこりと笑った。


「ただ思っただけですわ。」


「?」


「もし光の魔法を持つ人が現れたら__」


 少し間を置いて言う。


「それは、"ありふれた話の主人公ポジション”ですわ。」


アルベルトは瞬きをした。


「主人公?」


「ええ。」


レティシアは得意げに語る。


「珍しい力。特別な存在。周囲から守られる立場。」


指を一本立てる。


「つまり、ヒロイン属性。」


「……?」


アルベルトの理解は追いついていない。それでもレティシアは続けた。


「ですが問題ありませんわ。」


「なにが?」


「火属性の主人公も、十分ありえますもの。」


拳を軽く握る。


「炎のヒロイン。やっぱりクール系ヒロインもありだと思いますの。」


アルベルトは数秒沈黙した。


(ヒロイン……?)


何の話をしているのか分からない。しかし、レティシアはすごく真剣だ。アルベルトはとりあえず頷いた。


「……そうだな。」


「でしょう?」


レティシアは満足げに微笑む。そしてふと聞いた。


「アルは水魔法、もう使えるのですか?」


「少しなら。」


アルベルトはテーブルの横に置かれていた水差しを見た。指を軽く動かす。すると水差しの水がふわりと浮いき、透明な球のようになって空中に漂う。


レティシアの目が輝く。


「まあ!」


水球がゆっくり回る。アルベルトは少し得意そうだった。


「まだ簡単な操作だけだ。」


「すごいですわ!」


レティシアは身を乗り出す。完全に子供の顔だ。


「氷にもできますの?」


「できる。」


アルベルトが指を鳴らすと、水球が一瞬で氷になり、きらきらと光を反射する。


「きれい……」


レティシアは感動していた。そしてふと思う。


(これはイベントですわね。)


乙女ゲームにはよくある。魔法披露イベント。


つまり、


(次は主人公であるわたくしの番。)


レティシアは立ち上がった。


「では次はわたくしですわ。」


「レティ?」


レティシアは庭の空いた場所に向かう。手を前に出し、集中。


(火属性。)


魔力を集める。ぽっと小さな火球が灯る。レティシアは満足げに笑った。


「どうです?」


アルベルトは目を丸くした。


「……すごい。」


それは本心だった。初めて魔法を扱う子供の火としては、かなり安定している。


だが次の瞬間。火が、ぼわっ!!と大きくなった。


「レティ!?」


「……あら?」


炎が思ったより大きい。しかも風にあおられて広がる。


「ちょっと待ってくださいまし。」


レティシアは慌てて手を振る。しかし火は消えない。


「レティ!!」


アルベルトが水魔法を放つ。


ばしゃっ!!


炎は一瞬で消え、庭は静かになる。レティシアの髪が少しだけ焦げていた。


沈黙。アルベルトが言う。


「……大丈夫か?」


レティシアは少し考え、真剣に言った。


「火属性主人公、制御難易度が高いですわね。」


「主人公はよく分からないが、そういう問題じゃないと思う。」


アルベルトは真顔で言った。


(これはイベント成功、かしら?。)


火。水。


協力してピンチを乗り越える。


(好感度イベントその2ですわね。)


レティシアは満足そうに笑った。一方アルベルトは思っていた。


(レティは、しっかりしているように見えて危なっかしいな。)


そして少しだけ。楽しそうでもあった。

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