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「報復の始まり」第二節

「あら?何を約束しているの?」


 二人が指切りをしていると、研究室から奈美が戻ってきた。

 

 白衣を脱ぐ。

 

 研究者から「母親」へと戻った瞬間だった。奈美は表情を崩して、二人の隣に座る。


「内緒」

「ねー、内緒」


「えー?気になるな。教えてよ」


 奈美は肩に手をおいた。体をくすぐる。言わないと、くるぐり続けるわよ、と奈美は言った。


「降参、降参!」


 くすぐりに、白旗をあげた。


「今度、一緒に勉強しようね、と言った約束だよ」

「あら。いいじゃない」


 奈美は冷蔵庫を開けた。じゃん、とケーキを取り出す。白いクリームとイチゴのケーキだった。時間が余ったから作ったのと胸を張る。奈美の手作りのケーキに瞳を輝かせた。


 年相応の姿に奈美は笑った。


 湊と都にはココアを用意する。いただきます、と手を合わせる。


 食べるとクリームの甘さとイチゴの甘酸っぱさがちょうどよかった。喜んでいる姿を見て、奈美は安心をした。

すると、肩に重みを感じた。視線を向けると都がよりかって眠っている。


 いつの間に眠ってしまったのだろうか。


 奈美はよいしょ、と都の体を抱き上げた。抱き上げた体は軽い。もっと、おいしいご飯を作ってあげないとね、と抱き上げた体に力を込めた。


「母さん」


 奈美が寝室から出ると、湊の声がした。


 ーー子どもだからといって、甘く見てはいけない。 

 ーー湊も都もちゃんと見てるわ。


 そのひたむきさには、勝てなかった。


「どうしたの?」

「実験、うまくいってないんだよね?」


 どう返していいか言葉に迷う。

 答えに詰まった。


 奈美に湊ははい、とある物を渡した。一枚の絵である。


『僕のお母さん』


 瞳と髪色は特徴をつかんでいた。

 よく似ている。


「ーーこれは?」

「学校の授業で描いた。渡そうと思っていても、忙しそうだったから」

「ーーありがとう」


「実はね。都からもあるよ」

 


『お母さん、大好き。いつもおいしいご飯を作ってくれてありがとう』


奈美への手紙だった。


「あー、もうあなたたちは」

 

 奈美は湊を抱きしめた。

 

 背中の震えに気付かれているかもしれないと思った。けれど、溢れる涙は止まらない。次から次へと溢れ出す。


 奈美の震えている背中を見て、湊は渡して正解だったのだと理解をした。


「お母さんは何があっても、お母さんだから。大好きだよ。僕たちは誰にも負けない一つの家族だ。だから、胸を張っていてほしい」

「あなたたちは本当に最高の息子だわ」


 奈美は湊を抱きしめたまま、涙を拭った。

 


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