第十章「告白」第一節
都は強い吐き気を感じて、学校帰りの神社付近で立ち止まった。肩で息をするのが精一杯である。近くのコンクリートに、手をついて呼吸を整えた。支えきれずに足元から崩れ落ちた。
視界が揺れる。
照り付ける夏の日差しは、容赦なく体力を奪っていく。見慣れている景色が歪んで見えた。立とうとしても体に力が入らない。
――大丈夫だろう?
――話すと決めたよな?
――意地になる必要はない。
――立て、立てよ。
――頼むから、動いてくれ。
都は言い聞かせた。奈美と再会をして前向きになれた。ようやく、素直になれる。二人は都の口から真実を聞きたいと願っている。ずっと、待ってくれていた。
わがままを言っても、愛情を注いでくれていた。そのことに気付いた。気持ちに気づいたのが遅すぎた。遅すぎたとしても、言葉にしないと伝わらない。
今度は自分が二人に、愛情を返す番だ。家族として「大好きだよ」と言いたかった。指から血が流れるぐらい強く、コンクリートに爪を立てた。
「都。しっかりして」
都の指を通りかかった美和は手当をする。
「静かにしてくれ」
「助けを呼ぶから」
助けを呼ぼうとする美和を止めた。ふらつく体を壁に預けて立ち上がる。
多少、楽になっていた。
「大丈夫」
「都」
「美和。帰ろうか?」
「隠していることを話してくれるのよね?」
「全部、話すよ」
「ねぇ、手をつないでいいかな?」
「ごめん。無理だ」
「ほら。つないでいた方が温かいでしょう?」
都の手を強引に握った。
「美和は小さい頃と変わらないな」
都の言葉にそうかしら? と笑う。 幼い頃と同じ笑顔が眩しい。 素直な部分は変わっていなかった。 結局、二人は手をつないで帰った。 二人が帰るとポストに、USBが入っていた。パソコンにさして、ファイルを開く。
デザインズ・ベイビー報告書
都、誕生 生まれた都をデザインズ・ベイビーの試作品として治験を開始 瞳と髪の色を金色に成功し、六歳の時の研究用バイオマス水槽から都を出す。
知能・体力のテストを行う 受け答えはしっかりとできている 体力に対しては、見直しが必要となるだろう 。
いくら、 血が流れようとも関係ない 。
私は日本を救うための救世主になるのだ ならなければいけないのだ。
力は必要である。
力は力でしか対応できない。
日本が生きていくために、世界と戦い競争に生き残っていくために必要な実験である。
何を言っても通じない。都は繊細に書かれた孝の荒ぶる感情と狂気に、ファイルを閉じた。
二人は鈴が図にしてくれたファイルを見て何を思っただろうか。
感じたのだろうか。
一番身近な存在として、率直な意見がほしかった。




