表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/23

「同胞」第二節

 都は美波に頼まれている買い物帰りだった。誰かに見られていると気付いて、敏感になっていた。学校終わりの午後四時すぎ。



 近所の人しか知らない細道でだった。一人の女子中学生が都を待っている。見た目は、紺に近い紫の髪と、紅い瞳だとニュースでは言っていた。


 山口鈴で間違いなかった。


「山口鈴ーー僕を殺しにきたのか?」


  都は隠し持っていたナイフを取り出す。都は鈴の首筋に、ナイフを突きつけた。ふわり、と甘いシャンプーの香りが鼻をくすぐっていく。



 突きつけられたナイフを、鈴は振り払おうとはしない。 むしろ、都から見ても堂々と立っている。 テレビでの話から情報処理を、得意としているらしい。不思議なのは鈴から殺気を感じなかったことだ。


 ーーこの子も僕と同じ被害者だったのか。


 都は鈴が話してくれて内容を知った。

 ナイフを下げる。


 どことなく、都の瞳は透明さを滲ませているみたいだった。透き通っている瞳をしている。死を覚悟している者の瞳でもあった。覚悟を決めている者の瞳は強い。


 例え、己の存在が世間から忘れ去られたとしても、全力で戦い抜く。 都の揺るぎない決心があった。


 ぶれることもない。

 底知れぬ強さがあった。


 態度を軟化させる。


「無理矢理に会わないと、話そうとはしないよね?逃げるよね?」

「教授に刃向かうなんて自分を、追い詰めるのか?」


「あら? 心配してくれているの? 私は私の意思で会いに来たのよ。あなたに時間がないのは分かっているわ。教授に会いにいくつもりなの? 今の家族は?」


 鈴はここにいるのも、自分の意思だと明言した。


「守るさ」

「十河孝への報復の計画を、考えていたらどうする?」


「君たちの計画もあるだろう。それに、口出しをするつもりはない」

「私にあなたの家族を守らせて。人が傷つくのを見たくないの。傷つく人を増やしたくないの。お願い」


  二通の手紙を差し出していた。湊の名前と相田家の名前も、封筒には書いてある。



「手紙を書いた時に、予感がした」


 都が語りかけてくるとは、思っていなかった。


「予感?」

「そう。手紙を書いた時に、渡す人が現れるとの予感」


「それが、私?」

「うん。それと、もう一つは、僕に会いに来た勇気を勝っただけだよ」


「あなたが出した答えに、後悔はないのね」

「親の不始末は子供の責任だと思うから」


「最後に私、あなたに謝らないといけないのよ」 「謝る?」


  何を言っている? と、都は聞き返してきた。


「教授の様子を探るのに、あなたを利用したの。ごめんなさい」

「別に利用価値があると思うのなら、利用すればいい」


「利用されて悔しくないの?」

「利用価値があるのなら、使ってもらってもいい。 まだ、使ってもらえると思う方が幸せだ」



 都を立ち去っていくのを見て、鈴も歩き出す。 二人がいた場所は、何事もなく静まり返っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ