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THE LAST MAGICIAN the past  作者: 橘隆之
【day1】終わりが始まった日 /2014.6.18
14/16

【day1】-[3]-(3)

「俺も、『()()()竜巻が飲み込んじまった』ってどういうことだよ、って思ったからツッコんだんだ。そしたら『これ見ろ』って。火の玉とか土塊なら、突然ドンと目の前に顕れたって云われて何とかイメージ出来るけど――実際自分の目で火の玉見てる分、アサギの方もすんなり入って来たよ――、竜巻は時間掛けて段々デカく()()()()()もんだろうに、『一瞬』に『でかい』竜巻って云われてもなあ」

「まあ、そうだな。それで、見たのか」

「ああ。本当にそうだった。普通の竜巻なら、渦が()()()っていうか、そんな感じで段々大きくなって、空と地面が()()()()()()()ってふうに見えるもんだろう? そうじゃないんだ、――なんて云ったらいいか……、そうだ。ものすげえ大きい漏斗かな、漏斗の先っぽが、一瞬で、地面に突き刺さった。そんなん」

 タオもアサギもその喩えをイメージして「瞬間、大きな竜巻」が腑には落ちたが、――タオは眉を寄せた。

「……。おまえは随分とあっさり云ったけど、そんな巨大な竜巻となれば、()()()とは状況がかなり違うんじゃないのか」

 タオが渋い声を出すと、リオンは「うん?」と首を傾げた。

「被害状況は。俺達はこの通り無傷だし、アサギも特に深刻なことを云っていないが……」

 何故タオが険しい顔と声になったのか、それを「ああ…」と納得する声を出してから、リオンが軽く首を振った。

「距離はある程度離れてたから。あの火の玉と俺達ほど近くはない。そうだな、サヴァナの親方達がグロスの丘に居たとしたら、竜巻はサウバーの森に出た……っていう感じだろうか――勿論、サウザーの〈陸上軍〉が森に居たみたいにサヴァナの隊がソコに居た訳じゃあないよ、距離だけの話な」

「……うーむ…――しかし……、距離があるったって、そんな大きな竜巻じゃあ……」

 リオンが苦笑して肩を竦める。

「あのな、さっき云わなかったけど、結界を張るって作戦は執らなかったつっても、()()で迎撃したって訳でも無いよ。作戦には加わってない皆は出来るだけ遠く、岩山に籠もったりした訳だけど、流石にそっちは〈風〉の結界(かべ)を張りながら逃げてたし、作戦に参加した親方達も自分の身は守ってた。風と風で、ウマく相殺出来たってことじゃないかな。――サウザーのお城と同様、コケて怪我したとかは居るみたいだけど、そんな甚大な被害は出てないらしい」

 一度俯いて「だったらいいが」と溜息をついた後で、タオは目を見開いた。がばっと顔を上げると、さっきより余程に身を乗り出してリオンの顔を覗き込む。リオンが思わずたじろいで身を引いた。

「な、何だ?」

「おい、そりゃおまえ、アサギに割り込むほどじゃなかったが重要な情報だぞ、自分で何云ったか分かってるか」

「え、え?」

 狼狽えたリオンは、アサギにも顔を向ける。「俺、何か云ったか」と云いたそうなリオンへ、アサギも「僕も師匠の云ってることが分かりません」と返事をするように、戸惑いの表情を浮かべて手を振った。

「サヴァナの魔術士が張っていた風の結界――そのエネルギーが、その竜巻の(エネルギー)を相殺したって云うんなら――あれは、『俺達が全く知らない何か』ではないのかもしれんのだぞ? 俺達が理解出来る、対応出来る現象(なにか)なのかもしれんのだ。そもそも、おまえ達の技術で〈録画〉が出来て君にそれを〈送信〉も出来たということは、だよ! 俺達に()()()()()()()()()()()モノなのかもしれんのだ」

「――」

「サヴァナのマイスター達には、僅かなりとも分析が出来たのか。それが()なのか、仮定だけでも云っていなかったか」

 タオの声が少し大きくなる、興奮の様子も顕わにリオンへ詰め寄った。リオンは「そうか、タオはそういう意味で食いついたのか」と理解した。――が、少し申し訳なさそうに眉を下げて、ゆるゆると頭を振った。

 タオが目を細める。

「いや――そうか、期待させてしまったのか、悪い」

「……。じゃあ、別に、何らかの『理解』が叶ったという訳では無いのか…?」

 リオンの反応を見たタオが声を落ち着かせてそう云うと、リオンは頭を掻いて「うーん、多分……」と声を淀ませた。

「多分、親方達の認識も俺達と似たり寄ったりだろう……。『どう見ても竜巻にしか見えないし、今吹いているのは風としか云いようがないが、しかしこれは、自分たちが知っている〈風〉なんだろうか?』ってそんな感じかもしれない……」

「――」

「俺はそれを疑問に思わなかったけど、〈録画〉は『自分たちの目に映る視覚情報をそのまま一時的にストックしておく』〈(わざ)〉が単純に有効に働いてたってだけかも――もしかして、〈録画〉が()()()()()()()方が、良い対照条件になってたのかなあ――」

 そうなのか……と、タオは再び溜息をついた。

「俺自身が目にしたのは竜巻(そう)としか見えなかった訳だけど、その場には居なかったから、地元の親方達が()()()ものは感じられなかった訳で……。俺はそれで、自分が見た情報だけで、そういう云い方しちゃったんだ、多分。悪い」

 ぽりぽりと頭を掻いて謝ってくるリオンに、タオが苦笑を浮かべて「こちらこそ」と小首を傾げた。

 ――サヴァナのマイスター達でも理解が叶っていないというのは残念なことだが……、先走った期待感のせいで、若者に気を遣わせてしまった、「こちらこそ済まなかったな」とタオは云った。

 それから、気を取り直して、というふうな声色でリオンへ「それで」と続ける。

「その竜巻は、その後、何にも変化しなかったんだろうか?」

 タオがそう問うと、――リオンは、一層顔をしかめて俯いた。タオが不審そうに目を細め、アサギは心配そうに首を傾げた。

「どうしたの?」

 アサギが問うと、リオンは、はっと顔を上げて、「無理矢理」であるのが顕わに、苦笑を浮かべた。

「これも大きな()()()()()()()()だな……」

「ん……?」

「まず、サヴァナに出た竜巻は、俺達がはっきり確認出来たようには、『変化』した感じじゃなかったらしい。というのは――、変化したように見えた人も居たし、竜巻のままだと思っていた人も居た。何たって、相手は()()竜巻、風なんだから、本来目に見えないものだもんな。目に見えるのは竜巻(かぜ)そのものじゃなくて、それが巻き上げた塵とか砂とかなんであって……」

「ふむ……?」

 タオが興味深そうに鼻を鳴らした後、しかし、ただそれだけにしては、リオンの先ほどの沈んだ表情が何故のものか分からなかったので首を傾げている。

「作戦に直接携わった親方達は、()()()()()に見えていたみたいだ。逃げてた皆の中にも見えた人は居たらしい」

 表情や声を何とか平常のものに保とうとしながら――つまり、それが完全には果たされず奥に動揺は隠れたまま――リオンがそう云い、タオが取りあえずその言葉に対して直接の質問を投げる。

「例えば何に見えたと?」

「大きな鳥を見た人が多いみたい。鳳凰や朱雀、フェニックスって表現した親方も居たが、大鷲とか白鳥って実在の生き物を云った人も居る。鳥でなければ、天使(セラフィム)か……悪魔(デモン)、と。人型の何か、に見えた人も居るってことなんだろうな。――たださ」

「うん?」

「俺達は、火の玉が巨人の()()()()のを見ただろ? フリュスも、土塊が獣の()()()()()って云ったな?」

 リオンはアサギに顔を向けて確認する。アサギが頷いた。改めてリオンがタオに向かって語り出す。

「サヴァナの民が見たのは、()()()()()ものではなくて、竜巻の中にそういう()を見た……って感じらしい。親方達の中には竜巻の作った塵の壁が崩れて形作り、本当に鳳凰が飛び去った、と感じた人も居るようだけど……〈力〉の違いのせいなのかなあ、認知の個人差が激しいようなんだ。だから、竜巻が竜巻のまま、()()()()()()()()()()()()()()人が居ても可笑しくないんだな」

「ああ……」

 再びリオンの顔に陰りが過ぎる。軽く「板」を掴んで、ハアと息をつくと、

「〈敵〉たぁ云え、夢見は悪いよなあ……」

 そんな独り言を吐いた。

 タオは目を細めて、「何を見たんだ」と問うた。

「その場に居た訳では無い分、感じたものは違うとしても、装置を通じて、おまえの目には何が見えた?」

「……俺は、竜巻を見た。鳥――翼を持っている何かの影、っていうのは見えなかった。それに、空の裂け目の()()()が違ってた、っていうか……」

 タオに顔を向けて、ひとまずリオンはそれを云う。

「俺達は、それにフリュスでも、炎や土塊とは()()()()に空の裂け目があったのに気付いたんだよな」

「うん?」

 リオンが「板」から手を離し、手振りを交えて説明した。

 左手で拳を作ると「炎がここに出てきたとして」と胸の前に突き出し、右手は、右上――タオから見て左上――を指すように人差し指を立て、その位置で線を描きつつ、「この辺に裂け目がいつのまにか出来ていて、化け物が出てきたよな」と確認する。

 タオが「そうだったな」と頷き、アサギも「火の玉はそんな感じだったし、位置関係は知らないけど、フリュスでもそんなだったのだと思う」と頷いた。

 リオンは、「サヴァナはそうではなくて」と首を一度振った。

「竜巻が『移動』を始めた後、そこに裂け目が出来てたのに気付いたっていうか……」

 今度は左手と右手の両方を拳に――いや、緩く握って「筒」を形作った。それを上下に重ねて胸の前に突き出すと、重ねたまま右の方へゆっくりと動かした。「竜巻が移動」する様を表しているらしい。それから左手だけを解いて、最初に「筒」を作った辺りの上方で筋を描いた。右手はそのまま動かしている。

「こんなふうに、竜巻が動いていって、それが最初に出てきた場所(そら)に裂け目を視認した、っていう…、雰囲気としちゃあ『裂け目を隠してた竜巻が退()()()』って感じかな。――一応確認しとくと、その後に『ミサイル』の名残は一切無かった。破片らしきものが落ちてるわけでも無いし、()()()()にも異常なし。一体、そんなものが本当に飛んできたのかってくらいに、サヴァナでも『消えた』んだ」

「ふむ……」

「――そんでもって……、竜巻が去った後に視認した『空の裂け目』、俺達はそこから化け物が出てきたのを見たけど、サヴァナでは違った」

「何?」

 タオがぴくりと眉を寄せた。


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