人である為に
掲載日:2025/11/25
砂利道を踏んで 林の奥へ
文化のにおいが 薄まる方へ
緑の海に膝まで浸かり
人と物の気配が消えるところまで
「私」を抱えて逃げてゆく
四角い硬い鉄の世界は 私には広すぎる
60と12に分割された円盤の上には
私は立っていられない
このおそろしく澄んだ夜の星と
黒い木々に隠れた低い月の方が
私に正しい時間を教えてくれる
湿った土に両手を付いて 目を閉じる
スズとコオロギの音色が 葉を擦る微風に混じり過る
人である為に
私はここには居られない
人である為に
「私」は帰らなくてはいけない




