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天国への滑走路

作者: 夜は不可欠

愛する人にもう一度会えるとしたら…あなたはどうしますか?

静かな田舎町、青空が広がる中、ひときわ目立つ小さな空港があった。そこには、古びた滑走路と一機の小型飛行機が静かに佇んでいる。この空港は、地元の人々にとって特別な場所だった。なぜなら、この空港は「天国への滑走路」と呼ばれ、ここから飛び立つ飛行機に乗れば、自分の大切なら人と出会う事ができると言う噂があったからだ。


あるどんよりとした天気の中、空港に一人の男性が訪れた。彼の名前はJ。彼は、数年前に亡くなった妻との思い出を胸に抱きながら、空港の滑走路を見つめていた。


主人公のJは、町の小さな書店を営む中年男性だった。彼は、妻を数年前に病気で失い、その悲しみを抱えながら日々を過ごしていた。ある日、彼は友人からこの空港の噂を聞き、興味を持つようになった。彼は、妻にもう一度会いたいという思いから、空港を訪れることを決意した。


空港に着くと、滑走路の先に立つ小型飛行機が目に入った。周囲には誰もおらず、静寂が漂っていた。彼は、飛行機の前に立ち、心の中で妻に話しかけた。「君に会いたい。もう一度、君の声を聞きたい。」


その時、突然、飛行機の扉が開き、中から一人の老人が現れた。彼はこの飛行機のパイロットであり、亡くなった人々がいる天国と現実の世界を繋ぐ役割を担っていた。


老人はJに微笑みかけ、「君も会いたい人がおるのか?」と尋ねた。


Jは驚きながらも、心の奥底で感じていた希望が膨らんでいくのを感じた。「はい、妻に会いたいです。」


老人はJの返事を聞くと、優しく頷き、彼を飛行機の中へと招き入れた。機内はシンプルで、しかしどこか温かみのある雰囲気が漂っていた。Jは座席に腰を下ろし、心臓が高鳴るのを感じた。彼は本当に天国へ行くことができるのだろうかという不安と、妻に会えるかもしれないという期待が交錯していた。


老人は操縦席に座り、機器のチェックを始めながら「この旅は君とって特別なものになる。心の準備はできておるか?」と尋ねた。Jは深呼吸をし、「はい、準備はできています。」と答える。


飛行機が滑走路を離陸すると、Jは窓の外に広がる景色を見つめた。田舎町が小さくなり、青空が広がる中、彼の心は次第に落ち着いていった。老人は彼に向かって微笑み、「これから君の心の中の旅が始まる。大切な人に会うための準備をしなさい。」と言った。


飛行機が空を飛ぶ中、Jは自分の心の中にある思い出を辿り始めた。妻との楽しい日々、笑い合った瞬間、そして別れの悲しみ。彼はそのすべてを思い出しながら、妻に会うための準備をしていた。


老人は操縦しながら、Jに向かって話しかけた。「亡くなった人々は、君の思い出の中に生き続けている。彼らに会うためには、まず君自身がその思い出を受け入れることが大切じゃ。」


Jはその言葉に深く頷き、心の中で妻に語りかけた。「君を忘れたことはないよ。君との思い出は、いつも僕の心の中に生きている。」彼は目を閉じ、妻との思い出を一つ一つ思い返していった。彼女の笑顔、優しい声、そして一緒に過ごした日々が、まるで映画のように鮮明に蘇ってきた。


老人はその様子を見守りながら、静かに操縦を続けた。「思い出は、君が彼女に会うための架け橋。心の中で彼女を感じることができれば、きっと再会できるじゃろう。」


Jは心の中で妻に語りかけ続けた。「君がいなくなってから、毎日が空虚で、何をしても楽しくなかった。でも、君のことを思い出すと、少しだけ心が温かくなるんだ。」彼は涙を流しながらも、心の中で妻の存在を感じていた。


飛行機が徐々に高度を上げ、雲の中に入っていくと、Jは不安と期待が入り混じった感情を抱えていた。老人は優しく微笑み、「もうすぐじゃ。心を開き、彼女を迎え入れなさい。」と言った。


その瞬間、飛行機が雲を抜け、目の前に美しい光景が広がった。まるで夢の中のような、柔らかな光に包まれた場所が見えた。Jはその光景に心を奪われ、思わず息を呑んだ。


「ここが天国なのか?」とJは呟いた。


老人は頷き、「ここは君の心の中の天国。君が愛する人に会うための場所じゃ。」と伝えた。


Jは心の中で妻を呼び続けた。「君は、どこにいるんだ?」と、すると、ふと目の前に彼女の姿が現れた。

彼女は微笑みながらJに手を振る。鮮やかな光に包まれ、その姿はまるで夢の中から抜け出してきたかのようだった。Jは一歩一歩、彼女に近づいていく。全身が震えるほどの感動が彼を襲った。


「君…本当にいるの?」Jは声を震わせて尋ねた。


妻は優しく頷きながら、「私はいつもここにいるわ、あなたの心の中に。」と答えた。


その言葉を聞いた瞬間、Jは涙が溢れ出し、彼女を強く抱きしめた。「君に会いたかった。君がいなくなってから、どれだけ寂しかったか…」


彼女は微笑みながらJを抱き返し、「私もよ。あなたが元気でいてくれたことが、一番嬉しいわ。」と答えた。


しばらく静かな時間が流れ、二人は互いの温もりを感じながら、過去の思い出や未来への希望を語り合った。そこには決して消えない愛が、二人の間に流れていた。


老人はその様子を離れた場所から見守りながら、心の中で思った。「愛は決して消えない。この瞬間こそが、彼らにとっての天国なのじゃ。」


やがて、Jは心の中の感情が満たされたことを感じ始めた。彼女と過ごした時間が無限に続くことを願いつつも、やがて帰るべき時が来ることを理解していた。


「また僕達会えるのかな?」Jは少し不安な気持ちで尋ねた。


妻は微笑みながら、「もちろん。私はあなたを見守り続けるわ。いつかまた会えるその日までね」と言った。


Jの心には、彼女の言葉がしっかりと響いた。別れが訪れるその瞬間まで、彼は強く彼女を抱きしめ、「ありがとう、愛している」と告げる。


雲の彼方に、次第に日が暮れて行く。Jを乗せた飛行機は再び滑走路に向かって下降を始めていた。Jは心の中に温かい思いを抱きしめながら、愛する人との再会の約束を胸に、未来へと歩き出す準備をしていた。

ご一読いただき感謝いたします。

私は本来ミステリーやSFが大好きなのですが、初めての作品は短編で簡潔にしたかったのでこれを書きました。

至らない点ばかりですが、時間をかけて成長していきます。

応援よろしくお願いします。

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