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なずなと雪女

「あ゛あ゛。まじでムカつく。いくらわたしが可愛いからってあんな態度はないわ。私のことバカにしてるようにしか思えない」


 

 鏡に向かってなずなが怒鳴っている。



 「群れなきゃ何も言えない人間集団のくせに」



「弱い奴はこうやってすぐ群れるんだよ。だから自分が強くなった気になって、わたしの悪口言い出すんだよ」



 なずなは怒りっぽく、汚い言葉を使う癖がある。そのせいで、よく相手を傷つけてしまっている。



「わたしが少し悪口言っただけで急に泣き出すとか、心弱すぎ」



 なずなは他の人より心が強い。悪口を言われてもすぐ言い返すタイプのため、加減をわかっていない。



「わたしが悪いみたいじゃん」



「あの時だって――」



 これはほんの数時間前の教室での出来事である。

 


「図書委員に立候補する人はいるか?」



「はい!」



 クラスメイトの柚葉が挙手した。。



「ほかにいるか?」



「はい」



 なずなも挙手した。



「まずは柚葉さん、意気込みをお願いします」



「わたしが図書委員になったら、本の貸し出しがスムーズに行えるように頑張ります」



「ありがとうございます。次に、なずなさんお願いします」



「わたしが図書委員になったら、すべての仕事を完璧に行います。柚葉みたいに一つのことしか頑張れない人間よりも、私みたいな優秀な人のほうが図書委員も求めてると思います」



 先生が声を出す。



「なずなさん、自分のことを棚に上げるために人のことを下げる行為はよくないことですよ」



「柚葉さんに謝りましょう」



 柚葉は首を横に振る。



「私は大丈夫です。なずなさんもわざとではないと思いますし」



 柚葉はなずなを見ながら言った。



「わたしわざとだよ。あんたのことを下げたの」



「なんでそんなひどいことするの?」



 なずなに問いかける。



 「あんたの態度が気に食わなかっただけ。それだけ」



 「その意気込みで図書委員になれると本気で思ったの?」



 なずなに問いかける。



「別に図書委員になりたかったわけじゃない。あんたと対立したかっただけ」



「なんでそんなことするの?私あなたに何かした?」



 柚葉は泣きそうになりながら言った。



「あんたのその態度だよ。何かあるとすぐ泣きそうになる。その態度が気に食わない。同情でも誘ってんでしょ」



 なずなの追い打ちで柚葉は泣いてしまった。



「なずな、あんた最悪だな。早く柚葉に謝れよ」



 一人の男子が言う。

 その直後、クラス全体に柚葉を擁護する動きが出た。



「なずな言い過ぎ」

「性格悪すぎ」

「柚葉ちゃんに謝れよ!」



 教室はどんどん騒がしくなった。



 「なずなさん、後で職員室に来てください」



 「なんでですか」



 怒り気味に言う。



「理由は後で説明します。とにかく来てくださいね」



「わかりました」



 なずなは静かに口にした。



 ピンポーン。ドアのチャイムが鳴った。




「なんでこんな時に」



 なずなはインターホンに向かった。



「中に入れてくれませんか?」



 そこには知らない女性がいた。



「あんた誰?中に入れるわけないじゃん」



「申し訳ございません。今はまだお答えできません。中に入れてくれればお答えします」



 家には誰もいないからちょっとぐらいならいいよね。



「わかった。入って」



 なずなは彼女を家に入れた。



「それで、あんたは誰なの?」



「なんだと思います?」



 彼女はにやりと笑う。



「変態?もしくは不審者」



「犯罪者と一緒にしないでください。答えは私に触れればわかります」



 彼女はなずなの手を握った。



「どう?何か変でしょう」



 彼女は笑った。



 「冷たっ!」



 なずなは思わず手を離した。



「私、雪女なんです」



 彼女の告白になずなは驚愕した。



「雪女?」



「はい。雪女です」



『妖怪は存在しない』



 なずなは言う。



「いいえ。妖怪は存在します。目に見えないだけで存在してます」



 はっきりと否定する。



「やまびこもいるの?科学的根拠が証明されたけど」



「やまびこもいます。妖怪は人間の気持ちが形になったものです。たとえ科学的根拠が証明されていても、一度生まれてしまった妖怪は消えることはできません。何十年、何百年と消えることもできずに、地球を彷徨い続けているのです」



 雪女は続ける。



「ただ彷徨っているだけではありません。私たち妖怪は人間を観察し、人間との共同生活を夢見ているのです」



「妖怪は存在してるってことはわかった。けどなんで私の家に来たの?」



 雪女は答える。



「あなたに妖怪と人間を結んで欲しいのです」



「人間と妖怪を結ぶ?それはわたしじゃなきゃダメなの?」



「あなたは普通の人間よりも心が強いので、成功しやすい。それに…」



「それに?」



雪女は扱いやすいと考えたが、口に出すことをやめた。



「なんでもないです。とにかく、あなたに頼んでいいですか?」



「よく分からないけど、楽しそうだからいいよ。もし、妖怪が人間を裏切ったら全部あんたの責任だけどね」



「ええ。もちろんそれは承知しております。何はともあれあなたが引き受けてくれて良かったです。これからよろしくお願いします」



「うん」



 なずなと雪女の生活が始まる。







毎日投稿できたらいいなと思っています。

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