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吸血鬼譚。但し『ドラキュラ』以降を除く  作者: 萩原 學
さまよえるオランダ人
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トマス・ムーア:さまよえるオランダ人(1804)

トマス・ムーアの詩(1804)は聖ローレンス湾に浮かぶマグダレナ諸島を歌っており、中々雰囲気のある作風ではあるものの、既に南アフリカから離れオランダ人である必然性はない。

超自然的動力で有り得ない動きを見せる幽霊船のイメージには、此方が近いのだが。

The Flying Dutchman

by Thomas Moore


Written on passing Dead-Man's Island


見たまえ、あそこの黒雲の下に何か、

飛ぶように滑り行く、不気味な小帆船か?

満帆に、いや風は凪いでいるのに、

あの船の帆は一杯に、吹かない風に!

SEE you, beneath yon cloud so dark,

Fast gliding along a gloomy bark?

Her sails are full,—though the wind is still,

And there blows not a breath her sails to fill!


何をする、闇を引きずるあの船は?

そこに在るは、墓場を占める静謐では。

今再び救われるべく弔鐘鳴らせ、

夜露の降りた帆のはためき。

Say, what doth that vessel of darkness bear?

The silent calm of the grave is there,

Save now and again a death-knell rung,

And the flap of the sails with night-fog hung.


荒れ果てた岸に残骸の横たわるもの

冷たく無情なラブラドールの

月の下、霜の降りた乗り物に。

数え切れぬ船乗りの骨を投げ積みに。

There lieth a wreck on the dismal shore

Of cold and pitiless Labrador;

Where, under the moon, upon mounts of frost,

Full many a mariner’s bones are tost.



あそこの影なる小帆船こそ、その難破船だったのでは、

青い鬼火が、あちらの甲板ぼんやり点くのは、

演出なのでは、蒼くも青い乗組員の。

教会の墓地の露を飲むばかりのような奴の。

Yon shadowy bark hath been to that wreck,

And the dim blue fire, that lights her deck,

Doth play on as pale and livid a crew

As ever yet drank the churchyard dew.


亡者の島へ、台風の目にあり、

亡者の島へ、恐るべき速さに、

帆という帆は巻き上げ骸骨かたどる、

舵取る手は此の世のものならず!

To Deadman’s Isle, in the eye of the blast,

To Deadman’s Isle, she speeds her fast;

By skeleton shapes her sails are furled,

And the hand that steers is not of this world!


急ぐべし、あなや!急げや急げ、

畏れ多き小帆船よ、夜が明ける前、

荒れ狂う天候しか朝に見せないように、

いつまでも青褪めているように、その赤い目の光に!

Oh! hurry thee on,—oh! hurry thee on,

Thou terrible bark, ere the night be gone,

Nor let morning look on so foul a sight

As would blanch forever her rosy light!

原註:亡者の島は、聖ローレンス湾にあるマグダレン諸島の1つであり、アイザックコフィン卿の所有物です。上記を触発したのは、船員の間で非常に一般的な迷信で、この幽霊船は確か、さまよえるオランダ人と呼ばれていました。

Notes to the poem:

Dead-man's Island is one of the Magdalen Islands in the Gulf Of St. Lawrence, and, singularly enough, is the property of Sir Isaac Coffin. The above lines were suggested by a superstition very common among sailors, who called this ghost ship, I think, The Flying Dutchman.

訳注:所有者 Coffin の名は「棺桶」に当たる。

drank the churchyard dew:「墓地の露を飲む」とは、墓に入っている筈の者、つまり死者を指す。

skeleton shapes :skeleton は「骸骨」のみならず「透けて見える構造」を意味する。

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