思い出 東京の片隅での出会い①
次は~大阪に止まります。ぼーっとしていると目的地に着きそうになる。
遊びに繰り出す際に時々過去の自分のトラウマと向き合うのはノブの習慣だ。
~10年前、東京にて~
どんだけ仕事貯めこんでるんだよ!!ノブ。俺にかかればこんな仕事瞬殺なのに。
死ねよ。要領のいい先輩に怒鳴られる。トイレの時間が多い。1時間は休憩してるぞ。
ノブはとんだ給料泥棒だな。別の先輩には密室にて1時間説教。慢心創痍とはこのこと。
華の東京丸の内で朝6時出勤で帰宅は定時の20時。残業規制で強制帰社で仕事が終わらない。
残業時間は100時間ペースで働き、途中、力尽き仕事を休みながらも耐える日々。
しばらくは東京駅で自費でホテル暮らしもしたが、限界に達して帰り道の降車駅で
降りる気力がなく、気づけば御茶ノ水。ふらふら歩き高架上の橋の中央てぼーっと
しながら涙が止まらない。
もう死のう。飛び降りようと1時間佇んだが声をかけてくれる人もなし。
なんて冷たい町なんだ。東京。関が原を超えると人種が違うような寂しさがある。
関西圏暮らしの長いノブ。気がめいった時の異国感はさらに生きる気力を奪う。
ふぁーん。列車が来た…が行けず…そんな時腹が減る。まだ生きろということか…
近くの吉野家で特盛卵を頼み腹に入れる。味…わからないな。
どう帰ったらいいかわからないからいつもと違う線で帰宅…最寄りの小岩で
降りると、改札にヤンキー風の陽気な兄さんが。兄さんおかえりなさい。
1件3,000円でいかがっすか。わからないが安い。それよりも誰にも相手にされない
東京で話かけてくれることで救われた。金を捨てる気持ちと藁にすがる想いをシェイク
させた感情でついていく。
東京はおしゃれな街…のイメージを壊す下町感のある小岩。悪くない。大阪の十三っぽいな
という小汚い安心感と危うさを抱えるこの街の雰囲気はいいなと冷静に見ていた。
意外とかわいいぞ。人生初キャバクラ。フリーでついた子は仕事の女子社員ほどの気遣い
もいらない。ドリンクサービスの際にどや顔で嬢にご馳走し、ペラペラな会話を楽しむ。
愛想笑いでも心にしみる。ノブは自分の渇きを実感し泣きそうになっていた。
ただ財布のひもは固く、ドリンク攻勢にも耐え、女性スタッフの威勢のいい
延長交渉もガンとして断り帰路につく。と思ったら出口でスタッフが待ち構えている。
もう一軒いかがですか?やっぱり小岩の情報収集や経済情勢を調べるのも仕事だと
ノブは言い聞かせ繁華街を突き進む。リーマンショックの影響か客の入りが少ないから
なのかいつの間にかキャッチに囲まれ、あれよあれよと3件目。女性の印象よりも
キャッチの兄ちゃんたちに必要とされたのが嬉しかった。まあカモがネギしょってた
だけなんですけどーーヨホホホホ。
キャバクラのルールはわからんがキャッチの兄ちゃんの値段以外は出さなければ
大丈夫なんだ。そんなキャバクラ体験を終え、タクシーで偉そうに帰ってみる。
死ぬ前にせめて貯金を使い切ろう。そう誓うノブであった。