08.吸血鬼さん、メイド服に満足。
「旦那さまにご奉仕して喜んで貰いたいのです、と店員さんに相談したところ……ご奉仕なら男の人はこういう姿を好むと教えて頂きまして」
店員はなんということを教えるのだろうか。
だが、悪くは無い。
「似合っているよ」
ひとまず褒めてみると、ティティは嬉しそうにはにかんで俺の腕に抱きついて来た。「しっかりご奉仕いたします」等とも言われ期待感が高まって行く。
今夜は激しい夜になりそう……というか事実そうなった。
寒さ対策にて外套も追加で購入しつつ帰宅して夜が訪れ、俺が求めるよりも先にティティがご奉仕の為に動き出した。
心身全てを捧げてくれるその姿は、俺が想像していた通りに欲望を満たして気持ちを良くしてくれる。
メイド服であることも良いスパイスとなった。
俺がご主人さまなのだと見た目で分かりやすく表現されており、征服と支配の実感を与えてくれているのだ。
「ご満足頂けましたでしょうか……?」
ただ、ティティはまだ拙いこともあって奉仕に夢中であったらしく、俺の表情まで確認する余裕が無かったようで。
全てが終わった後に俺が喜んでいたかを非常に気にしており、不安そうに伺いを立てて来た。
不満があれば途中で調教をするつもりであったが、そんなことをする必要は結果的に無く、今はまだ拙い部分も含めて俺は満足であったので頷く。
すると、ティティが嬉しそうに頬を朱色に染めて俯いた。
「……お喜び頂けたようで私も嬉しゅうございます」
「とても良かったよ。毎日して貰おうかなと思っている」
「かしこまりました」
「ありがとう。それじゃあ今日はもう休むといい」
「はい」
さて、ご奉仕も終わりそろそろ俺も休む時間だが……その前に一旦ティティのスキルについて触れて置こうか。
まず、ティティが持っているスキルは【暗器の勇者】というものである。
これは暗器に関する効果が非常に強力多彩で補助も多くあるスキルで、以前はティティも常々沢山の暗器を隠し持っていたようである。
しかしながら、レベルが下がり世間に顔を出せない事情ゆえの生活苦で、暗器を全て売り払い一つも持っていない状態になっていたようだが。
そういえば、街道で俺の前に出て来た時も暗器など使わず真っ向から来ていたな。
色々と世知辛い背景があったようだが……それはともあれ、折角の勇者のスキルを眠らせておくつもりは毛頭無いので、レベルを上げる際に改めて暗器を買って与えるつもりだ。
金なら幾らかの蓄えがあるので、なんとかなる。最低限の運賃で荷運びをしていたが、俺は物欲が薄くほぼ全てを貯蓄に回していたからだ。
ちなみに、ティティにかまけて俺自身の装備がおろそかになるといったことは無い。
俺はそもそも武装が必要無いほどに強く、それに仮に強敵が現れたとしてもスキル【吸血鬼】の効果の一つに”戦闘形態”というものがある。
戦闘形態を使用すると俺は羅刹悪鬼のような姿となり、その強さは大幅に増幅される
そして――戦闘形態になると任意で大気中に蔓延させることが出来る瘴気も、これまたおぞましい。
何かしらの対策を講じない場合、俺のレベルの1/3に満たないレベルの周囲の生物が即死してしまう影響を与えるのだ。
俺のレベルの1/3ということは、つまり70以下のレベルの生き物が死ぬのである。
今になって俺は理解せざるを得ない。
どうして”スキル【吸血鬼】を持つ者は見つけ次第に処刑”という決まりが世界で共通して存在していたのかを。
他者から経験値を吸い取ることでレベルが容易に上がり、そしてその後に戦闘形態を使えば死を世界にまき散らすことが可能だからだ。それ以外にも眷属化などで洗脳も出来るし、他にも異常な効果のものが諸々ある。
仮に極悪人がこのスキルを持っていた場合……世界は混沌に陥り終わりに迎えることになると思われる。
どう考えても魔王よりも厄介な存在だ。
少なくとも俺は、魔王が瘴気を出すだけで周囲の生物を即死させる、等という話は聞いたことが来ない。
今の時代にこのスキルを持っているのが俺で良かった。復讐には全力を出しているが、世界をメチャクチャにしよう等とは思っていないからだ。
まぁそれはともあれ。
さしあたってのティティのレベル上げの目標は……瘴気を食らっても影響がないくらいだろうな。少し多めに見積もってセーフティラインの倍の140ぐらいまで上げれば問題無い。
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