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42.吸血鬼さん、斬る。

 フォルドゥークへの復讐をあれこと考えていた俺だが、この館の中を見て挙句にはダンス勝負までした中である一つの結論に辿り着いていた。


 まず、フォルドゥークにとっての一番の楽しみとは、昔と変わらず男たちとの夜の生活である。その為にこういう館を作り催しも開いている。


 つまり与えられる絶望の中で最上のものは、男とあんなことやこんなことをする楽しみを奪うこと――その一つのみだ。


 そこで俺は決めた。最終的に始末をつけるつもりではあるが、その前に味わって貰う絶望として男の象徴を奪い去ろうと。


 処置は今この場でする。痛みで起きて叫ばれることもない。奪うと同時に”ダメージを吸う”を痛覚のみに発動させれば本人は気づかないからだ。


 ついでに、俺が殴った瞬間の記憶も吸って破棄しておく。





 俺は一分と経たずに処置を終えると、宿に帰らず、フォルドゥークの部屋の天井裏に潜み様子を窺うことにした。


 すると、一時間が経った頃にフォルドゥークがむくりと起き上がった。


「私寝ちゃってたのかしら? あら何かしらこの血は――な、ななな、何よこれどうなってんのよぉおおおお!」


 体の違和感に気づき、すぐに事態を把握したフォルドゥークの絶叫が響き渡る。


 俺がじっくりと観察を続けていると、フォルドゥークは半狂乱になりながら扉をバンと開いて親衛隊を呼んだ。


 サミュエルを含めた何人もの美形の男がはせ参じ、そして一様にフォルドゥークを見て目を丸くした。


「フォ、フォルドゥークさまっ……」

「一体何が……」

「あぁぁああぁあ! 一番大事な所がぁああああ! これじゃあもう男を抱けなくなっちゃう! どうしたらいいのよぉ……」


 フォルドゥークはその場に崩れ落ちると、嗚咽混じりに泣き喚く。

 俺は笑いを堪えるのに必死だった。

 良い気味だ。

 もう一生自らの趣味を楽しめなくなった絶望感を存分に味わうといい!


「お、落ち着いて状況を思い出して下さいフォルドゥークさま!」

「落ち着けって……目覚めたらこんなことに……」


「痛み……とかは無かったのですか?」

「そんなものは全然……新入りちゃんをベッドに誘って……それから良く覚えてないけど変なことは無かったハズだわ」


「……新入りが何かを知っているかも知れませんね。フォルドゥークさまが寝ている隙に何があったのか、話を聞けばヒントが掴めるかも知れません」

「そ、そうね。探して頂戴な」


 どうやら俺を探す方向に舵を切ったようだが、当たり前だが捕まってやる気は無いし、連中が俺を見つけるのも容易では無い。


 俺に隠れる特技があったりはしないが、館の中は終始全体的に薄暗かった。俺の顔をしっかり覚えているやつがそもそもいない。


 そこらへんを普通に歩いていても俺だと気づけないハズだ。


「――あの新入りを探すぞ!」

「了解ですサミュエル隊長! ところで、どんな顔でしたっけ?」


「か、顔……そういえばどういう顔だったかな。薄暗かったしダンスに夢中で僕も良く覚えていない」


「それじゃあ探せないのでは……?」

「……そ、それでも探すんだ!」


 親衛隊が早速どう俺を特定すべきかに戸惑いはじめながらも、フォルドゥーク親衛隊は急いで外へと向かって行った。


 一生見つからない人探しを頑張ってくれ。


「うぅ……」


 めそめそと泣き出したフォルドゥークだけが部屋に残されたのを見て、俺は天井裏からすぅっと降りる。すると、フォルドークが俺に気づいた。


「し、新入りちゃん⁉」


 これは復讐である、ということを本人にも認識して貰いたいところだ。そろそろ俺のことを思い出して貰う必要がある。


「久しぶりだな。フォルドゥーク」

「え……?」


「随分と大変なことになって慌てていたようだが、それは俺の仕業だよ」

「な、何を言って……」


「もう覚えていないか? 俺はセバス。荷物持ちのセバスだよ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公を覚えていたのが今の処、シャル(ミオーネ)のだけですね。そのおかげであっさり眷属にできたけど…
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