36.吸血鬼さん、次の獲物を狙いに行く。
拠点へと戻る途中、街人たちが絶命させる寸前にこっそりと吸っていたサルキッスの記憶を俺は破棄していた。
サルキッスの記憶は、その全てが幼女の悲痛な表情で埋め尽くされている。
いかに歪んでいたのかを教えてくれるこの記憶は、留めておく必要など無いものばかりだ。俺にとって有益になりそうな情報も一つも無い。
※
「お帰りなさいませ、旦那さま」
「お戻りになられましたのですね、ご主人さま」
「ぬし様~」
「お待ちしておりましたわ、あなた様!」
拠点に帰ると、俺の眷属たちが一斉に出迎えてくれた。
普段は王宮で情報収集に努めて貰っているドラティアの姿もあるが、それは順番的に帰ってすぐのご奉仕がドラティアだからだ。
今日までに終わらせて来ると事前に伝えていたので、合わせてやって来たのだろう。
「今日のご奉仕は私の番」
俺のダイエットの指示が効果を現わし始めており、最近は少しずつミミのような触りたくなる感じの肉感になりつつある。
これで【支援の勇者】による異常快楽状態でのご奉仕を望まなければ、俺としては満足なのだが――と、そんなことを考えていると、ドラティアが俺の考えを見透かしたかのように言った。
「ところで……少し気持ちに変化がありましたので、今日は普通のご奉仕をしようと思っていますわ」
一体どういう心情の変化だろうか?
「そんな怪訝そうな顔をなさらないで下さいまし。単にミミが羨ましくなったもので」
「ミミが羨ましい……?」
「はい。……私もこのお腹にあなた様の子を宿したいのです。王宮には乳母もおりますので、教育はしっかりと受けさせ立派な子に育つよう努めますわ」
そう言われて、俺は少しドキっとした。
今更になって気づいたが、そういえばドラティアは曲がりなりにも王女であるのであって、子が出来たら大変なことになるのではないか、と。
だが、ドラティア曰くはその心配は無いと言う。
「……四日に一度王宮を抜けることは、察しが良いものは勘付いております。それゆえに先手を打ち、私は愛しき人との逢瀬の為にという事実をそれとなく宮廷内に流しているのですわ。勇者の情報収集とは違い、こちらはお父さまとお母さまの耳にも入るように」
「……」
「私が一番の王位継承権持ちではないこともあってか、お父さまとお母さまも何も言い出しては来ておりません。それはつまり、”好きにしろ”、と暗に仰っているに等しいのです。もともと私は引きこもりがちであった背景があるようですので、こういった事はむしろ喜ばしいとも受け止めておられる感じもありますわ。……つまり、問題は一つとしてありはしないのです」
どうやら、ドラティアなりに整合性を合わせていたようだ。
まぁその、何も問題が無いと言うのであれば、俺としてはその願いに沿うのは一向に構わない。
支配者として、なるべく眷属の望みは叶えてやるべきという想いもある。
「分かった」
俺は力強く頷くと、今日は地下室では無く自らの寝室へとドラティアを誘い、それからミミにする時と同じような愛し方で夜を過ごしていく。
意外なことに、真面目で普通なドラティアのご奉仕はとても良かった。
王女ということもあり、それなりに品がある仕草をドラティアは取りがちだが、その中に混じる淫らさが背徳感にも近い刺激へと変わったのだ。
いつもこうだと良いのだが……。
※
さて、何はともあれ次の標的はミオーネだ。転々としているとのことだが、現在の居場所は分かっている。
ムーンディアよりも南西に位置するとある国だ。
ときに……ドラティアから貰った情報を改めて確認して行く中で、俺はあることに気づいていた。ミオーネは転々としているように見えて、実はそこまで西へ東へは移っていないことに。
ある一点を中心に、弧を描くように国や地域を跨いで移動している。そして、その中心に位置しているのは――俺が住んでいたアトルの村だ。
一体どういうことなんだ……?
まぁ、捕まえて本人に聞けば分かることかな。仮に喋らなくても記憶を吸えば理由は分かる。
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