25.吸血鬼さん、次なる標的の勇者を決める。
何はともあれ、魔王を手中に収めたことで、残りの勇者たちへの復讐へ専念が出来るようになった。
それで次に狙う勇者だが……これは、サザンの記憶によっておぼろげにだが消息が掴めた二人のうちのどちらかにしようと思っている。
ミオーネ・シャクネルとドラティア・ムーンキッズ。二人とも女の勇者だ。
サザンはミミの捜索を始める時に、同じ女性ならば行方を聞いている可能性があるとして、同時進行で女勇者を探していたようだ。
実際に会う前にミミを自力で見つける事が出来たことで、そこから先は深く捜索はしなかったようだが。
ちなみにティティのことも探していたそうだが、ティティ自身が転々としながら盗賊紛いのことをしていたこともあって、全く足取りは掴め無かったとある。
元婚約者であったユリウスはティティの間近まで来ていたが、その裏に相当の努力があったのだというのが分かるな。
まぁそれはともあれ、ドラティアとミオーネについてサザンは確かに消息を掴んではいたが、それは何カ月も前のものではあるので留意が必要である。
今でもサザンが手にした情報通りの場所にいるとは限らない……のだが、ただ、ドラティアについてはまだいても何らおかしくない感じもありそうだった。
ドラティアはムーンディアという小国の王女であり、サザンが得た情報では、力を失ったことを一部の王宮関係者にのみ伝えて隠しながらひっそりと出戻りして生活しているとの事。
こういった状況であるのならば、国を離れる特別な事情が出来ない限り、今でもいる確率が非常に高いだろう。
なお、ドラティアが王女であったというのは俺は知らなかったし、本人も仲間たちに隠していたようでサザンも知った時には随分と驚いていたようだ。
しかしながら、思い返して見ればドラティアは語尾が「ですわ」になることも多く、俺で弄ぶ時に頻繁に鞭を使う癖があった。
高慢でドS趣味な王女、という言葉を当てはめるとしっくり来る感じはある。
まぁ本人の出自や性癖はなんであれ、居る可能性の高い場所が判明しているのだから、次の標的はドラティアにするのが良さそうだ。
「とはいえ、ひっそりと出戻りということは、王宮の中で引きこもり生活をしていそうという……」
問題はどうやって引きずり出すか、である。
武力を武器に国そのものに脅しをかけて、それで引っ張り出すのが一番楽で手間も掛からない方法ではあるが、それをすると大量の無関係の人も巻き込んでしまうことになる。
俺の信条的にそんな手は取れない。
どうにかしてドラティア一人だけを捕まえるには……ここはティティの力を借りるのが正解だろうか。
ティティの持つ【暗器の勇者】スキルは、身体能力への補助や暗器の扱いが主ではあるが、それ以外にも密偵や暗殺者に向く強力な補助が少ないながらに入っている。
一般人から見たら雲の上の高レベルである事に加えて、ミミの【支援の勇者】でスキル効果そのものを倍加させれば、こっそり浚って来るくらいはお安い御用だろう。
あるいは魔王のレベルを上げて、スキルに何か使えそうな効果が増えるのを期待して見るかだな。
まぁ考えてばかりいても話は進まない。ひとまずはムーンディア王国へ向かうべきだ。場所は確か北方だったかな。
朝陽の眩しさに眼を細めながら、両隣で寝るティティとミミの頭を撫でつつ、かくして俺は本来の目的を達成する為の指針を定めたのであった。
※
「旦那さまの目的は知っておりますので、いつでも出立出来るように準備は常に完璧にしております」
「北は寒いと思いますので、ミミの出番ですね」
「妾はぬし様の行くところならどこへでもなのじゃ~」
ルヴィグの街から離れることを伝えると、眷属化のお陰もあって三人ともが異を唱えなかった。
準備も常にティティが完璧にしてくれているようで、すぐに拠点を出る事が可能である。
そういわけで、俺は出発することに――
「――ところでぬし様、妾は自分の名前が全く分からぬのじゃが?」
そういえば、魔王に名前をつけてあげるのを忘れていた。
眷属にすると決めて実行したのは他ならぬ俺なので、色々と責任というものもある。さすがに名無しの権兵衛のままには出来ない。
ムーンディアへ向かう道中で何か良い名前を考えてあげよう。




