23.吸血鬼さん、魔王の正体を暴く。
――”経験値を吸う”、”記憶を吸う”。
まずはこの二つを同時に仕掛けてみる。すると、”経験値を吸う”は掛かったようだが、”記憶を吸う”の方は抵抗されてしまった。
前者はじわじわとした効果ゆえに未来予知でも気づかなかったか、あるいは俺が使わなかったかだが、後者は眷属化を行う際に必ず必要な条件だ。
眷属化される未来を見たのであれば必ず出て来るハズなので、俺がそれっぽい手段を使うと推察を立てており、対策を用意していたと言ったところか。
魔王は意外と技巧派のようだ。
まぁだが、未来予知されていると思った段階で、俺も抵抗の可能性は考えた。だから”経験値を吸う”も使ったのだ。
「はは、やはり来たか。その戦いに特化したような姿からは、精神干渉の出来るような使い方の出来るスキル等とは普通予想もつかぬな。じゃが妾には分かろう」
「君の方こそ、未来予知が出来るなんてすごい使い方の出来るスキルだ」
「ほう、もう分かってしまったか。まぁ未来予知は妾のスキルのほんの一端に過ぎぬのじゃが」
俺の【吸血鬼】のように、色々と多岐に渡るような効果があるスキルを持っているらしい。恐らくかなり珍しい部類のスキルのハズだ。
だからこそ魔王足りえている、ということなのかも知れないが……まぁひとまず、様子見の一発を食らわせてみようか。
「――ふんっ‼」
目では追うことなど不可能な俺の速さから放たれた一撃は、魔王城に大きな穴をあけ、その衝撃が遥か彼方まで振動として伝わって行く。
これでも殺さないように一応は手加減はしている。というか、魔王もこれを貰うようなヘマはしないだろう。
破壊された魔王城の建材の粉塵が晴れて行くと、俺の予想通りに無傷の魔王がそこに立っていた。
それなりに高レベルであることが予測されるので、レベルが下がらない限り、手加減した大振りの俺の一撃など避けられて当たり前だ。
だが、ある程度のレベルであるとはいえ、俺にはやはり及ばない程度なのも分かった。その気になれば瞬殺も出来るが、殺すつもりはないので時間を掛けるとしようか。
「加減しておるように見えたが……それでこの威力か。凄い一撃じゃな。今ごろ雲間に切れ目が出来ておろうよ」
「いつまで避け続けられるのか見ものだね」
「はは、それでは――どちらが先に疲れるかの我慢比べといこうかのう」
これは推測だが、恐らく魔王はそう頻繁に未来を見れるわけではない。
俺の眷属化のように一定の条件があるのか、あるいは再使用までの待機時間があるのかのどちらかだ。
もしも簡単に視ることが出来るのであれば、たった今掛けられた”経験値を吸う”による己の末路を知ったのであれば、持久戦など考えるわけがない。
魔王は”疑似転生”という俺のスキルの効果を外す術を持っている。
未来を視たのであれば、逃亡して自身を疑似転生させ態勢を立て直すのが最善だと気付くハズだ。
だが、それをする気配が無い。
それが意味しているのは”現在からの未来が視れない”だ。
未来予知がほぼ使えないのに、それでも持久戦に持ち込むと言うことは……優位に立てる何かがあるのだろうが、しかし、それは俺にとってはむしろ好都合である。
俺の”経験値を吸う”が一番に生きる状況だからだ。
いかようなスキルの使い方があったとしても、レベル減少に伴い制限が加われば宝の持ち腐れと成り下がる。使えないのだから。
気づいた頃には逃げる余力や力さえ失い、”記憶を吸う”への抵抗にも限界が来る。ゆっくりと”眷属化”が出来る。
※
その時が訪れたのは一週間後のことであった。
当てる気の無い俺の大振りの攻撃によって魔王城が跡形も無く消し飛び、周囲の木々も根こそぎ消え失せ、ティティやミミも俺の突然の不在を心配しているだろうかと思っていた時だ。
今まで疲れ一つも見せなかった魔王の表情が変わり、急に膝を落とした。
ようやく、”経験値を吸う”がその真価を発揮してくれたようだ。持久戦に優位に立てる使い方が出来なくなるくらいにレベルが下がったのである。
少しずつ弱くなったがゆえに本人も気づかなかったのだろうが、動きも初期と比べれば止まっているも同然に遅くなっている。
「な、なんじゃこれは……どうしてスキルが使えなく……」
「自分のステータスでも見れば解決すると思うよ」
俺がそう促すと、魔王はおそるおそるに自らのステータスを確認したようだ。そして絶叫した。
「わ、妾のレベルが79⁉ どうなっておるんじゃ⁉ 192もあったのに‼」
どうやら元々は200近くのレベルであったようだ。
なるほど、確かにこれでは普通の人間ではどう足掻いても勝てないハズだ。勇者たちで無ければ無理と言われた理由が良く分かる。
それにしても、そろそろ70を下回る頃合いか。死なれては困るので、俺は”瘴気”を止めると”戦闘形態”も解除した。
もちろん、”経験値を吸う”は続行である。まだこのレベルだと”記憶を吸う”に抵抗してくる可能性があるので、もっとガリガリ削る予定だ。
レベルが100を下回ったのであれば、魔王が持つ残りの経験値の総量は俺から見ればそう多くないので、ここから先はガンガン一気に下がって行く。
「あっ……78に……」
それから時間の経過と共に77、76、75と徐々に魔王のレベルは下がり、そしてとうとう20を下回った。
と、その時だ。
ぼふん、と魔王がなぜか爆発し……煙の中から、ヤギの角を頭部に生やす小さな赤毛のロリっ娘が出て来た。
「うわあああ‼ ”魔王の威厳”まで使えなくなったのじゃあああ‼ 妾の正体がロリッ娘だなんて誰にも見せたことないのにぃいいいい‼」




