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エマとアリエルの物語 Recovery of all souls.  作者: ki
第1章 エマとアリエルの出会い
7/24

7.日曜礼拝と告解

 エマの洗礼式から初めての日曜日です。

 アーシャはエマを、キースはギルを抱っこして日曜礼拝に出かけます。


 「あー、面倒くせーなぁ。」

 キースは仕事を理由に滅多に日曜礼拝に行きません。たまに告解(こっかい)のために教会に行き、魂を洗浄する程度です。

 「あなたが行かないと、私一人では、二人の子供を連れていけないわ。」

 「わかってるよぉ。」


 二人は礼拝堂の出入り口付近の椅子に座ります。子供が泣いたら外に出るためです。周りにも、そんな夫婦が数人います。


 「まあ、この子がエマちゃんですか?」

 例の噂を聞いた信徒たちが寄ってきます。

 「神に愛された、きれいな金色の髪ねぇ。」

 「将来の聖女様ね。」

 アーシャとキースは迷惑だと思いながらも愛想笑いで対応します。

 「本当にそうなると嬉しいのですが・・・。」


 時間になりました。全員で賛美歌を斉唱(せいしょう)して日曜礼拝が始まります。

 キースは神父の説教が始まると居眠りを始めます。ギルも父親に抱っこされながら熟睡です。ちなみに見えないアリエルも熟睡です。

 それを見たエマは「あー、あー」起きろと言っているようです。

 「しょうがないパパとお兄ちゃんですね」

 アーシャは自分の味方が増えたことを嬉しく感じました。


 説教が終わり、再度、全員で賛美歌を斉唱(せいしょう)した後、献金して日曜礼拝は終わりです。


 懺悔室の前に何人か人が並んでいます。

 「あなた、私たちも懺悔していきましょう。」

 「そうだな。せっかく来たんだしな。」


 アーシャは守護天使のマリンに聞きます。

 「マリン、私の魂を見て懺悔の内容を教えて頂戴。」

 「裏家計簿だけですよ。」

 マリンは魂に刻まれた罪を見てアーシャに教えます。守護天使は罪の内容を知ることが出来ます。

 「それなら仕方ないわね。」

 アーシャはギルとエマのために裏家計簿を作って貯金していました。キースには内緒です。キースは元冒険者で剣が大好きなのです。名剣を見れば貯金を叩いてでも剣を買ってしまうのです。なので、キースに嘘をついて貯金してるアーシャはこのことを必ず懺悔することになります。

 「苦労しますね。」

 マリンが同情します。


 キースも守護天使のノーランに罪の内容を聞いています。

 「キース、けっこう沢山あるぞ。メモしないと覚えきれないぞ。」

 「まじかよ。」

 顔なじみの若い神父にメモ用紙と筆記用具を借りに行きます。

 「キースさん、またですか?」

 「いいから早く、書く物を貸してくれよ。」



 告解(こっかい)のため、二人とも別々の懺悔室に入ります。


 神父に尋ねられるままアーシャが守護天使から聞いた罪を素直に告白します。嘘偽りなく罪を告白していることを可視化した守護天使のマリンが証明します。

 「神父様、アーシャは嘘偽りなく罪を告白しております。」

 それを聞いて神父が「神よ、アーシャの罪を許し給え。」

 神父の守護天使がアーシャの魂を霊的なブルートゥースでリンクしてリモートマウントします。そして、神の権能によって懺悔した罪の汚れを洗浄します。



 「今ので罪は消えたのか?」

 アリエルはマリンに尋ねます。そして、マリンに言われる前に、「妾は、授業中は寝てたのじゃ。学校で習いませんでしたか?は無しじゃ。」

 「わかりました。エマも数年後には告解(こっかい)をするでしょう。姫様にも大事なことので説明します。」

 困った姫様だと思いながら説明していきます。


 「魂は人間が罪を犯した証として魂が汚れます。罪人の魂は一目瞭然です。」

 「ほぅ。でも、なぜ一目瞭然にするのじゃ?」

 「罪人の魂を神の眷属にしないためです。」

 「なるほど、罪人の魂かどうか見極めるためじゃな。でも、罪人はなぜ眷属になれんのじゃ?」

 小さな子供のように、何で、何でと聞かれてイラっとしますが、相手が姫様なので仕方なく答えます。

 「罪人が眷属なんて、誰でもなれるような眷属など価値がないのです。」

 「なるほど、眷属になりたいなら、魂くらい、きれいにして来いって訳じゃな。」

 「その通りです。眷属になった人間は、私たちから見ても雲の上の存在になるのです。それ位してもらわなかったら困ります。」

 「なるほど、そうじゃな。」


 「では、告解(こっかい)の手順を説明しますね。」

 「ふむ、頼むのじゃ。」

 「さっき、アーシャが私に聞いたように、魂を見て罪の内容を教えてあげてください。」

 「わかったのじゃ。」

 アリエルはエマの魂を覗きます。

 「エマには、小さな染みがあるのう。これが原罪なのか?」

 「そうです。内容がわかりますか?」

 「ああ、わかるぞ。人類始祖のアデム王とエレミ王妃が神命(しんめい)に背いた抗命罪(こうめいざい)じゃな。」

 「そうです。でも、その原罪は神の告解(こっかい)でも消すことができません。」

 「まあ、それくらいのことは、妾も知っておるのじゃ。」

 「失礼いたしました。続けますね。」

 「エマが神父様の前で罪を告白したら、内容に嘘偽りがないか確認してください。」

 「ああ、さっき、そなたもしておったな。」

 「確認できたら、神父様の守護天使が神の権能によって罪を洗浄します。」

 「ふむ。アーシャの魂をリモートマウントして消しておったぞ。」

 「はい。その通りです。」


 「他に知っておくことは無いのか?」

 「そうですね、親が死ぬと原罪以外に親の罪も子や孫に伝わります。」

 「そうなのか? やっかいじゃな。」

 「そうですね。だから、人間は死ぬ時に、必ず最後の告解(こっかい)をして、原罪以外の罪を洗浄してあの世に旅立ちます。」

 「なら、安心じゃな。」

 「でも事故などで急死した場合は告解(こっかい)できないので子や孫に残ってしまいます。」

 「どうするのじゃ?」

 「親が天国で罪を消すまで待つしかないのです。自分以外の罪は告解(こっかい)では洗浄できませんから。」

 「天国でも告解(こっかい)できるのか?」

 「残念ながら、できません。嘘偽りなく告白していると証明する守護天使がいませんからね。」

 「なら、どうやって消すのじゃ?」

 「自然に消えるのを待ちます。天国は聖気(せいき)に満ちているので時間が掛かりますが罪は消えます。」

 「なら、安心じゃな。子や孫に残した罪も洗浄されるわけじゃな。」

 「そうですが、簡単ではないのです。罪を持った魂は、神への罪悪感で神から離れて行きます。」

 「その気持は解るのじゃ。問題児の妾は母上から逃げ回っておるのじゃ。」

 「神から離れると、それだけ聖気(せいき)が薄くなるので罪が消えるのも遅くなります。」

 「なるほど。罪を消すのは大変じゃ。」

 「人類始祖のアデム王とエレミ王妃は、今でも多くの罪悪感を抱えて、神から遠く離れているそうです。そこは暗くて寒い闇の世界と言われています。そして、人間たちはそこを地獄と呼んでいます。」

 「うーん。考えさせられるのう。何とかして、アデム王とエレミ王妃の原罪が消せんかのう。そうしたら、人類全ての原罪が消えて、二人の罪悪感も多少は晴れるじゃろ。」

 「姫様、さっき自分で言っていたじゃないですか。原罪は神でも消せないって。それに、聖気(せいき)でも消せませんので方法はありません。」

 「そうじゃのう。」

 「私たちは、神の奇跡が起こるのを祈るだけです。」



 アーシャは告解(こっかい)を終えて懺悔室から出るとキースはまだ懺悔しているようです。かなり溜めていたようです。

 キースを待っている間も信徒たちがエマを一目見ようと寄ってきます。

 是非、うちの孫の嫁にと頼んでくる豪商までいます。

 アーシャも唖然としてしまいます。

 「エマはまだ生まれたばかりですから。将来のことはわかりません。」

 そう言って話しを受け流します。


 懺悔室から出てきたキースと逃げるように家に帰ります。

 帰りに、「嫁に欲しい」と言う、さっきの話しをすると「エマはモテるなぁ。」と能天気に笑うキースにアーシャは呆れます。

 「あー、うー」

 エマはアーシャに相手にするなと言っているようでした。



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