2.人類の誕生と原罪
今から137億年前、神はプロジェクトメンバーである天使たちと『宇宙創造プロジェクト』のキックオフミーティングを行います。天使たちと計画を共有した神は、四次元空間に無数の『宇宙の種』を蒔き散らしました。すると、無数の宇宙の種はビッグバンを連発させます。
バーコード2002011713515の宇宙にある惑星の名前を『始祖星』と名付けます。宇宙の種を蒔いてから130億年後に誕生した、生物の生存が可能な最初の惑星です。
神は天使たちと協力して始祖星に生物を創造しました。この星の生物は、生物の始祖として、未来に誕生する同じような惑星に移植する予定です。
神は最後に創造する生物を『人間』と名付けます。天使に命じて、人間が繁殖できるように土地を確保します。神は、その土地を豊かにするために天国から『聖気』を降り注ぎ『楽園』と名付けました。
土地が豊かな楽園には、川や森が生まれ、家畜となる動物が集まり、野菜や果物が生い茂ります。
神は自ら、自分の似姿の人間の男を創造します。この男を『アデム』と名付け人類の王と定めました。繁殖できるように女も創造します。この女を『エレミ』と名付け王妃としました。
神は、永遠の生命を持つ『魂』を創造し人類の始祖となるアデム王とエレミ王妃の肉体にその魂を宿しました。そして、魂は王と王妃の子孫にも与えることにします。魂は人間と共に成長し人格を形成します。そして、人間が死んだ後は天国へ昇り神の眷属へ昇華するのです。
神は二人を見て、非常に満足しました。
天使は神の指示に従って、人類として存続するようにアデム王とエレミ王妃を基本にして各々遺伝子が違う男女100人づつを創造しました。すると、アデム王とエレミ王妃から100個ずつの魂が飛び出して200人の体に吸い込まれます。二人が基本のため、同じ血統の子孫と判断されたからです。
そして、神は生活に必要な4つの物を人間に与えます。
1つ目は『魔法』です。魔法が使えるように、魔法因子を人間のDNAに組込み活性化します。DNAに組込んだのは、子孫によっては不活化となり魔法が使えなかったり、得意、不得意が出て不安定にするためです。それは、1日も早く、科学を発展させ、人類全てが魔法に頼らなくても生活できるようにするためです。
2つ目は『言葉』です。言葉を与えて、人間同士、意志の伝達を行えるようにしました。この言葉は神や天使と同じ『エニス語』です。
3つ目は『生命の木』です。生命の木は楽園の中央に植えました。この木になる『生命の実』は、食べると病気や怪我を治療して寿命を全うできます。病気や怪我で死ぬことはありません。
4つ目は『知恵の木』です。生命の木の横に植えました。この木になる『知恵の実』は、文明の発展に必要な知恵を人間に与えます。そして、神は真剣な表情で全員に向かって言いました。
「楽園にあるものは全て食べても良い。但し、知恵の実だけは神である私が許すまで絶対に食べてはならない。これは神命である。」
「わかりました!」
全員が大きな声で了解したと返事をしました。
知恵の実の内容は、物理法則や化学式、高等数学などで、今の人間が知っても理解できません。将来、人間が成長し自力で理解できると神が判断したときに許可を出すつもりです。これで、宇宙創造プロジェクトは概ね完了しました。あとは、人間が成長し、知恵の実を食べて文明を大きく発展させたらカットオーバを宣言します。
最後の工程である『文明の発展』を『人間の功績』にして、褒美として人間に始祖星を統治させる計画なのです。
天使たちは、ここまで無事に完了したことを非常に喜びました。神も喜びましたが一抹の不安を感じていました。そして、過保護になった神は、天使たちに人間の守護天使になるように命じました。これは、計画にはありません。
守護天使は、人間を見守り応援する役割で、善を勧め悪を退けるように心を導きます。しかし、人間が自由意思を悪に用いても、それを止めることはできません。止めてしまえば、人間の功績にケチがつくからです。
神は、まず200名の天使を選びました。選ばれた天使は人間の守護天使となります。次に、アデム王とエレミ王妃の守護天使を選びました。熾天使ルーファス王と熾天使ミリアム王妃です。神は天使の王と王妃を選びました。それだけ、アデム王とエレミ王妃を大切に思っていました。直ぐに、ミリアム王妃はエレミ王妃の守護天使となりました。
しかし、熾天使ルーファス王は神命に背きました。それどころか、アデム王に向かって、「お前のような馬鹿は、我が世話しても馬鹿のままだ!」と一笑に付し、神を激怒させました。
神は直ぐに、新たに熾天使カミール王子を指名しました。カミール王子は直ぐにアデム王の守護天使となりました。
熾天使ルーファス王は神に続くNo2であり、将来アデム王の魂が神の眷属になれば、アデム王がNo2となり立場を失います。さらに眷属が増えれば、その他大勢の只の天使に格下げです。我慢などできません。ルーファス王は、アデム王とエレミ王妃とその子孫に魂を与えることに抗議します。
しかし、神への抗議など聞き入れられません。ルーファス王は天国から追放され堕天使へと堕とされました。神に裏切られたと思い自暴自棄になったルーファス王も神を見限ります。そして、ルーファス王は後悔するどころか勝ち誇るように自分を大魔王サタンと名乗りました。
その夜、大魔王サタンはアデム王に化けて、エレミ王妃に知恵の実を食べるように勧めます。守護天使の熾天使ミリアム王妃もエレミ王妃の心に必死に叫びます。
「エレミ王妃、食べてはなりません。これは、神命ですよ。」
「なら、僕が先に食べるよ。これで僕は知恵を得て、神のようになれる。」
サタンが化けたアデム王はエレミ王妃の前で食べて見せます。
「すばらしい。これが、神の見る世界か!」
アデム王は絶賛します。
心から神を慕うエレミ王妃は、知恵を得て神のようになりたいという欲望が芽生えます。しかもアデム王が食べて絶賛しているのです。エレミ王妃は誘惑に勝てず知恵の実を食べてしまいます。
しかし、エレミ王妃は頭に浮かび上がる物理法則や数式が何一つ理解できませんでした。
その時、大魔王サタンがエレミ王妃の前に正体を現します。
「馬鹿な女だ。」エレミ王妃をあざ笑います。
怖くなったエレミ王妃は本物のアデム王にすがりつきます。理由を聞いたアデム王はエレミ王妃に同情して、守護天使のカミール王子が止めるのも聞かずに知恵の実を食べてしまいます。
「やはり、馬鹿は馬鹿のままだったな。」
大魔王サタンがアデム王を見下し嘲笑します。
二人が知恵の実を食べることで宇宙創造プロジェクトは失敗します。功績を残せない人間は始祖星の統治もできなくなりました。
大魔王サタンは、神をお前呼ばわりして罵ります。
「お前は全知全能の神ではない。馬鹿で無能な負け犬だ!」
大魔王サタンの大笑いする声が夜空に響きます。
大魔王サタンは、アデム王とエレミ王妃の魂に、神命への抗命罪を罪として刻み堕落させます。そして、勝ち誇った大魔王サタンは神に要求します。
「失敗した証に二人の魂に刻んだ罪を『原罪』とし、聖気や告解での許しでは消すことの出来ない罪として子孫の魂にも遺伝させろ! 馬鹿で無能な神の証を永遠に残すのだ!」
神は腕を組み無表情のまま目を閉じて大魔王サタンの要求を黙って聞いていました。そして、静かに頷いて了承するしかありませんでした。その瞬間、200人の魂にも原罪が刻まれました。
人間の堕落と原罪による縁座で、人間は始祖星を統治できなくなり、魂が天国に昇っても原罪という罪で汚れているため眷属に昇華できなくなりました。