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陰キャな俺が外国人の金髪美少女をスクールカーストから救う話  作者: 新森洋助
第3章 文化祭1日目
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第4話⑤ 抜け駆け未遂?

「……お、おい、ホントどうしたんだよ?」


 どういうわけか、真岡は熱に浮かされたような視線を俺に向けてきている。

 そしてまた。


「別に。ただ、柏崎が……悠斗がめっちゃムカつくってだけ」

「だ、だから、おまえその言い方……」


 真岡は俺の戸惑いを無視し、ずいっと身を寄せてくる。

 人一人分あった空間が、埋まる。

 距離が、近づく。

 真岡はふと苦笑を浮かべて、


「ホント、パッとしない顔。この暗さなら、もうちょっとマシに見えても良さそうなもんなのにな」


 いつもと変わらぬ毒舌。そのはずなのに、その声色にはどこか甘い響きが含まれている気がして、


「う、うるさいな。文句あんならこっち見んな」


 俺は彼女の表情を正視できず、視線をあちこちに彷徨わせる。


「でも、いいよ、それで。そのくらいのほうが落ち着くし――――」


 真岡はそう言って、俺の胸元のネクタイを強く引いた。

 思わずよろめき、彼女の側に倒れそうになって、


「え――――」


 まさに目と鼻の先に、彼女の顔があった。

 その黒く透き通った瞳はトロンとしていて、光の加減か唇にも濃い朱が差し、そこはかとない色気が漂っていた。


 この世に俺たち二人しかいない鏡の世界にでも取り込まれたような、不確かな感覚に囚われる。現実と虚構の境界線が曖昧になる。


「―――――」


 真岡は何と言ったのか。

 そして、彼女はなぜかうっとりと目を閉じて。


 俺はただただ、次第に近づいてくる真岡の美しい顔を、金縛りでもかけられたかのように、夢うつつな感覚でぼうっと眺めていた。


 あれ……ひょっとしてこれって―――――


 い、いや、待ってくれ。俺は、俺には―――――


「きゃああああああああ!!!???」


 瞬間、辺りにつんざくような絶叫が響いた。


「「!!??」」


 我に返った俺たちは、慌てて互いに体を離す。


 と思ったら、いきなり教室の扉が勢いよく開くと、中から飛び出してきた女子生徒が、廊下の隅でしゃがみ込み、ぷるぷると震え出す。さっきのバカップルの片割れだ。


 続けて、男の方も後を追うように教室から出てくると、労わるように女の肩に手を置く。


「お、おい、大丈夫か!? ちゃんとカギ見つけたし、もう怖くないって」

「む、無理無理! マジヤバいって!! な、何なの今の声!?」

「うめき声を録音したスマホがこっそり隠してあったんだよ。落ち着けって。な?」


 繰り返し男が宥めると、


「……! こ、怖かったよおおお!!」


 女が涙声のまま、またしても男の胸に飛び込む。


「えっと……」


 ……何なのこれ。


 ×××


「なんか悪かったな。順路を妨害したみたいになっちゃってさ」


 その男子生徒は苦笑すると、きまりが悪そうに頬を掻いた。茶色のブリーチの入った短めの髪に、流れるようなシャギー(だっけ? わからん)。いかにもオシャレに気を遣ってます、って感じのイケメンだった。


「最初のチェックポイントのカギ探してたら、誰もいないはずのピアノがいきなり鳴り出してさ。びっくりしたこいつが抱きついてきたんだよ。……気まずくさせちゃったよな?」

「あ、いや、それは別に……」


 な、なんだ、そういう事情だったのか。どうやら、俺たちの先走りすぎた勘違いだったらしい。


「だ、だってぇ……ホント怖かったんだもーん。マジヤバかったってアレ」


 そのギャルっぽい女子生徒は、いまだにそのイケメンの腕にぎゅっとしがみていた。

 とは言っても、さっきの鈴城のような金髪に強いウェーブ、みたいなコテコテのギャルスタイルではなく、濃い目の長い茶髪に、アクセサリーは主張しすぎないネックレス、スカートの短さも下品でない程度と、ライトな印象ではあるが。まあ、ヤバいを連発する語彙のなさはいかにもギャルだけど(偏見)。


 でもやっぱリア充ぱねえ。あんな露骨に「あててんのよ」みたいに押しつけている(何をとは言わん)のに、まったく動じていない。


 一方の俺は、気まずすぎて真岡の表情さえ窺うことができない。恥ずかしがっているのか。怒っているのか。それとも無かったことにしようとしているのか。


 ……ってか、だとしたら、この二人よりもよっぽど俺たちのほうが公序良俗に反することを……。

 そもそも、真岡は何であんなこと……。どういうつもりなんだ。あれじゃまるで――――


「というか、よく見たら真岡さんじゃん」

「……へっ?」


 その爽やかイケメンが真岡の名を突然呼んだことで、俺のごちゃごちゃと袋小路に入っていた思考はあっさりと打ち切られた。


「そっちはデート?」

「「……」」


 デート。俺たちには無縁すぎるその単語が瞬時には理解できず、一拍以上の間があって。


「は、はあああ!? 唐突に何言ってんだおまえ!? そ、そんなんじゃないし!?」


 真岡がムキになって否定する。しかし、


「そ、そんなんじゃないし……」


 大事なことなので二回言ったのかもしれないが、二度目のそれは明らかに語尾が弱くなっていた。……それじゃ、説得力がかえって半減しちゃうだろ……。


 彼女は、真っ赤な顔のままチラッと俺に目線を寄越す。

 それが今のこのイケメン野郎のセリフに反応したせいなのか、さっきからずっとこうだったのかはまったくわからなかった。


「へー、ふーん。なるほどねー」


 今度はギャルが生暖かい視線を向けてくる。察しましたと言わんばかりの表情だ。


 うう……めっちゃ気まずい……。


「……ってか、何であたしの名前知ってんだよ。おまえ誰」


 真岡もまた、この微妙な空気から逃れたいのか、話題を変える。まあ、この疑問は俺も同意なんだけど。


「何だよ、この二カ月何回も顔を合わせてたってのに、ひどいな」


 イケメンはわざとらしく溜息をつく。

 そこでようやく、真岡が何かに気づいたように首をひねった。


「あれ? そういや、おまえ確か……」

「……? 知り合いか?」」


 聞くと、真岡は「いや」と否定した。……うん、まあそうだよな。こいつに男友達がいるとは思えない。……ってこれ、自意識過剰かな。くそ、嫌でも意識しちまう。


「……べ、別に知り合いってほどじゃない。ていうか、柏崎も見たことあ……いや、ないか。そういや、おまえとはいつも入れ違いだった気がする」

「はあ?」


 俺は意味わからんとばかりに眉を寄せると、真岡はまるで裁判官が判決文を読み上げるような口調で言った。


「演劇のエリスの相手役だよ。ロミオ役の」


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