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陰キャな俺が外国人の金髪美少女をスクールカーストから救う話  作者: 新森洋助
第3章 文化祭1日目
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第2話⑧ 幼なじみ’S

 背後に氷の精霊でも纏っているかのような桐生の微笑みに、俺は思わずテーブルから一歩後ずさってしまう。「うふふ……」という空笑いがやけに恐ろしい。

 だが、そんな俺をこのイケメン幼なじみは助けるつもりはないようで、「ほう……」と少年漫画の中盤に出てくる強敵みたいなセリフを吐いている。


「俺の知らないうちにおまえの周り、ずいぶん楽しいことになってるみたいじゃねえか」

「それはおまえが面白がってるだけだろうが」

「それでだ悠斗、あのエリスをほったらかしてまで逢瀬を重ねようなんて、一体どんな子なんだよ?」

「話聞けよ。それに、エリスのことは別に放ってるわけじゃ……」

「……なに? おい、それってまさか……」

「エリスとは、また別に明日約束があるそうよ。悠君から誘ったんだって。なのに別の子とも会うとか。ずいぶん大層なご身分よね」


 またもや桐生が余計かつ冷たい一言を付け足してくれた。すると、恭弥は目を丸くし、やがてその端正な顔が台無しになるくらいの気持ち悪い笑みを漏らした。


「へえ……やっとおまえにも青春が到来したってわけか。でも、いきなり同じ文化祭にブッキングさせるなんて勇者だな」

「……そういうんじゃねえって。どっちも」

「で、今日のお相手は誰なんだよ? それと、エリスにはおまえから声かけたってことは、その子には向こうから誘われたんだろ? 悠斗に二人同時に誘うような度胸があるとは思えないしな」

「だから話聞けって。それに何でおまえに答えなきゃ……」


 やたらと察しがいいのも相変わらずで腹が立つ。


「2組の真岡葵って子よ。午後から二人”きり”で回るんだって」


 ……おい。

 あと、“きり”を強調すんな。変に意識しちゃうだろうが。


「それから、このことは私だけじゃなくてエリスも知ってるから、恭弥が想像してるような展開にはならないわよ」


 その桐生の素っ気ない説明を聞いた恭弥は、「えっ、エリス公認ってマジ……?」と驚愕した表情で俺を見る。何だよ公認って。

 そしてそのまま、「あれ? それに真岡って……」とわずかに思案気に眉を寄せると、合点がいったとばかりにポンと手を打った。


「確か、あの背の高い黒髪ロングの子だよな? 何だよ、めちゃくちゃ美人じゃねーか! 悠斗、いつのまにそんな子とお近づきになったんだ?」


 ……美人? いや、確かに真岡は綺麗だけど。


「……単にあいつがブラックキャットの常連だから顔見知りになったってだけだ。てか、恭弥、真岡のことを知ってるのか?」


 そんな話聞いたことないし、接点があるイメージもまったく浮かばない。

 聞くと、恭弥はかぶりを振った。


「いや全然。ただ、バスケ部の俺の友達が『あの子のこと、気になってんだよな』って言ってたのを思い出してさ。綺麗な子だなーって覚えてただけだよ」


 ……なるほど。このあいだ本人が言っていた通り、真岡もわりと男どもに注目されているらしい。まあ無理もないが。


「でも、真岡はぼっ……孤高で周りから浮いてる感じだし、陽キャなおまえの友達が目を付けるなんてちょっと意外だな」


 基本、パリピでウェーイで心も体も軽い女子じゃないと眼中に入らないと思ってたんだが(偏見)。


「そんなんどうでもよくね? 第一、男は相手が好みだったら、カーストとか友達いないとか気にしない奴も多いし」

「……要は顔やスタイルが良ければいいってことね。ホント、男子ってアレよね」


 桐生が呆れたようにため息をついた。っておい、なぜこっちを見るんだ。その話、俺ははっきりと否定しただろうが。

 恭弥はトレイを手に乗せたまま器用に肩をすくめる。


「いや、判断基準が分かりやすいだけまだいいだろ。女子の男への不可解なランク付けやマウント取りのほうが、よっぽど男を傷つけてると思うけどな」

「ああ、それな。ホントそれは肯定せざるを得ない」


 俺も深く頷いた。

 実際、陽キャリア充男子とおとなしく地味な女子のカップルは校内でもちらほら見かけるが、逆は全くといっていいほどお目にかかることはない。つまり、女子は男のルックスや性格だけでなく、その集団におけるポジションや評価も重要視しているということだ。陰キャに優しいギャルとか幻想である。


 ……やっぱり、考えれば考えるほど、こんな俺に彼女の隣に立つ資格があるとは思えない。何より、彼女を傷つけたくない。


 しかし、ダメージを受けたのは俺だけではないようで、


「……そう、ね。確かにあれこれ言う権利はないかも。……特に、私には」


 恭弥の言に、桐生は反論してくることもなく黙り込んでしまった。その細い肩がより小さく見えてしまう。

 桐生の地雷を踏み抜いたことに気づいたらしく、恭弥も「やべ」と慌てた様子を見せる。

 その地雷の主そのものだと思われる俺も何だかいたたまれなくなって、意味もなく頬を掻いてしまった。


 そんな気まずい空気を振り払おうとしたのか、恭弥は忙しなくオホンとわざとらしく咳払いする。

 それから姿勢を正し、丁寧にお辞儀をした。胸に手を当てて腰を折るアレである。


「……さて、遅くなりました。お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様。ご注文は何になさいますか?」


「「…………」」


 そのイケメンではあるが、やけに芝居がかった下手くそな演技に、俺と桐生は互いに顔を見合わせ、小さく吹き出してしまった。

 顔を上げた恭弥も、そんな俺たちを見てニカっと笑う。


 あっという間に、さっきまで場を覆っていた陰鬱な雰囲気に光が差す。


 本当にムカつくが、身も心もイケメンな幼なじみだった。

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