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陰キャな俺が外国人の金髪美少女をスクールカーストから救う話  作者: 新森洋助
第4章 文化祭2日目
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第1話⑤ 約束

 学校へ向けてみんなで歩くその途中(琴音含む)。


「~♪」


 そのなかで、一際テンション高く鼻唄を歌っているのは、我が校有数のイケメン。

 おかしいな……こいつには報われてほしいと思ってないわけではないのに、なんかめちゃくちゃイラっとするぞ。

 恭也の隣を歩く桐生も似たような感想を抱いたようで。


「……ご機嫌ね」

「そりゃそうだよ。やっとつかんだ美夏さんとのデートだぜ? テンション上げるなってほうがムリだ」


 さらに桐生の反対隣にいるエリスが尋ねた。


「恭也くんは美夏に“好き”って言ったの?」

「いや、まだだよ。まあ、俺の気持ちには気づかれてるだろうけど」


 そのストレートな質問にも、恭也は照れることもなくあっさりと肯定した。


「まあ、あれだけ尻尾振ってればね」

「……その言い方よせよ。つーか、なんで最近こっちにいない千秋に言われなきゃならないんだ」

「久しぶりに見てもまるわかりなのよ、恭也は。まあ、隠す気ないのはいいことだと思うけど」


 ……なんだろう。今の桐生の台詞、どことなく棘がある気がするぞ……。

 今度は恭也の逆隣りにいる琴音が続く。


「恭也先輩、今日、美夏姉に告白するの?」

「……ん、そのつもりだよ」

「わあ、ホント!?」


 恭也がまたもや頷くと、エリスがはしゃいだ声を上げた。


 …………。


「いやあホントリア充って恋愛が身近なものだよねえ。僕には遠い世界の話って感じしかしないけど」


 呑気な感想を漏らしたのは、俺と同じくエリスたちの一歩後ろ歩く司だ。


「激しく同意。会話に入れん」


 中学に入った後、こんなふうにだんだんと桐生や恭也と話題が合わなくなっていったことを思い出す。胸がちくりと痛んだ。


「そんなこと言っちゃって。最近は悠斗の周りも楽しいことになってるじゃん」


 司がにひひと意地悪い笑みを浮かべる。


 ……そうは言うけど、俺は。

 俺は露骨に話題を逸らした。


「そういうおまえこそどうなんだよ。オタクネットワークで仲のいい子とかいそうじゃねえか。あとはそれこそ小野寺さんとか」

「うーん……いっしょに活動したりモノを作ったりする知り合いの中に女子もいるけど、そういう雰囲気になりそうな子はいないかな。日和ちゃんなんてもってのほかだよ。将来の人気声優だよ? 僕なんかが相手にされるわけないじゃない」


 いや、おまえよりすごい高校生もそうはいないと思うけどな……。


「でも、女子とも普通に友達になれるんだろ? すぐに彼女も作れそうだけどな」


 俺は肩をすくめる。

 司はオタクではあるが、女子ともナチュラルにコミュニケーションをとれる。すぐに緊張したり会話に困ったりやたら卑屈になったりする誰かさんとは違うのだ。


「……………」


 ん?


「司? どうした?」


「……悠斗こそ、僕なんかとは違うでしょ」

「え?」


 そのどこか暗い色が混じった声色に、俺は一瞬耳を疑う。

 しかし。


「あ、ほら悠斗。エリスさんが話したいみたいだよ? 今日のことじゃないの?」


 司の目線の先である反対側に目を向けると、エリスがいつのまにか俺の隣に並んでいた。


「それじゃ僕は代わりに前に行くねー。二人の邪魔しちゃ悪いし」

「あ、おい。司」


 俺が呼び止めるのにも構わず、司はたっと駆け出してエリスと入れ替わりのポジションに収まる。そしてすぐに恭也をからかい始めた。


「司くん、どうしたの?」

「さあ…‥?」


 わからん。

 ……まあ、今はこれ以上追及することもないか。


「それよりエリス、どうしたんだ?」


 俺が聞くと、エリスはわずかに頬を朱に染めて身体をよじった。


「……うん。悠斗、あのね、今日の劇の後のことなんだけど、わたし、どこ……」


 あ、そうか。しまった。……俺ってホントダメな奴だな。


「エリス、ストップ」

「え?」

「その先は俺から言うよ」


 ちょっとだけ無理やり遮る。意図が伝わったらしく、エリスは優しく「うん」と頷いてくれた。


「劇が終わったら、そのまま控室で待っててくれ。迎えに行くから。ちゃんと」


 もっと声が震えたりするかと身構えたが、思ったよりもスムーズに言葉になってくれた。さっきの恭也の押す姿を見ていたからかもしれない。


「……うんっ!」


 俺の遅すぎる誘い文句にも、エリスは本当に嬉しそうに受け入れてくれた。

 何度となく目を奪われた笑顔。幾度見ても心が跳ねる微笑。

 ……ああ、もう。


「あっ、どうせならジュリエットの衣装のまま回るの、どうかな? 文化祭っぽくない?」

「え、いや、それはちょっと……」


 ただでさえ釣り合わないのに、それじゃ本当に平民と貴族になっちまう。いや、普通に恥ずかしいだけだけど……。


「えー? どうしようかなあ?」


 彼女はいたずらっぽく唇に指を当てる。小悪魔なエリスさんモードだ。くそっ、こういうのも可愛すぎるんだよ……。


「またイチャついてる……。……バカ兄貴」

「あはは、本当に仲良くなったよね」

「くっ……俺も早く美夏さんと……!」

「さすがにちょっと胸やけがしてくるわね……」


「だああ! 揃いも揃って盗み聞ぎすんな!」


 ……あと、これは絶対に本人に言えなかったが、悲恋の物語のヒロインに扮したエリスと回るなんて縁起悪そうで嫌だった。彼女のそんなエンディングは御免こうむりたい。……仮に、エリスと結ばれるのが誰であったとしても。


 …‥しかし。

 先に結論から言っておこう。


 この日、俺とエリスの約束のデートが叶うことはなかった―――――――。


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