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 試合が始まり、モニターに繁華街の景観が映し出された。

 周囲を見回すが、雑居ビルに阻まれ遠くまで見通す事は出来ない。


「とりあえず目に見える範囲に敵影はなし、っと」


 レーベの搭乗席に腰掛ける光一郎は、ふぅと息を吐いて脱力した。

 首をコキコキと慣らし、緊張をほぐしてから意識を集中させる。


「……『土鳴衝(どめいしょう)


 獅子を模したカラクリの足元から、魔術式が展開される。

 土属性の探知魔術、土鳴衝だ。

 地面を介して広域に微弱な魔力を流し込み、返ってくる反応で味方・敵機の位置を把握することが出来る。


「……かぁっ、やっぱ駄目か」


 光一郎はブンブンと頭を振った。

 慣れた術者ならば、1キロ以上先のカラクリの位置を探知できる魔術。

 しかし、未熟な彼では精々100メートルが限度だった。

 その範囲内に味方も敵も反応は無い。


「仕方ねぇ、プランBだな」


 思考を切り替え、光一郎は次なる行動に打って出た。

 レーベを操縦し、背の高い雑居ビルの屋上に飛び乗る。

 高所を陣取る行為は、索敵をし易い反面、敵から発見されるリスクがあった。


(なるべくなら姿を晒したくなかったが、仕方ねぇ。早く味方と合流しねぇと……)


 開けた視界の中で、カラクリの姿をモニターに捉えた。 


「あれは、朋子先輩か!」


 魔導装甲を青に染めたフェイローが、高層ビルに背を預け、警戒しながら佇んでいる。

 そこから通りを1本挟んで、2機の敵機がフェイローの元へ向かっていた。


「やべぇ、急がねぇと!」


 雑居ビルから大きく跳躍し、獣のようにしなやかに着地。

 レーベが無人のストリートを風のように駆け抜ける。

 地響きと衝撃で通り過ぎるビルの窓がビリビリと震えていた。


「先輩! 敵が迫って来てんぞ!」


「えっ、光一郎くん!?」


 通信圏内に入るや、光一郎は朋子に警告を発した。

 モニター脇にワイプで朋子の驚いた顔が表示される。

 直後、アサルトライフルの銃声が連続して鳴り響いた。


「きゃあっ!」


 不意を突かれ、朋子が悲鳴を上げる。


「クソッ!」


 光一郎はレーベの脚部に魔力を集中させ、7階建てのビルの屋上に飛び乗った。

 フェイローに向けてアサルトライフルで射撃するフロッグマンG、そして距離を詰めんと駆けているファイターの姿が見える。

 脚部の魔力を開放し、レーベがファイターに凄まじい勢いで飛び掛かった。


「オラアアアアアッ!」


 前脚に備えられた鋭い爪を構え、振り下ろす。

 その斬撃をファイターは後方に跳んで躱した。


「朋子先輩!」


「うん! まずはファイターを落とす!」


 阿吽の呼吸で意思疎通を完了させる。

 団体戦の基本戦術は、まず突出する前衛の機体を総攻撃で撃破する事である。

 機動力のある前衛を無視して、後方掩護に務める機体を狙うのはリスクが高い。


(こっちは接近戦特化の機体が2機だ。フロッグマンGの魔導レーザーに気をつけながら、ファイターを手早く倒すしかねぇ)


 先んじて、フェイローが動いた。

 蒼に光輝く拳を構え、ファイターに詰め寄る。

 それに合わせ、光一郎もファイターの側面を取るように移動した。

 フロッグマンGが放つアサルトライフルの銃弾が、レーベの魔導装甲に当たり機体をガクガクと揺らす。


「うぜぇんだよ! 出ろ、『土壁』ッ!」


 レーベの左前脚に魔力を集中させ、アスファルトの地面をダンと叩く。

 それと同時に、全長10メートルを超える土の壁が鉄の獣を守るように聳え立った。

 フロッグマンGの射線を塞ぎ、アサルトライフルの銃弾を阻む。


「りゃあああああっ!」


 フェイローが素早くファイターの懐に入り、牽制のジャブを放った。

 その拳をファイターは一歩後ろに下がって躱し、同時にジャイアントソードを切り上げるように振るった。


「そんなのッ!」


 ファイターの右手が、迫りくる斬撃を正確に受け止めた。

 しっかりと刃を掴み、離さない。


「夏姫さんの剣に比べたら、遅すぎるよ!」


 左腕を大きく引き、腰の回転を加えたストレートをファイターの顔面にぶち込む。

 その威力に耐えきれず、フルフェイスのヘルメットのような外見のファイターの頭が千切れて飛んだ。

 高層ビルの窓を突き破り、オフィスのデスクを次々に破砕する。


「止めぇッ!」


 光一郎の駆るレーベが右腕を振るう。

 鋭い獣の爪がファイターの胸部装甲を突き破り、機体を地面に倒した。

 魔導装甲から色が失われていく。


「光一郎くん! 跳んで!」


 土壁の向こうから魔力反応の圧を感知し、朋子が指示を飛ばした。

 両腕に魔力放射装置を仕込んだフロッグマンG。

 その右手から魔力を収束させたレーザーが放たれ、土壁を砕き、貫通する。

 いち早くそれに気づいた二人は、機体を高く跳躍させて回避していた。


「――ッ!」


 フロッグマンGが上空に逃げたフェイローに、光り輝く左手を向けた。

 狙いを定め、魔導レーザーを放射する。


「朋子先輩!」


「ッ、大丈夫!」


 朋子はフェイローの脚部に魔力を集中させた。

 そのエネルギーを開放し、全力で高層ビルを押し出すように蹴る。

 衝撃の反動でフェイローが空を移動した。

 魔導レーザーが先ほどまでフェイローが居た位置を通り過ぎていく。


「へっ、最高!」


 光一郎は口角を上げて野性的な笑みを浮かべた。

 レーベの着地と同時に、フロッグマンGの元へ突っ込んでいく。

 魔力放射装置にエネルギーを充填させるには、ある程度の時間を要する。

 もちろん、光一郎は敵にそんな暇を与えるつもりはなかった。


「オラアアアアアアッ!」


 レーベがフロッグマンGに飛び掛かる。

 フロッグマンGは細長い腕を振り上げ、迫りくる鉄の獣を迎撃した。


「上等だ!」


 白兵戦を仕掛けてきた敵を称賛しながら、光一郎はレーベの左腕を振るう。

 その爪でフロッグマンGの腕を肘から切断した。

 そして、突っ込んだ勢いのまま体当たりを決め、敵機を仰向けに倒す。


「さぁ、喰らえ! レーベ!」


 思うがままに操縦者の魔力を吸い上げる貪欲な獣に、光一郎がゴーサインを出した。

 本能に導かれるように、レーベがその大きな顎を開く。

 生え揃った牙を、フロッグマンの肩口から胸部までに深く食い込ませた。

 装甲を突き破る音が響き渡る。

 

 フロッグマンGは身体をバタつかせた後、だらりと手足を投げ出した。

 魔導炉を停止させ、完全に沈黙する。


「しゃあッ! やったぜ!」


「お見事!」


 相手が動かなくなった事を確認し、光一郎が勝鬨を上げる。

 無事地面に着地していた朋子が、小さな拍手を送った。

 それから、フェイローの首を動かし、周囲を警戒する。


「……他の皆は無事かな」


「とりあえず移動しますか。まだ魔力は大丈夫スよね?」


「うん、まだまだ元気だよ!」


 フェイローの右手で、自身の胸部装甲をカンと叩く。

 光一郎は頷き、他のメンバーとの合流へ動き出した。


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