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012 測定


「それにしても、よく続くもんだなぁ」


 焼き魚を主菜に据えた夕食を食べていると、同卓していた光一郎がそんな事を口にした。

 夏姫は首を傾げる。


「何の事だ? 主語は明確にして話すべきだぞ、光一郎」


「MBF部だよ、MBF部。気まぐれで入ったチャランポランな部活かと思いきや、入部から二週間、毎日下校時刻ぎりぎりまで残ってやがる。部活はそんなに忙しいのかい、お嬢様?」


 魚の白身から骨を取り除きつつ、光一郎が尋ねてくる。

 夏姫は少し考えた後、首を横に振って否定した。


「いや、そこまで忙しいわけでもない。現在、MBF部にはカラクリが一体だけしかないからな。シミュレータで訓練が出来るのも一人だけに限られる。その訓練も、最も実力不足な後輩に一番時間を割いているから、私自身は手持無沙汰な時間が多い」


「へぇ、シミュレータで訓練ねぇ。マージギアの操作ってのも大変なんだろうな」


「……興味があるのか、MBFに?」


 夏姫の言葉に、味噌汁を飲んでいた光一郎の動きが止まった。

 腕の内側で口を覆い、ゴホゴホと咳き込む。


「んな、誰が興味あるなんて言った!? 俺はロボになんか何の興味もねぇっつの!」


「そうか?」


 やけに大仰に否定する光一郎を訝し気に眺めながら、夏姫はよく漬かった蕪のつけ物をカリコリと咀嚼した。

 光一郎はふんと鼻を鳴らし、彼女から目を逸らす。


「……それに、マージギアに乗るには魔導の素質がいるんだろ? 世に居る半数の人間はマージギアを動かす事が出来ず、残った半数もマージギアを満足に歩かせる事すら出来ない例も珍しくないらしいじゃねぇか」


「興味ないと言っていた割に、随分と詳しい」


 夏姫の冷静な突っ込みに、光一郎は言葉に窮する。

 それからハァと溜息を吐き、手をひらひらと振った。


「はいはい、分かったよ、認めるよ。曲がりなりにも、仕える主人が始めたスポーツだ。従者が何も知らないでいるわけにもいかねぇだろ? アンタが部活に行ってる間、俺は図書室に置かれていたMBFの雑誌を読んでたんだ……そしたらまぁ、少しばかり興味がな……」


 照れ臭そうに話す光一郎に対し、夏姫はふむと少し考え込む。


「MBFの公式大会は5対5で行われる。しかし、我が部には現在3名しか部員がいない。参加メンバーが増えるのは歓迎するところだが……」


 夏姫は光一郎をじっと見つめる。

 それから、彼に向けて手のひらを突き出した。


「光一郎、私の手にキミの手を合わせてくれ」


「あぁ? 何だよ、いきなり」


「いいから、ホラ」


 夏姫が促すと、光一郎は不承不承といった感じでその手を合わせた。


「次は、手のひらに魔力を込めて」


「魔力? 俺は魔術だか魔法だかとは全く無縁だったんだ。魔力を込めろと言われても、よく分からねぇよ」


「へその下の辺り、丹田と呼ばれる場所に意識を集中してみろ。そこから力が湧き、全身に行き通っているのが分からないか? そのエネルギーこそが魔力と呼ばれるものだ」


 夏姫に言われ、光一郎は目を閉じて己の体内を巡るエネルギーを感じ取ろうとする。

 だが、さっぱりと要領を得られず、彼は頭を掻いた。


「駄目だ、全然分からん」


「そうか、じゃあこちらから送ってみるか」


 夏姫は己の魔力を手のひらに集中させ、それを光一郎に送り込んだ。

 光一郎がビクリと背筋を正す。


「なんだ、これ……ゾワゾワする!?」


「少し我慢しろ。魔力を生み出す丹田まで魔力を送り込めば、反動でお前の魔力量も調べられる」


「ハッ、うぐぐ……身体の中を直接撫でまわされてる気分だ」


 光一郎は歯を食いしばり、顔を伏せた。

 夏姫の魔力が彼の身体に徐々に流し込まれ、丹田の辺りにまで達する。


 瞬間、光一郎の魔力と夏姫の魔力が反発した。

 触れあっていた夏姫と光一郎の手が、弾き飛ばされるように離れる。


「うおっ!?」


 衝撃で手が肩の上あたりまで弾き飛ばされ、光一郎は驚いたようにその手と夏姫の顔に視線を行き交いさせた。

 夏姫は右手に残った魔力の反動の残滓に、一人笑みを浮かべる。


「これは……逸材かもしれないな」


「あ? 逸材?」


「光一郎、明日はMBF部の活動に同行しろ。きっと、お前はマージギアに乗れるぞ」


「ッ、マジかよ!? 俺乗れるのかよ、マージギアに!」


 夏姫の言葉に、光一郎は目を輝かせて歓喜した。

 握りこぶしを作り、グッと胸の前で振る。


「ああ……魔力の使い方さえマスターすれば、即戦力になれるはずだ」


 夏姫は箸を持ち、食事を再開しながら、フッと口元を綻ばせた。

 カラクリに乗れる事を喜ぶ光一郎の姿が、中等学校を卒業したばかりの頃の自分と重なったからだ。


(カラクリ乗りの素質有りの判定を受けた時、俺もあんな風に浮かれていたな。カラクリと言えば戦場の華だったし、子ども達の間ではカラクリ乗りごっこが流行っていた。カラクリ乗りになる事は、ヒーローになる事と同義だった)


 漬け物を齧り、熱いお茶を飲みこんで、夏姫はふぅと吐息を漏らす。


(実際の戦場は、地獄のような場所だったが……MBFは純粋にカラクリ乗り同士の力量を比べ合うスポーツだ。良い時代になったものだな)


 夏姫はほっこりと目を細めた。


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