『キ』の1。新世界において通知が始まりを意味するなら。
初作品です。宜しくお願いします。
(一回消しました。)
時は2048年。
東京は一夜のうちに起きた“テロ”によって壊滅し、沢山の人が死んだ。
その五カ月後。
人々は新たに近代的な新都市をその場所に作り上げた。その名も凛京。
その都市はAIや、実際の人間をブロックする機能が備わっており、人々は平和な世の中を手に入れたはずだった……。
ポォロン……
スマホの通知音が鳴った。俺は咄嗟にスマホを手に取る。またアイツか……そんな俺の予感は見事に的中した。
《那谷 まり》
『おい!ハマケン何分下で待たせるつもりなの!』 俺は“知らね”と尽かさずスマホに打ち、返信する。どうして俺がお前の都合に合わせなければならないんだ。そーんな事を考えながら、ふとスマホの画面の上を見れば6:48の文字。アイツの言う事が正しいと自分で認めてしまうようだが、いくら遅刻ギリギリ組のこの俺でもさすがにこれはヤバイと思った。
「速報です。先ほど旧目黒駅付近で交通事故が……」ブチ。テレビの電源を切る。こんな事俺にはどうでもいい、使うのは電車だし。
俺は真新しい制服に腕を通し、靴を履く、これも真新しいスニーカー。さらに、お気に入りの真っ黒なヘッドフォンを首に付け、玄関の前にある鏡で自分の真っ黒な髪を整えた。
鞄の中には教科書、ノートなどを詰め込む。それを肩にかける。けっこう重い。
俺は最後家を出る前、玄関の父親の写真が見えた。
「お前は絶対に死なない。この父さんがそう、言っているんだからな……」
急に思い出すあの日の記憶。
「……」
なぁ父さん。何処に行っちまったんだ。
俺はマンションのドアを開ける。眼前に飛び込んでくる34階からの絶景! が、見えたのは昔の話で今はもう巨大なビルが立ち並び、唯一見えるのは遠近法で小さくなっている、凛京スカイタワーぐらいだろうか。
全長725メートルで、東京にあった東京タワーと東京スカイツリーが混ざったような見た目をしているが、正直なところ違和感しかない。しかも、タワーの下が凛京駅という巨大な駅になっている。
まあそんなことは置いといて、とにかく今は学校に向かう事にしよう。
ピッ。カードキーの音が鳴る。
ポチ……「ドアを開きます」無情な機械音声がそう言うと、3つあるうちの右側のドアが開く。俺はその中に入り、『1』のボタンを押す。ドアが閉まる。同時に「ドアが閉まります」と、また同じ音声が聞こえた。
俺はポケットからスマホを取り出し、ヘッドフォンを首に当てる。今日は何を聞こうか。そう考えながら、スマホの画面を一生懸命にスクロールする。途中、 那谷の通知で邪魔が入っだが、未読無視して探す。そして……
「あった!」
俺は思わず声に出してしまった。一瞬、しまった と思った。だが、直ぐにここは自分1人だと気づき、恥ずかしくなる。声に出したことではなく、しまった と思ったことに。まあとにかく、俺はその曲の再生ボタンを押した。
そして、2回目の「ドアが開きます」はもう、俺の耳には入ってこなかった。
ドアを抜けたその先には、那谷が居た。那谷 マリ。ソイツは自慢の長い茶髪を白色のリボンでひとつに結び、エントランス前の長椅子に腰掛けていたが、俺の姿を見るなり、少しウンザリしたように言った。
「ハマケン! 遅いって! 遅刻しちゃうよ」
そして、厄介なことに俺のヘッドフォンを無理矢理外す。クッソ、今丁度サビだったのに……
「って、お前俺のことハマケンって読みやがったな!二度と呼ばないって約束しただろう! 」
俺このあだ名嫌いなんだよ。それに……
「えーそんなことあったかな? まあさっきのメールで普通にハマケンって使って何も返信しなかったから、いいのかなぁと。ほら、何も言わないってことはオッケーって言うって聞かない?」
そう言ってソイツはとぼける。
「おい! それはつい昨日の話だろ!第一に俺の名前はハマケンじゃなくて浜研太だ!」
おい、学年トップクラスの天才のお前が昨日のこと忘れるわけないだろ……マジ俺のこと舐めてるぜコイツ。
「ところでさっきのメールみた?」
「話を変えるな!」
今の俺達を側から見れば、だだの漫才にしか見えないだろう。とてもつまんない漫才。
「……って時間ヤバ! ハマケン走るよ!」
「おい! ちょっと待ってって!」
木が桃色に染まった、春先。二人の学生は走って行く。まるで、花が散っていくように。
「まもなく二番線に快速、サイタマ行きのデンシャが参ります。このデンシャは……」
ヘッドホンから繰り出されるアニソンの片隅に機械音声が流れている。俺の最寄りの奏多は時間の所為なのか、人が少なく感じられた。
ホームに電車が入ってきた。風が巻き起こり、髪が揺れる。ドアが開く。人が出て、俺達が入る。どこでも同じ。その出る人が優先というルールは誰に教えてもらったか知らないのに、何故か身体が覚えている。電車に入ると、俺達は端っこの席に座った。
オフィス街を過ぎ、もうすぐ俺の降りる駅が近づいてきた頃。那谷は、二つほど前の駅で乗ってきた友達に遭遇し、そっちに行ってしまった。そっちに行くなら、最初から俺と一緒に行くなよ…… 俺の耳には相変わらずアニソンが繰り出されていた。やっぱりこの曲のサビはカッコいいなぁ。
ブチッ。突如、まるでへその緒が切れたようにそれは終わった。はあ? と俺は思いヘッドフォンを外す。コイツ壊れやがったな。とりあえず、スマホからヘッドフォンのコードを抜く。その拍子にスマホの画面が暗転する。そこには、沢山の通知。えっ、どんどん通知が更新されていってる。通知は次から次へ流れていき、どんどん溜まってゆく。那谷お前……? 違う。那谷じゃない。だってその通知の
差し出し人は、『凛』? って言う奴だ。いくらなんでもイタズラにも程があるだろう。
どうやら、俺がその通知に唖然としている間に那谷が来たようだ。俺はこの通知を見せようと顔を上げた。
顔を上げると、那谷が居た……。
顔や服が赤く汚れ、刃を向けている。また、目が死んでおり、泣いている。
「ど、どうしたんだ……」
俺は声をかけたが、那谷は無反応だった。身体は動くことを拒否し、目と口だけが泳ぐ。はっ、俺はとんでもないものを見つけてしまった。深く心臓をえぐる光景。それは那谷の友達の無残な姿。まるで那谷の持っているナイフで刺したかのような。まさか、そんなことはない。あり得ない。コイツに限ってそんな、そんな、ゴミみたいなことは絶対に……
「シネ」
那谷は無表情ながら嘲笑うように見え、そんな薄っぺらい俺の願いはだったの二文字で崩れ落ちた。でも、その二文字は俺の願いかもしれないが、なんだか別人の声に聞こえた。那谷ではない別人の声のような……だが、現実は甘く無い。俺は目の前ナイフをもう一度見て、死を覚悟する。父さんの嘘つき。さよなら、この世界。短い人生だったけど……いや、まてよこのまま行けば異世界転生して、美女とイチャイチャハーレムルートじゃね? おい! 俺、最期に何考えてるんだ!
すると、突然。
「黙れ」
俺の前に人影が現れた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
最後に、“更新遅い”です。
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