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見上げる景色

作者: 高森
掲載日:2019/04/19

いつも同じ窓を見上げていた。

そこには、いつも空を見上げている彼女の姿がある。


君はどうして、いつもそこで物憂げな顔をしているの?


そう問いかけたい気持ちは果たされず、いつも家の前を通り過ぎていた。


しかしある日、いつもの窓に彼女の姿はありませんでした。

どうしたのだろう。今日はたまたま居ないのかな。

男はそう思いましたが、確かめる術などありません。


そして翌日も、その翌日も彼女を見ることはありませんでした。


そして数ヶ月後。


ほとんど見上げなくなってしまっていた彼女の窓辺を、久しぶりに見上げました。


やはりそこに彼女は居ません。

男はモヤっとした気持ちを抱いたまま通りすぎようとしました。


あなたが見たいものは何?


けれど声をかけられた為、足を止めて振り返ります。

そこには、いつも窓の向こうにいた彼女が立っていました。

男は咄嗟のことで戸惑いましたが、彼女の質問に答えます。


君の心……かな。


男も問いかけます。


君はいつも何を見ていたの?


彼女は少しだけ顔を上げ、いつも見ていた表情で空を見つめます。


もうこの空を見られなくなるの。都会の大きな病院に移るから、いつでも思い出せるようにしたかったの。


その言葉に、男は彼女の身に起こっている事態を察します。

そして男は言葉を選び、こう言いました。


次は僕と一緒に見よう。


その言葉に彼女は返事をしません。

その代わり、こくん、と小さく頷きました。


それからまた数ヶ月、彼女は姿を消しました。

そしていくつもの季節が過ぎ、雪が溶けて暖かくなってきた頃……。


彼女は再び窓辺に現れました。


男は彼女を見上げます。


それに気付いた彼女は窓を開きました。


このままの空も良いけれど、君が隣にいるともっと良くなると思うな。


2人は同じ場所から空を見上げ、同じ空と同じ時間をいつまでも感じていました。

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