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俺は幼馴染みエンドしか認めない

 それからの展開は実にスピーディーだった。騒ぎを聞き駆け付けた数名の教師により、エレナと先輩は引き剥がされそのままどこかへ連行されてしまった。彼女達に待ち受けているのはキツイ詰問とお説教だろう。可哀想に、と心から同情していた俺もなぜか担任の加藤先生に肩を叩かれた。どうやら重要参考人と判断されたらしい。無実を訴える間もなく連行された先は、生徒指導室だった。まさか善良な生徒代表の俺が足を踏み入れる日が来るなんて! 人生とはわからないものだなぁ。


「あの2人、なんで喧嘩なんてしたんだ?」


  机を挟んで真正面に座っている加藤先生がそう尋ねる。ああ、刑事ドラマの取り調べシーンみたいだな。黙秘を貫いたらカツ丼とか出てくるかもしれない。


「さっぱり分かりません」


 別にカツ丼も欲しくなかったので、正直にそう答えた。加藤先生は大きなため息を吐く。ため息を吐きたいのは俺のほうだ。みなみに告白するチャンスをみすみす逃してしまったし、この後どうすりゃいいんだよ。


「あの場にいた連中はお前を巡って2人は争っていた、と言っていたが」


 第三者にはそう見えていたのか。


「うーん。それはないと思いますよ」


「じゃあなんであんな大喧嘩に発展したんだ?」


「さあ。女の子の気持ちはよく分かりません」


「……質問を変えよう。お前はあの2人のどちらと付き合うつもりだ?」


 加藤先生の声が急に低くなった。


「どちらとも付き合うつもりはありませんけど」


「二股するつもりか!そんなんだからあの2人は喧嘩になったんだぞ!」


 なんか滅茶苦茶怒られたんですけど! 何、この理不尽さは。告白できなかったストレスも相まって、すごくイライラしてきたぞ。駄目だ。ここでキレたら話がややこしくなるぞ。落ち着いて身の潔白を晴らすべきだ。早く帰りたいし。


「あの、何か大きな誤解をしているみたいですね。あの2人と俺は先生が想像しているような関係では……」


「言い訳するな!」


 加藤先生が机を叩く。顔には青筋が立っており、声もドスがきいている。うーん、これは完全に誤解されているようだな。


「い、言い訳じゃないですよ」


「女の子から言い寄られて、浮つく気持ちはよく分かる。だがな、2人は感情もある女の子なんだ。ちゃんと向き合うべきだ」


「そ、そんなこと分かっています。だから俺はーー」


「それならきちんとどちらかを選ばないか!」


 ーープツン!


 その瞬間、頭の中で何かが切れる音がした。


「……俺は幼馴染みエンドしか認めない。それ以外のルートなんて糞くらえだ」


「は、今なんて言った?」


「いいか、加藤よく聞けよ!」


「ああ? 教師を呼びつけにするとはいい度胸してだな」


 加藤が怖い顔で睨みつける。しかし俺は怯まない。俺の幼馴染みへの愛はもはや抑え込むことができないくらい膨らんでいてーー。


  そしてついに爆発した。


「俺はみなみが大好きだーー!」


  学校中に聞こえるくらいの大絶叫。でも聞き届ける幼馴染みは存在せず、虚しく反響するばかりで。しかし俺は妙にスッキリした気分だった。ああ、ようやく言うことができた。やっぱり幼馴染みは最高だぜ!


「……お前の気持ちはよく分かった。誤解してすまなかった。他の先生には私から上手く言っていこう」


 加藤の言葉で、我にかえる。あっ、またやっちまった。


「頑張れよ!先生応援しているからな」


 超いい笑顔で俺の肩を叩く。ああああ、そのノリ超絶ウゼーー!


「よく決意したな!でもこれからが大変だぞ」


「ソウデスネ」


 超棒読み。もう早く終わってくれ。


「遠距離恋愛になっちゃうもんな」


「ハイ」


「でも愛に国境はないぞ!アイツの夢を応援してやれよ」


「ハイ」


 なにこれ新手の拷問?言われなくてもそんなことは分かっているっーの!

 ……って、ん?


「あの、加藤先生。さっきから何の話をしているんですか」


「だから神岸が留学するから寂しくなるなって……」


「留学ってどういうことなんですか?」


「まさか、聞いてなかったのか? お前たちは幼馴染みだからてっきり……」


 みなみが留学……だと……?


 視界がぐにゃりと歪むーー。


「この前のテニスの大会で、かなりいい成績だろ。それでオーストラリアに留学が決まったんだ」


 加藤の声が遠くから聞こえる。


「クラスのみんなには秘密にして欲しいと言われたから黙っていたんだが……。今日の3時の飛行機で日本から立つらしい」


 アア、モウナニモキキタクナイ!


「オイ、結城! どこへ行くんだ!」


 俺はその場を逃げ出した。



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