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ラスボスもとい幼馴染み

「ようやく辿り着いたぜ……」


 まばゆい朝の光を浴びながら、最終決戦前の主人公のようなカッコイイ台詞を呟く。しかし目の前にあるのは魔王城ではなく、なんの変哲もない一軒家だ。しかしこうして立っているだけで、心臓は今にも爆発しそうなくらいドキドキしている。ーーそう、ここはラスボスもとい幼馴染みの家だ。ちなみに只今の時刻は朝の7時、みなみが確実に家にいる時刻でもある。


 条件は揃った。今からみなみへ告白してやるぜ!


 ふふ、どうせヘタレな俺のことだから告白もズルズル引き伸ばし展開だと思っただろ? 残念でした!俺はやるときはやる男なんだよ。ちゃっちゃと告白を済ませて、そこらへんの量産型ラブコメ主人公との格の違いを見せてやんよ!

 

 深呼吸をし、インターフォンに手を伸ばす。しかしあと数センチというところで手が止まってしまった。指先もプルプルと震え、照準が合わない。

 ええい、怖気付くな!ここに辿り着くまでの厳しい道のりを思い出せ!2人の美少女とたった1人の親友が犠牲になっただろ!そう頭では理解しているつもりだが、手は緊張で動かない。うう、このままではマズイ……。


 血迷った俺は、そのままインターフォンに頭突きを喰らわせた。痛え! 頭頂部に鈍い痛みが走る。が、ボタンを押することには成功した。チャイムの音が辺りに響く。それから数秒遅れて、ノイズ混じりの声が流れてきた。


『……はい。どなたですか?』


 俺の心臓が大きく脈打った。間違いない、これはみなみの声だ。お、落ち着け、いつも通りに振る舞うんだ。


「あ、俺だよ。一緒に学校行こうぜ」


『あら、ゆうちゃん!すぐ開けるね』


  ふう、第一関門突破。あと数秒でみなみが出てくるだろう。

 一緒に登校しなくなってからもう一週間以上経つのか。教室では顔を合わせていたが、やはりそれだけでは全然足りない。幼馴染みがいないだけで、俺の日常は灰色だった。でもそれも今日で終わりだ。これからは幼馴染みーーいや、恋人同士として通学路を歩いて行きたい。

 ぼんやりそんなことを考えていると、玄関の鍵が開く音がした。よし、今だ!


「みなみ、お前のことがし、しゅ、好きだ。付き合ってくれ!」


 噛んじゃったけど、ついに言えたぞ!勝った!第三部完!


「あらあら、嬉しいわ。でもごめんなさい」


 ああああ!3秒で断られちゃったよ!せめてもっと悩んでから断ってくれよ!


「だって、私みなみじゃないもの」


「えっ?」


 俺は改めてみなみを見る。あれ、ちょっと違う?少し大人っぽい……と、いうことは……。


「お、おばさんでしたか……」


「正解!嬉しいわ、私そんなに若く見えるかしら」


 そこに立っていたのはみなみのお母さんだった。見た目も声もそっくりだから、つい間違えてしまった。それにしても、相も変わらずおばさんは若々しい。アニメとかでよく見かける異様に若い母親キャラみたいだ。


 って、俺は馬鹿か!告白を誤爆するラブコメ主人公は数多くいるが、ヒロインの母親にする奴は後にも先にもきっと俺だけだろう。羞恥心で顔がカーッと熱くなる。


「い、今のことは忘れて下さい」


「大丈夫。みなみには内緒にしておくから」


「うう。いつもならみなみが真っ先に出てくるはずなのに」


「本当にごめんなさい。実はみなみはもう学校へ行っちゃったの。ちょっと職員室に用事があってね」


「えっ!」


 まだ7時だぞ!なんでこんなに早い時間に登校しているんだ? そんな疑問が頭をかすめるが、今は考えている時間ももったいない。


「わかりました。それなら後を追いかけます。ありがとうございました」


「あっ、ゆうちゃん待って!みなみはーー」


 おばさんに呼び止められたが、構わず走り出す。まだ今日は始まったばかり、告白するチャンスはそこらへんにゴロゴロ転がっているはずだーー。


  そんな甘い考えだった自分を殴ってやりたい。その時の俺はすっかり忘れていたのだ。そう『お邪魔キャラ』の存在に。



 教室に着いた俺は、すぐにみなみの姿を探した。時間が早いせいか登校している生徒はまばらですぐにその姿を見つけることができた。ターゲットは自分の席で誰かと談笑している。よし、まだホームルームまではだいぶ時間があるぞ。どこか静かな場所に連れ出して告白しよう。そう思った俺は早速みなみに話しかける。


「み、みなみ!」


「あっ、ゆうちゃん。おはよう。今日は早いね、どうしたの?」


「その、実はお前にーー」


 話したいことがあるんだ、そう続くはずの言葉は出てこなかった。俺の口は氷付けにされ、動かない。


「エ、エレナ……」


「……」


 近づくまで気が付かなかったが、みなみの話相手はエレナだった。青い2つの瞳が静かに俺を睨みつける。その温度はあらゆる原子の運動が停止するといわれている−243℃に匹敵するだろう。


「どうしたの?ゆうちゃん?」


「な、なんでもない……」


  俺はすごすごとその場を後にする。罰ゲームだったとはいえ、やはりエレナとは気まずい。そんな彼女からみなみを強奪し、あまつさえ告白するなんてできるわけないーー。チキンな俺は自分の席に着くと、2人の様子をこっそり覗き見する。早くみなみから離れてくれ!そんな願いは虚しく、結果ホームルームが開始するギリギリまで2人は一緒だった。


 

 その後も俺は苦戦を強いられた。今日は終業式だから、普段よりチャンスが多いはずだった。しかしその機会はことごとくエレナに叩き潰されていく。体育館への移動はもちろん、式の最中もエレナはみなみの横をキープ。休み時間は仲良く連れションかよ!


 そんな2人を俺は恨めしげに見つめることしかできない。気がつくと、帰りのホームルーム時間だった。担任の糞長くてつまらない話を聞きながら、俺はひとり頭を抱える。ああ、こんな『お邪魔キャラ』がいるなんて聞いてないよ! まさかエレナの奴、わざと?


 うーん、それはないよな。だって罰ゲームで俺に告白してきただけだし。こんなことしてもエレナになんのメリットもやいよな。やはり、俺の考え過ぎか……。被害妄想で相手を逆恨みするのはよくないよな。俺が勇気を持って行動すればいいだけだし。


 よし、次のチャンスは絶対に逃さないぞ!

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