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やっぱり幼馴染みは最高だぜ!

「えっ、優太君窓から落ちちゃったんですか? 」


「はい、右足骨折しちゃって。全治三ヶ月ですよ。ウチの両親だけでなく、みなみの両親にまで滅茶苦茶怒られて。おかげで、窓を使ったお互いの部屋の行き来は全面禁止になりました」


「あらあら、それは当然ですね。お二人ともやんちゃ過ぎますわ」


「ははは、あの時はまだ若かったので」


 あれから俺たちは幼馴染みエピソードで盛り上がっていた。最初はこんなこと話していいのかな、と戸惑った俺だったが、先輩があまりにもせがむので色々と話しているうちについノリノリに。話しても話しても、話題が尽きることはない。俺は改めて、みなみとの絆の強さを再認識していた。うん、やっぱり幼馴染みは最高だぜ!


 ーーと、俺の頬にぽっんと何か冷たいものが当たった。なんだ? と思った次の瞬間には、ザーッと大量の雨粒が降ってきた。


「うわっ! 降って来やがった。先輩傘持っていますか?」


「すいません。持っていないです」


 マジかよ。その何でも出てくるボストンバックに、よりにもよって傘が入ってないなんて。


「じゃあ、早くこの場を片付けて雨宿りしましょう」


「は、はい」


 俺たちは慌ててレジャーシートを片付けると、雨を防げる場所を探して走り出した。ずぶ濡れになりながらもなんとか公衆トイレに駆け込む。雨足はますます強くなり、止む気配は微塵もない。


「はぁ、本格的に降り出しましたね」


「困りました。もう服はビショビショだし、なんだかすごく寒いです……くしゅん!」


「先輩大丈夫で……ッツ! 」


 先輩の姿を見て、俺は言葉を失う。

 長い髪は濡れてますます艶やかになり、髪の先からポタリポタリと垂れた水滴がコンクリートの床を濡らしている。まあ、そこまではいい。問題はここからだ。雨でビショビショになった白いブラウスは、肌にくっ付き透け透けに……。つまり先輩の、ブ、ブラジャーがくっきり丸見えなんだよ!しかも先輩のブラジャーの色は黒……だと……? せ、清純な先輩が黒のブラジャー? な、なんてけしからん。イメージ的には、白か淡いピンクが妥当だろ! まあ、黒もエロくて悪くはないけどさ!


「優太君、どうしました?」


「い、い、いえ、な、なん、でもあ、ありません」


 ドキマギしてもいいじゃないか

 童貞だもの

 ゆうた


 うう、なんだか急にみつをみたいなポエムが思い浮かんでしまった。混乱している証拠だな。これ以上先輩を見ているのは危険極まりない。俺は雨足を確かめるフリをして視線を外に移した。


「あ、雨は止みそうにありませんね」


「うーん、そうですか……。ここは寒いし狭いですから、別の場所で雨宿りした方が良さそうですね」


「困ったな。公園の外は住宅街だからろくな店もないですよ」


 先輩はしばらく考えると、パンと手を叩いた。


「あっ、そうですわ! さっき来る途中に、雨宿りできそうな場所がありました」


「マジですか?」


 ジモティーだけど、そんな場所知らないぞ。新しくコンビニでもできたのかな? でもまあ、ここに先輩と2人きりでいるよりはマシだろう。先輩の蒸せ返る程の色香に耐えらる自信もないし……。


「決まりですね。私が案内するので、付いて来て下さい」


「ハイ!」


 俺たち再び、雨の中走り出した。




 そして、たどり着いた場所はーー。


「じゃあ、入りましょう」


「イヤイヤ、ここはマズイですって。絶対ダメですよ! 」


「えっ、何でですか?」


「だ、だってこの場所は……」


 先輩はキョトンとした顔でこちらを見ている。その瞳は一切の曇りがなくまるで綺麗なガラス玉みたいで、俺はその残酷な事実を伝えられず口を噤んだ。そう俺たちが来たのは、一見すると西洋のお城。しかしその実態はーー。


「だってホテルですよ、ホテル。シャワーもあるし、絶好の雨宿りスポットじゃないですか。絵本に出てくるお城みたいで、可愛いですし。ほら、入りましょうよ」


「うわあ、ちょっ、待って下さい! とにかくここは駄目です! ここは先輩が思っているホテルとは違いますからァ」


 俺は入り口に入ろうとする先輩を慌てて制止する。浮世に疎いお嬢様の先輩が、ここがどういう場所が知らないのは当然だ。ここはホテルはホテルでも、いわゆる『ラブホテル』ってヤツなんだからーー。


「私が思っているホテルではない、それはどういう意味ですか? 普通ホテルといえば、宿泊施設ですよね。もしかして、宿泊以外の目的があるんですか?」


「い、いや、その、そうですよね。ホテルは一般的には宿泊が目的ですよね。他にすることなんて何もありません! でも、とにかくここは駄目なんです」


「……なんで優太君が嫌がるのか皆目見当もつきませんが……。も、もう私は限界なんです。さ、寒くて、このままじゃ……」


 先輩はブルブルと震えている。よく見ると白い顔がますます白く、いや青白くなってきている。俺もかなり体が冷えてきた。このままだと2人とも確実に風邪を引いてしまう。早く温かい場所に行かないと。事は一刻を争うぞ。うーん。

 そうだ! いくらここがラブホといえど、中で何もしなければセーフなんじゃないか? なんだ、俺が紳士でいればいいだけか。


「わ、分かりました。入りましょう」


「よかったですわ。優太君、ありがとうございます」


 俺たちはこうして、ラブホに足を踏み入れたのだった。

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