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俺の幼馴染み愛はその程度のモノなのか

個別ルート開始です。まずはツンデレクラスメイト、エレナルートです

  はい、リョウに幼馴染エンド宣言をしてから早くも2日が経ちました。

  ちゃんと二人に断ることができたかって?もちろん……、なんにも行動できていませんでしたああぁぁ!


  昨日は本当にびっくりする程何もできなかったよ!時間だけが無情に過ぎていき、今日も気が付けばもう帰りのホームルームの時間だ。今ほど担任の長話がありがたく感じたことはない。


 山田さんとは一言も口をきいていないし、貴音先輩に至っては委員会がないことを言い訳にして一度も顔を合わせていない。


 それに-ー。俺は担任の加藤から視線を移動させる。廊下側前から2番め目の席、見慣れた幼馴染の背中。あれからみなみとはなんとかく気まずくて距離をとっている。別々に登校するようになったのを皮切りに、互いの家の行き来もなくなりクラスでも挨拶以外の会話はしていない。

 まだあれから2日しか経っていないのに、すごく寂しくて。このまま長期戦になったら、幼馴染欠乏症で全身から血液が流れ出て死んでしまうかもしれない。それくらいマジで辛い。


「はぁああああああああああああ……」


  俺は本日33回目のため息を吐いた。今まで優柔不断で行動にしないラブコメ主人公を叩いていた俺だけど、いざ同じ立場になったらこのザマか。今なら糞主人公共の気持ちがよく分かる。掲示板に悪口書き込んでマジごめん。

  ヤバイ、ヤバイ。このままでは本当にヤバイ。こういうことって夏休みの宿題と一緒だ。時間が経てば経つほど厳しくなるにきまっている。今日こそは行動しなくては。まずは……山田さんからだ。俺はそっと背後を振り返る。山田さんは配られたプリントに視線を落としていた。相変わらずその表情は氷付いていて、なにを考えているか分からない。もしかして俺の返事、待っているのかな?


「コラ、結城!よそ見するな」


「す、すいません」


 担任の加藤に注意され、慌てて前を向く。うーん、山田さんの顔をみたらなんだか急に怖くなってきた。だって告白を断るって、ある意味告白するよりハードルが高いんだよな。俺はリョウのアドバイスを思い出す。



 ◇ ◇ ◇


「まず第一のポイントとして、相手とはきちん対面すること」


「うっ、メールとかじゃ駄目かな?」


「言い辛いことはわかるよ。でも2人は優太に直接告白したんだよね?それなのにメールで返事って失礼じゃない?」


「そういわれてみえばそうだよな。頑張ってみるよ。あと断る理由はなんて言えばいいかな?」


「本当の理由を言うべきだと思う。『俺はみなみのことが好きなので付き合えません』ってきっぱり断る」


「ええ〜、それ相当恥ずかしいぞ!『自分にはもったい、もっと相応しい人がいる』みたいな断り方は駄目かな?こっちの方法のほうが傷付けないんじゃないのか。事実2人は俺と不釣合いな位の美少女だし」


「……はぁ、それむしろ一番駄目な方法だよ」


「えぇ!なんで」


「『まだ付き合うチャンスがあるかも』と思われちゃうよ。優太が2人をキープにするつもりなら別にいいけど」


「そんなことはない!俺はみなみひと筋だ! 」


「うん、その気持ちを2人に伝えるべきだよ。確かに相手は傷付くかもしれないけど、それは一時的なものだから。さっぱり断られたら諦めが付いて、次の恋に進むことができる。ごまかしたり、曖昧にするのが一番駄目だからね」


 ◇ ◇ ◇


  ーー以上、回想終わり!


  流石イケメンだ。非モテの俺ですら思わず納得してしまった。おそらくこの方法でなら相手も諦めてくれるだろう。


  だが、しかし。


  それは裏を返せば、他人に自分の好きな人を教えなくてはならないということで。


  まだ本人にも好きだと伝えてもいないのになぁ。それにやっぱり相手には残酷だ。きっとすごく傷付くだろう。ギャルゲーでもヒロインを振る時、結構心が痛むのに。それをリアルでやるなんて。もしこれがゲームだったら難易度はベリーハードだよ!


「それじゃあ、今日はこれで終わり!気をつけて帰るように」


「起立、礼」


  えっ、もう終わり?悩んでる間にホームルームは終了してしまった。静かだった教室がざわざわと騒がしくなる。ど、どうしよう。早くしないと山田さんが帰ってしまうぞ。えーーい、当たって砕けろだ!

俺は意を決して、山田さんに話しかける。


「あ、あの山田さん」


「チッ!」


 オウ、まさかの開幕舌打ちですよ。表情もまるで氷みたいに冷たいし。これが好きな相手に対する態度なのか?もしかしてあの時の告白は夢だったんじゃ……。そんな疑問が俺の頭をよぎった。


「そ、その、あの時の返事をしたいんだ。この後時間あるか」


「……!!」


 山田さんが青い瞳を大きく見開いた。明らかに動揺しているぞ。よかった、どうやら俺の白昼夢や妄想の類ではなかったようだな。


「……ついてきて」


「えっ?ちょ、待てよ」


 山田さんは椅子から立ち上がると、そのまま教室から出て行ってしまった。ちなみに俺のキムタクみたいな反応は完全無視である。

 俺は仕方なく彼女の後を追いかけることにした。





 それから駅まで徒歩10分、さらに電車に揺られて10分。着いた場所は都内でも有数の繁華街、池袋駅。十条駅は埼京線が通っているので交通の便がいいのだ。これ豆知識な。

 駅の東口から出て、サンシャイン通りに入る。平日だというのに人がとても多く、歩くのだけで一苦労だ。

 ……ちなみにここまでの道中山田さんは無言である。俺も話しかけるタイミングを見失い、ただ後ろを付いて歩くだけの金魚のフン状態。今も彼女の小さな背中を見つめているだけ。

 ああ、ここに来て怖気付くなんて。俺の幼馴染み愛はその程度のモノなのか? いや違うだろ! 勇気を出すんだ、俺!


「あ、あの山田さん。俺の話を聞いてくれ 」


 ようやく言葉を絞り出す。すると山田さんはようやく足を止めた。


「……映画」


「えっ?」


 俺達は映画館の前にいた。もしかしてここが目的地なのか? でもなんで映画館。

 さらに山田さんは二枚の紙切れを目の前に突き付けてきた。そこには海老の覆面を被った筋肉隆々の男が描かれていた。これは確か『ブラックタイガーマン』とかいうアメコミヒーロだ。『全米大ヒット!』の謳い文句のCMが馬鹿みたいに流れていたから、名前だけは知っている。


「チケットがたまたま2枚手に入ったのよ」


「うん、それはよかったな。それで?」


「だから、その、わ、私が言いたいのは……」


「何?」


 山田さんは急に口ごもり、顔が真っ赤に染まる。

 ーーと、いきなり俺に強烈な腹パンをお見舞いしてきた。コイツ、拳でも世界を狙っているのか!


「ゲフッ!いきなりなんだよ」


「いいから、一緒に来なさい!」


「えぇーっ? 何でだよ」


「口答えしない! 」


 俺は山田さんに腕を掴まれ、ズルズルと映画館の中へ引きずり込まれた。



 館内の座席はほぼ満席だった。流石、全米大ヒット作品だな。


 ……って、観客の殆どがカップルじゃねーか!今までアニメ映画ばかり見ていたせいで忘れていたが、映画はデートの定番コース。リア充共が群れを成してもおかしくない。や、やばい、恐怖で手が震えてきた。


「タッくん、ポップコーン食べるでしょ。はい、あーん」


「カオタンありがとう。あーん」


 ああああああ! バカップルが人目をはばからずいちゃついてるぅーー! ハアハア、む、胸が苦しい。俺にはあまりにも残酷な場面だ。せめてコイツらと座席が離れていますように、俺は神に願う。


「座席はここね。ホラ座りなさいよ」


 ああああああ!俺の席、バカップルの隣かよ!神は死んだ!神は死んだ!

 もちろん山田さんの席は俺の隣なわけで。こうして左隣バカップル、右隣山田さんという悪夢のような席順が完成した。朝倉と浅井に挟み撃ちにされた信長もこんな気分だったんだろうな。


「なんだか調子が悪そうね」


「だ、大丈夫だよ。それよりも聞きたいことがあるんだけど」


「何よ」


「なんで俺を映画館に連れてきたんだ?」


「……好きな人と一緒に映画を見てみたかったのよ」


 その時、開幕を告げるブザーが響き館内が暗黒に塗り変えられる。おかげで俺は山田さんの表情を拝めなかった。今までの人生でこの時ほど、自分の間の悪さを悔いたことはない。きっと最高に可愛いかっただろうに!


 ーーこうして映画は始まった。


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