7話 突破された門
最初に目に入ったのは女王の寝室の入り口で倒れていた無数の男たちだった。
鎧は一部が熱で溶けており、それが鎧というのは後から気がついた。
部屋へ近づくに連れていっそう金属が焦げたような匂いがしてくる。
「なにが…」
鼻を裾で隠しながら中へ入るとそこには女王が床に座り込んでいた。
助けに行こうとしたが次第に足は止まり、腕は腰にある剣へとのびていた。
それは、
「何者だ!」
女王は一人ではなく、その部屋には二人いたのだ。
窓際に立った青年は苦笑いをして答えた。
「次から次へと「何者だ!」なんて言われたら困るのだが?」
「もう一度問う。貴様は何者だ」
「…」
「待ちなさい」
二人の間に入って来たのは女王本人だった。
抜けた腰を立ち上がらせ、青年を指差した。
「この方は私を助けて下さいました。命の恩人です」
「ですが!」
剣を構えたまま視線は入り口にある男たちへ。
「こんな奴がこの訓練された兵士達を全員倒したとは考えられません」
「口の聞き方に気をつけなさいリザーブ一等兵」
「…っく…他の兵士を呼んで来ます」
剣をしまい、青年を睨み付けて部屋を去っていく。
完全に姿が見えなくなった所で大きくため息をついた女王は青年に向けて歩み寄り、手を握った。
「あなたは命の恩人です。なにか出来ることがあればなんでもしますので」
「いや、そんなことしなくていいですよ、冒険者として人助けは大事な事ですから」
握られた手をほどいて窓口に立って外を見る。
高さは10メートル前後といった所だろう。
「それでは私はこれで」
女王は何か言おうとしていたが飛び降りた瞬間で声が聞こえなかった。
下から来る凄まじい風速と体の中が浮いたような感覚を味わうこと数秒。
地面に着地した。
地面には着地した時に付いた傷などは無かった。
それを目の前で見ていた門番は目を丸くしながら青年を凝視していた。
「なにか?」
「いえ…」
門番は門に手を触れると一瞬だけ光が刺して扉は開いた。
そんな光景を初めて見た魔王は少し驚く。
人間も進歩してるな。
門を出た瞬間、目の前から何かが飛んで来ていた。
「なんだあれは…」
門番がその言葉に気がついて青年が見ている方向を見る。
「何も見えませんが?」
まあ見えなくてもしょうがない。
ここから約5キロ以上離れているためだ。
今の速さからいくとこの門まで約1分といった所だ。
「この門を早く閉めろ」
「え?」
「いいから早くしろ死にたいのか」
「わ、わかりました」
ぎこちないしゃべり方で門の内側まで走っていった門番は門に手をあてて、
よし、もう大丈夫だろう。
あとどれくらいで到着かーーーーーーーー
振り向いた瞬間、凄まじい爆音と風圧で門の外部と内部が一気に吹き飛んでいった。
「…うそだろ」
目を開けた時、そこにはさっきまでの景色は無かった。
回りはすべて木片と石片で一杯に広がっている。
さっきの門番は体の一部が吹き飛び、見るだけでも無惨になっている。
5キロを以上ある距離を一瞬にしてこちらに到達させる魔法などない。
また、そんな核兵器などあり得るはずもない。
どうやってここまでやってきたんだ。
後ろから人の歩いてくる音がして振り向くと、これまでの答えがそこにはあった。
「死神…」
女王が言いはなったその人物と今ここにいる人物は一致していた。
真っ黒のローブを上から着て、顔には何かの皮で出来たマスク。
背中には大きな鎌が背負われている。
その人物はこちらに気がつき、足を止める。
「イマノデシナナイナンテジョウブダナ」
その言葉はなにかで阻害されているが、近くに来て感じたのは間違いなく殺意だ。
鎌にてをかけようとして、手を止める。
そしてじっとこちらを見たあと、首を傾げた。
「オマエツヨイダロ?」
「…」
「シカトハヨクナイナ」
傾げた首を戻して、止めていた鎌を手にとった。
そして、手を前につきだした。
「エラベ」
そういって二つの指を立てて一つの指を折る。
「ヒトツ…コノママコノバヲサル。フタツメ…」
袋をとっさに放り投げ剣を構える。
「ココデシヌカ」
*
今から少し前のことーーー
「なんですの!」
いきなりの爆音に慌てて外を見る女王。
そして、すぐさま帰って来たリザーブは女王同様に外を見る。
「門が…突破された…」
門の突破。
これを意味するのはこの城の最大防壁である壁が壊されたということだ。
壁の修復にかかる時間は10年かけてやっと半分修復出来るほどのスピードだ。
今世の中で知られている中の最強硬度を誇る鉱石、グランドクリスタル。
これを駆使したためである。
「相手にこれほどまでの核兵器があるとは…」
「いえ、正確にはただの核兵器じゃありません」
「どうゆうことでしょうか?」
リザーブは女王の発言に疑問を覚えて目を細める。
「それは」と女王が言葉を続ける。
「敵も一機のミサイルにグランドクリスタルを駆使しているのでしょう」
「なんと!」
グランドクリスタルは同じ物質意外では壊れない。
正確にいえばグランドクリスタル意外ではグランドクリスタルを砕くことは不可能なのだ。
もともと入手困難なこの鉱石は表で出回ることもない。
「それほどの相手だと言うのか…おのれ死神!」
「死神…あなたはそこまで私を責めるのですか」
その言葉は消えて無くなりそうなほどに小さく、弱かった。
一人じゃなにかと心配なのでアドバイスなどお願いします。