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プロローグ「君への願いが届くなら」
ある建物の中にはある男一人がいた。外には空中車が飛び、店は浮かび、「何かしら」の「何か」が飛び交っている。
その建物は、他の建物とは見た目が一風変わっていた。浮いていない建物といえばここぐらいであろう。そしてある男は、白衣をまとっており、かなり衰弱している。
「ついに、きたか」
男はそうこぼし、咳き込みながら機械の前に向かった。男は20~30歳ほどの見た目で、背が高い。
機械にはガラスのカバーが付いており、中には「人」がいた。否、「少年」がいた。
「ここまで、俺は走った。やれるだけを尽くした。あとはお前に任せる」
少年は眠っており、聞こえるはずもない声に耳を傾けるかのように、ただ静かに眠っていた。
男はこの世のものとは思えないほどの苦痛と吐き気、疲労感を感じ、軽く絶叫した。そして、自らを永くないと悟る。
「いってこいっ……願いが、届くといいな。そして……俺の願いも届けてくれ」
────「飛んでこい、ライヤ」
スイッチが押されると、機械の中の青年は光って消えた。まさに閃光のように、消えた。
そして男はその場に倒れた。