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第十二話「ばっちりな品定め」

anotherも投稿予定です。

 次は、どこだ。

 さきほど、ライヤは布団コーナーで雫を発見したと思った。だが、そこには誰もおらず、「それ」が残されていただけだった。

 ライヤは思う。いい子だな、と。


「んー、次に隠れるっつーと…………あ」


 ライヤは、何かに気づいたようだった。布団売り場でもなく、ましてや店の外ですらないはずの、ある場所に。

 次は、そこに向かうらしい。

 さて、早く向かわねば____。


 ライヤは気を集中させた。体が5センチほどだけ浮く。

 素早く移動したい。その一心で、ライヤはこの移動法をとっさに思い付いた。

 考えてみると、空を飛ぶ時の高さ、速度、方向旋回は自由自在だった。ライヤはそこに着目した。


 高さを「5センチ」、速度を「普通に走るより速いくらい」、方向旋回は「小回りが良くきく」ようにすれば、それほど怪しまれる事なく、力を利用できるはずだ。


 これがまた、そのもくろみは見事にヒットした。

 小回りが異常なほどよくきくのだ。もしかしたら普通に足で移動するよりも快適かもしれない。そしてまた、速度も、高さも丁度良く、すごくマッチしていた。

 これからはこれを使ったほうがいいかもしれない。


 さっき使いはじめたときから、一切人に気にされないのだが、客が少ないのもあって、ばれる心配は無さそうだ。

 そう考えている間にも、次の地点に到着する。


「着いたぞ。漫画売り場!」


 そこは、なかなかの種類が揃っている漫画コーナーだった。

 もうここしかないと思う。なにせ、高く、人が隠れられるような物があるのはここくらいしか残っていない。さっきの布団はかなりいい案だったと思うのだが、今度こそ当たりだろう。


 ここには高い本棚が沢山あり、少し複雑にいりくんだスペースになっている。そのため、棚と棚の間に、少し狭い隙間が数多く自然とできる。ここを集中的に狙う。


 そしてライヤはしばらくその売り場を動き回り、ようやくそれっぽいところを発見した。五分くらい探しただろうか。

 それにしても、広い。


「広すぎんだろぉ!?どんだけ広いの!?フリマくらいの敷地はあると思うけど!!」


 あの少女は、一体どれほどの時間と頭脳を使って、この店のスペースを全て覚えたというのだろうか。ライヤでも、流石に今日で全て覚えろ、と言われれば気が遠くなる量の情報だ。

 うかつに下手な道は通ってはいられない。

 最短距離で向かう。そして、ある場所を見つけた。


「次こそ……!ここに決めた!でてこい雫!」


 ライヤはやっとのところで見つけ出した隙間に向かって吠えたてる。その隙間は、少年漫画と話題単行本の棚で挟まれた場所であり、正面には人気漫画のアニメ化決定の垂れ幕がかかっていた。

 裏側は壁であり、抜けることはできない。当たりだとしたら、一網打尽にできる。そしてその垂れ幕の前には、一つ、積み木のブロックが落ちていて__。


「お、りゃぁっ!!」


 ライヤは、その垂れ幕を思い切りこえた____。




 ______。光、が。光が、瞬く__。



「……ふぁぁ?また、光…………?ま、まさかっ」


 何かを思い出し、すぐさま足元の確認をする。


 …あった。また、見つけた。今度は、いくつも、複数。


「またまた、遠回し……。……優しいな、雫。今度、こそ……見つける!……く、うっ___。」


 頭痛がした。また、その冗談で済むような、済まないような痛みに、しばらくライヤは苦しんだ。

 しかし、すぐに顔色は良くなる。まるで、さっきまでの痛みさえ、わけでも無かったかのように。


 早くしねぇと。

 急がねぇと。

 仲間を、助けねぇと。ケンを、実夏を。


 全ては夜ご飯のために。


 またそれは、どこかで感じたような気持ちであった。懐かしいような、あるいは________。

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