踊り狂う人々の中
整頓された洞窟の中で住人がゆらめく。踊り疲れて、ただ夢の中にいるダンサーなのだ。印を見つけたジャガーが、しつように侵入を試みる。恐るべき粘り強さ。死者さえも脅えるサーベリン。どこにでもいるジャガーではない。目が赤く光り、姿を見たものは3日以内に失明すると伝説がある。狂えるサーベリンの毛皮に勇者の血がついている。無謀な哀れな女の赤い液体。12人の盲者は高らかに歌い上げる。
「かのもの神を食い殺し神をその身に宿し、天界島の長となる ジャガーのために踊るのではない サーベリンのために踊るのだ 私は種族の長でない サーベリンはうなる 私は1者なのだ サーベリンは高らかに宣言する」
一音ずつ発音する12人でイチとなる塊はもう溶け合って、サーベリンの信徒となる。もうサーベリンは、神となったのだ。崇めるものを持った神。人間的な足元に目をやる存在ではない。ただの数字の集合体なのだ。5を表すのもサーベリン。10を表すのもサーベリン。全ての数は、サーベリンに支配されている。妖しい結末が近づいている。元気のない幼子を生贄として捧げるのだ!!長は言う。サーベリンは、それを侮辱ととって、長たちの一族を数に無関心なものに変えてしまった(ヒトコブラクダとか、ハリネズミとか)。ただ、幼子はサーベリンのもとで、愛情という名の崇めを受けて育った。幼子は世界のことを何も知らないが、サーベリンについては博士号をとれた。雷が落ちると、皆は数を数え始める。123456789101112。止まった。サーベリンが、鳴くのをやめた!!歓喜の歌!!皆は雨の中踊り狂う。フェイスペインティングをしたシャバラガンがサーベリンに食ってかかる。「いつまで安穏としているつもりだ!!俺はお前に挑戦する!!」この手の厄介ごとは、内々に処理される風習だった。この時ばかりは、大胆な賭けにのるものが多かった。それほど、皆は挑戦を賛美した。勇気を崇めた。ものを崇めるのではなく、精神を崇める高貴さに皆が打ち震え、皆が滅びていく。
シャバラガン 挑戦するもの 挑戦を暗喩する存在 幾多の失敗を得て ついにまぎれもない勇者となる かつての勇者たちと違う やつは失敗を知っている やつは痛みを知っている もう時間だ!!自由を決する時が来た!!サーベリン!!どこだ!!シャバラガンは叫ぶ。その瞬間稲妻が走り、シャバラガンの周りを打ちうける。おうおうおう!!シャバラガンは猛る。炎が辺りを包み、漆黒が暁に変じる。獣たちの黄昏が始まるのだ。父さん!!父さん!!母さん!!母さん!!いや、私の全てだったものよ!!シャバラガンの大音量を全ての生き物は聞いた。シャバラガン!!怒りの声が響く。鉄の意志の前にサーベリンは疲れ切っていた。サーベリンは、誰にも負けないが、自分自身に勝つことはついに叶わなかった。