6、作戦本部の舞台裏(side綾子)
おまけ的な位置づけで、短いです。
「ニコを、ニコをお願いします」
その言葉に返事はなかったが、頭を上げると遼一の姿は見えなかった。
一分一秒でも惜しいということだろう。
「最後の、ちょっと選挙っぽくなかった?」
葵がぼそりといった感想には、綾子も同感だった。
少しやり過ぎてしまっただろうか。
「それにしても・・・ここまであんたが手の込んだことやるなんてね」
「うん、私も自分にびっくりしてる」
綾子は人の恋愛に首を突っ込む方ではない。
それは、友人の相談に乗ってあげたことで余計にこじれて綾子も巻き込まれ、最終的に綾子がすべて悪いかのような噂をばらまかれて孤立した過去があったからだ。
それ以降、人の恋愛話は聞いても、かかわるようなことは一切しないようにしてきた。
ニコを除いては。
「だってニコのためなら、できちゃったのよ」
「さすが、三顧の礼で迎え入れただけはあるね」
「三どころじゃなかったけどね」
綾子とニコの出会いは大学入学後すぐだった。
校内を歩いていたら、ニコに呼び止められたのだ。「そこの美人さん!私の恋愛指南役になってください!お願いします!」と。
「あー、頭おかしい子が来たわーって思ったなー」
当時のことを思い出し、ふふっと笑う。
当然綾子は断ったのだが、ニコは何度も何度も綾子の前に現れては、頼み込んできた。
そして最後は根負けした綾子が、ニコに付き合うようになったのだ。
後からニコに、どうして綾子を選んだのか聞いてみたら、「だってうちの学年で一番美人さんだと思ったんだもん。超絶美人さんに教えてもらったら、遼ちゃんを落とせるかもしれないし!」と単純明快な答えが返ってきた。
「それにしたって、いつ月夜くんとアドレス交換してたの?」
遼一の休日の行動に関する情報ソースは月夜だ。
それが無ければ、こうはうまく行かなかっただろう。
「え?海に行く前日、ニコの家に泊まったでしょ。その時」
月夜と顔を合わせたのはそれが初めてだったが、こんなこともあろうかと連絡先を交換しておいたのだ。
「抜け目なしだね、綾子サン」
「葵サンこそ、なかなかの演技力でしたよ?」
「だってニコのためだもの」
「そうね、ニコのためだもの」
結局2人の行動基盤はそれなのだ。
「さーて、あと20分くらいしたら、電話かけますか」
「遼一さん、怒るかな?」
「さぁねぇ。怒られるくらい、何てことないわよ」
「ニコのためだもんね」
にっこり笑って葵の言葉を肯定すると、とりあえず落ち着ける場所を探す。
一仕事終えた後は、甘い物が食べたくなる。
「喫茶店でも入って、スイーツタイムと行きますか。エネルギー補給するぞー!」
「はいはい、お供しますよ」
この行動が、どういう結果に結びつくかは分からない。
人の恋愛に首を突っ込むなんて、あまり褒められた行為ではないだろう。
でも、後悔はしていない。
大切な友達のために、できる限りのことをしたと、自負しているから。
(願わくば・・・ニコの想いが伝わりますように)
夜に続きを投稿予定です。




