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婚約破棄宣言

書いてしまいました。「流行りらしいのを書いてみたかった。誘惑に負けた。」と作者がぼやいています。

レビューでも感想でも批判でもメッセージでも何でもどうぞー♪

「スザンヌ・ド・フィーネエッタ!!お前との婚約はこの場をもって破棄とする!!」



大勢の貴族の身に纏われた華やかなドレスや礼服がシャンデリアの光の下に煌めく、盛大なダンスパーティーのその最中(さなか)

ダンスホールのど真ん中という迷惑極まりない場所で、目が痛くなる程ギラギラ輝く金髪を持った背の高い青年が高らかに宣言した。


彼の一歩後ろに控えるは数人の、やはり同じように輝く金髪を持つ青年たち。但し彼らの存在感は、彼らの前に立つ青年とは比べものにならないほど希薄で、影のようだ。彼らの背丈はまちまちで、中には少年と言える者も混じっているように見える。


そして、彼らに相見えている…というには少し離れた場所、壁際に立っていた栗色の髪の令嬢。じっと見ていても分からないくらいにほんの少しだけ眉を動かした以外に反応を表さない彼女が、たった今婚約破棄を申し渡されたスザンヌ・ド・フィーネエッタである。



「そして、我が妃にはルーシーを迎える!!」


令嬢の無反応さを気にした様子もなく、金髪の青年はまたもや声を張り上げた。


青年が後方を振り返ると同時に、そこに立っていた数人の青年たちはスッと音もなく左右に避け、そこに一人の小柄な少女の姿が現れた。いや、本当は今までもそこに居たのだろうが、彼らに囲まれていたためにそれまで見えなかったものと思われる。


森を思い出させる深緑の髪のその少女を、先程からただ一人話している金髪の青年はグイと抱き寄せて、それからスザンヌを睨んだ。


「お前がルーシーを苛めていたことは分かっている!おおかた、王太子の婚約者と公爵家の地位に傲り高ぶり、平民の身分である彼女を見下げて嫌がらせをしたのだろう!だがそれも今日で終わりだ!」


貴族・王族の婚約破棄は、一大事とは言えどの国にもどの時代にも転がっている話であるし、さらに言うとこのようなほぼ一方的な弾劾(冤罪の例も多い)が付随する場合もない訳ではない。だが今回に限っては、他の数多の例と大きな違いがある。


「スザンヌ・ド・フィーネエッタの罪は裁く必要があるので、私が今この場で直々に罪状を述べ、裁いてやる。まず一つ目、ルーシーを庭園の池に突き落とした。二つ目……三つ目………」


それは、王太子が話している間に誰一人として声を上げず身動きもしていないことだ。称賛の声も非難の声もない。ダンスのポーズなども解かれ、皆が「気をつけ」の姿勢だ。端から端が見渡せない程広いダンスパーティーの会場内には何百人という人がいるというのに、身振り手振りを加え話し続ける王太子の声以外物音一つしない。人は大勢いるのに音がないという、蝋人形の集いのような不気味な光景。



どんな物事にも原因がある。


もちろんこの光景にも理由がある。


どの大陸からも大きく離れて海に浮かぶ、島まるごと一つの王国であるラスパニエール王国は現在かなり特殊な状況にあり、絶対王政が敷かれているのみならずラスパニエール王族が必ず魔力を持って生まれてくるという現象が発生している。魔力とは「ただ願うだけ」で対象とした人間にどんな影響でも与えられるという、暴力的なまでに無条件に発せられ且つ凄まじい威力をもつものなのだが、魔力を持って生まれるのは何故か王族のみ。そして、恵まれた地位と財を生まれながらに手にしている王族が望み通りにならぬものはなく、もし望み通りにならなければ「そんなものは消してしまえ」と考える…。それが示すことは即ち、「王族は下々の者の手を借りずとも気に入らない人物を自ら簡単に始末できてしまう」ということ。


王族に反抗・反論・意見した者が始末されるのは当然のこと、酷いものになると、やれ「目つきが気に入らなかった」だの「くしゃみのせいで話を遮った」だのといった理由で王族に始末される者もいた。


そこで皆は学んだのだ。


「王族の機嫌を損ねてはならぬ」と。


『 求められる時に求められる反応をすべし。それ以外の動作は時と場合に応じつつも最小限にとどめて王族の者に目を付けられないように。王族が話し始めたなら、命が惜しくば喋るな動くな目を合わせるな。』


何十、何百もの犠牲者を出して得られたこの教訓を守らない者はいなかった。王族の一存で生が終わることに皆が恐怖し、しかし王族が主催する行事に貴族が参加しない訳にもいかず、王族の視察の時に平民が歓待しない訳にもいかないのでやむを得ず王族と同じ場所にいることになれば教訓は暗黙の了解で例外なく適用された。


いつの間にか王が公の場から姿を消し、王太子が王代理として国政から何から全てを思うがままにしていたところで、国民の対応は何も変わらない。王太子も「魔力を持つ王族の人間」ということに変わりはないのだから。



その結果が、この不気味な光景である。


弾劾される令嬢に同情していても、例え彼女がただ因縁を付けられているだけで無実だと知ってはいても、自らの命を賭けてまで救ってやろうと考える者はなかった。ルーシーという少女を王太子が気に入り、手にいれたがったというだけで、邪魔になった婚約者を身勝手に排除しようとしていることに気付いていたって誰も「気をつけ」の姿勢から動かない。誰だって我が身が可愛いのだ。


ちなみに王太子は、でっち上げた罪状をもとに令嬢を無意味に弾劾している間も魔力を行使している。会場にいる蝋人形のような〈その他大勢〉ごときに無駄な力は使わず、魔力の対象は二人だけ。与えている影響は「言葉封じ」と「身体硬直」。


つまり、今魔力対象にされている二人は自らの意思に関係なく強制的に喋れなくされ、身体の自由を奪われている。



「ーー以上の罪状により、スザンヌ・ド・フィーネエッタは有罪である。」


一人で延々と捲し立てていた王太子はそこで漸く言葉を切り、ニヤリと笑う。


「言い渡すまでもないが、王太子であり直に王となる私の未来の妃に害なす者などこの世に存在する価値はない。よって、刑はこれだ!」


「地獄へ行け!」


この言葉に、一体どれ程の人間の命が奪われてきたのだろうか。思考一つでできる刑を、この王太子はわざわざ他の者に知らしめるかのように言葉にしてみせる。その言葉と同時に、始末される者はその場から消え失せて「地獄へ」身体ごと連れて行かれるのだ。


無言のまなざしを壁際のスザンヌの方へそれとなく向けていた者たちはそれを見て悲しげに……





………ならなかった。





何故かスザンヌは、先程と同じように、壁際に相も変わらず立っていた。


しかも、どうやら行儀悪く壁に凭れていたらしい彼女はヨイショと身体を起こし、なんと王太子との距離をツカツカと歩いて詰めた。


それを見ている人々の顔色が目に見えて悪くなる。王族の目の前に歩み寄るなんて狂気の沙汰、自殺行為だ。まあ、もう彼女には既に死がもたらされた筈なのだが。


「な、何故だ!何故魔力が効いていない!!」


王太子が驚愕に顔を染めて叫ぶ。


「何故お前がまだここにいる!何故動けるのだ?!お前には身体硬直の……」


(やかま)しい』


令嬢が初めて口を開いた。零れ出た言葉は冷たく響き渡って、会場全体を震わせた。


「その上喋れる、だと…?!言葉封じをかけた筈だ!馬鹿な、私の魔力が効かぬ者などいる訳が…」


しかし尚も王太子は喚き続ける。

それらの言葉をロクに聞いていないらしい令嬢は目の前で喚き続ける王太子を一瞥し、王太子が抱き寄せている少女を見、さらにその後ろに立つ金髪の数人の影のような青年たちを見やって、「そうだ」と一人得心したように頷いた。


『移動させよう』


令嬢がそう呟いた瞬間、会場からそれらの人物…金髪王太子と緑髪の少女と金髪の数人、そして令嬢…は忽然と姿を消したのだった。


短編じゃないの?なんでページまたぐの?

……知るか。過去の雛北に聞いて。w

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