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第七話 直江兼続

 それからは、掃部にひたすら未来のことを語り続けた。車や鉄道、飛行機のことや東京、この時代でいえば江戸の大発展、テレビやラジオにインターネット、そして政治体制が民主主義だということ。


 掃部は、その全てを目を輝かせながら、興味津々で聞いていた。だが「それがしの名前は有名でござるか?」という質問に、俺は困った。「残念ながら、有名じゃない」と答えると、少し悲しそうな表情を浮かべていたが……すぐに、「では、これからなにか成し遂げて見せましょう!」とすぐにポジティブ思考になった。話が終わると、また、もう夕暮れになっていたので、俺は家というか城へ帰った。だけど……また、必ず行こう。あの子も気になるし。


 翌日、俺は湯漬けをかきこむと、伏見城下へ向かおうとした。すると、小姓に呼び止められた。左近が俺と一緒に伏見へとついていくお供のものを推薦していったらしい。磯野平三郎・渡辺勘兵衛・塩野清助の三人と、そして……左近の息子の友勝君だ。最初の三人は、見た目も体もいかにも屈強な士という感じだが、友勝君は、左近の風貌を残しながら、少しやさしげなつくりの顔だ。いかにも、初々しい。


「殿! 伏見までお供いたします!」と磯野平三郎。

「途中で山賊どもが殿を襲おうものなら、すぐに片づけて見せます!」と渡辺勘兵衛。

「殿は安心して、直江殿との密議のことに集中してくだされ!」と塩野清助。

「左近の息子、友勝にござりまする。若輩者ではございますが……お守りいたします!」と友勝君。


 四人とも、やる気まんまんだ。俺は四人に加え、徒歩の護衛の兵士、十人を連れて……朝五ツ、今でいえば朝の八時くらいに伏見城へと向かった。


 勘兵衛の期待を裏切り、途中で賊の類には一切出会わなかった。他の三人も武勇の見せどころと思っていたのか、残念そうだった。だが、俺にとっては、きわめてよかった。ちょっと、心臓に悪い。


 無事に俺たちは、だいたい正午ごろに伏見城下についた。大名屋敷のほうへ俺たちは向かったが、それから困った。俺は、直江兼続の屋敷の場所なんて分からない。もちろん、供も全員分からない。その辺を歩いていた町人に話をきいて、ようやく屋敷にたどり着いた。


 屋敷は、なかなか豪華だ。掃部の屋敷と比べると、1.5倍ぐらい豪華だ。ともかく、俺たちは閉まっている門を叩いた。

 すると、すぐに門が開いた。門番は俺たちの姿を見ると、察したのかすぐに通してくれた。

 四人以外の護衛の兵士を庭で待たせることにすると、俺たちは屋敷の中へと入った。……どうやら、兼続が迎えてくれた。兼続は俺、つまり三成より数十センチ背が高い。しかもなかなかのイケメンだが、年のせいか、さわやかさと共に精悍な顔つきをしている。


「おお、石田殿。よくいらした。ところで、今日は……例の件で?」


 確かにもう、謀議を行っていたらしい。俺は勘で「そうだ」と言った。すると、さらに奥の部屋で話そうとのこと。その言葉に従って、俺たち、計五人は奥の部屋へと入った。


「さて……石田殿。いかがいたした?」


 兼続が尋ねてくる。俺は、左近に最初、説明したように兼続にも俺が以前の三成とは、体は同じでも、心が異なる、未来人だということを説明した。


「それは奇怪なことで……しかし、内府打倒の意に変わりはありませぬな、石田殿? といっても、前までの石田殿とは違うそうだが……」


 俺の簡単な説明を聞いたところで、兼続が念を押してきた。


「当然のことで」

「しかし……もう一度、計画の仔細を話さねばなりませぬな……」

「いや、結構。申しましたな、ワシが未来から来たと」


 俺は、知っている限りの未来からの情報を兼続に伝えた。それを聞いた兼続は驚いたようだ。


「なるほど……未来から来たとはにわかに信じがたいことですが……我らの(はかりごと)が後の世まで、伝わっているとは……して、結果は?」


 一刻も早く、結果を知りたいらしい兼続に正直な結果を話した。関ヶ原での決戦の敗北、上杉家の減封処分……それを聞いた兼続は失望の色を隠せないようだ。


「ですが……未来がわかっているのなら、それを変えねばなりませぬ。共に策を練りましょうぞ!」


 そう、兼続は言った。


 


 

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