第五話 動き出す情勢
それからは家臣と家族の自己紹介をずっと聞いた。まずは家族からと父親の石田正継、兄の正澄、その長男の朝成、次男の主水正、義父の宇多頼忠、義兄の頼重、妹婿の熊谷直盛、福原長堯の自己紹介を聞いた。他にも、俺には子供が五人もいるらしい。
次に家臣からの自己紹介、林半助・渡辺勘兵衛・小幡信世・高野越中・大場土佐・大山伯耆・森九兵衛・安藤直重・柏原彦右衛門・河瀬左馬助・八十島助左衛門・桑島治右衛門・磯野平三郎・河瀬織部・高野越中守・松田重太夫・山田上野介・山田隼人正・大橋掃部・杉江勘兵衛・平塚久賀・蒲生大膳・土田桃雲斎・樫原彦右衛門・水野庄二郎・荻野鹿之助・塩野清助・渡辺甚平……。主要な家臣だけでもこれだけいた……。すみません、ほとんど知らなかったです。
全員の自己紹介が終わり、解散するともう夕暮れが近づいていた。左近も自分の屋敷に帰り、俺は一人になった。小姓によると、俺は毎日、三回くらいタバコを吸っていたらしい。だが、それは今日でやめてもらうことにした。興味がないと言ったらうそになるが、未成年だし、健康に悪そうだからだ。
夕食を食べると、俺はすぐ寝た。部屋の外には、不寝番がいる。家康から派遣された忍者に暗殺されて、本戦前に死亡エンドは避けられそうだ。
翌日、俺は起床した。戦国時代の飯は一日二回、しかも11時らしい。なので、それまで手持ち無沙汰だ。今までの俺は、自室で書物を読んでいたとか。
部屋で書物を見つけ、開く。一行目から早速、読んでみよう……。読めない、読めない。草書体? で書かれているので、全く読めない。俺は、読書を諦めた。戦国時代の手紙書きなどは、祐筆という人が代行してたと聞いたことがあるし、問題ないだろう。うん。
その日は結局、ほとんど、なにもしなかった。普段なら家臣が登城してきて、朝食のお供をしたり、政務の指示を仰いだりするそうのだが、なんせ、今の俺はそれどころではない。政務は、一時的にお父さんの正継に任せることにした。もともと、俺の補佐役だったらしいし、留守の時は、トップとして指示を出していたらしい。それなら、大丈夫だろう。
その次の日、俺はまた普通に起きて……なにも、しなかった。朝食を食べ、なにげなく大広間で座っていると、左近が駆け込んできた。
「ん? 左近……どうした?」
「殿! 大変でござりまするぞ! 昨日、内府めが伏見城に堂々と入城したようでござる!」
「ええと……それが、なぜ大変?」
「なぜもなにも、殿を追い出して、自分が秀頼様の後見役だとぬかしておるのです! しかも、他の奉行に許可も取らずに、勝手にですぞ!」
「え? それは、なんとなくヤバイな……で、どうすればいいんだ?」
「……どうしようもありませぬが、情勢を知ることは大事でございます」
どうやら、家康が動き出したらしい。だが俺は、この佐和山城で謹慎中の身。どうしようもない、直江兼続と共謀していたという話は聞いたことがあるので、ぜひとも今回も共謀したいが、どこに行けば会えるんだろう?