第四話 家臣・家族会議
左近と一緒に大広間に到着した俺は、会議を開くので家臣・家族一同を呼ぶように小姓に伝えた。
それを聞いて、真っ先に現れたのは、家族の人たちだった。なにか言いたげな表情をみんな、していたが、全員集まってから話をすると言うと諦めたようだ。
それから、だいぶ待った。家臣もどうやら、みんな集まったようだ。息せき切って駆けつけたのか、いまだにハーハーといっている人もいる。なんか、申し訳ない。
俺は頃合いを見計らって、意を決して話を始めた。
「みんな、よく集まってくれた。実は重大な話がある……それは、俺は石田三成ではないってことだ!」
みんながざわめき始める。左近が俺の話を継ぐようにして続ける。
「左様でござる。今の殿は、昨日の殿とは、体が同じでも心が違いまする。その証拠に今の殿は……家臣の名前も顔もわからぬ」
左近の話がいったん、切られると家臣が一人立ち上がった。口髭を生やしたキリッとした男だ。
「殿も左近殿もなにをふざけていらっしゃるのです! 今は、そのようなことをしている場合ではありませぬ! 目を覚ましてくだされ!」
そう言われても本当のことなんだけど……
「えーと……あなたの名前は?」
「な……殿! 本当に悪ふざけはよしてくだされ! 蒲生頼郷でござりまする!」
「がもうよりさと?」
ざわめきが大きくなる。それを制するように左近がまた話しを始めた。
「これでみなも分かったであろう。これは、冗談などではなく、本当のことでござりまする」
するとまた、頼郷ではない、もう一人の家臣が立ち上がった。顔は、一言では言い表せないが、猛将という感じがひしひしと伝わってくる。
「それが本当だとしても……殿は殿でも、今までの殿とは違う殿……我らはどうすればよいので?……殿、それがしの名前は、舞野兵庫助でございます」
「兵庫助さんね、よろしく」
「兵庫助殿、安心してくだされ。今の殿は、未来を知っておりまする」
それから、左近は俺が前、話したことをそっくりそのまま、家臣と家族一同に伝えた。小早川秀秋の裏切りが致命的な一撃となって関ヶ原での決戦で敗れたこともそのまま。なんか、俺が説明するつもりだったのに左近がずっと話をしている。まあ、ありがたいといえばありがたいのだが。うまく、説明できる気が全くしなかったから。
その話を終えると、左近はさらに話をつづけた。
「今まで話してきたことは、あくまで一つの未来にしかすぎませぬ、今から、我らのやり方次第でいくらでも変えることは、可能じゃ! 頑張ろうぞ!」
それに呼応するように「オー!」という声が上がった。どうやら、みんなも納得してくれたようだ。左近の話もこれで締めくくりと思ったが……違うようだ。
「これにて、解散! と言いたいところござったが……まだ、することがござる。全員、自己紹介をせねば……」
……。それもそうだ。家臣や家族の顔も名前も分からないんでは、いろんなことに差し支えるだろうし、絆なんて生まれないだろう。どうやら、長くなりそうだ。