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第三話 相談

 それからは、左近に自ら事情を説明した。記憶喪失扱いにされているが、本当は俺は石田三成ではなく、未来から来た島清太郎という人間だということ、そして歴史では、三成は家康に戦いを挑み、破れ、そして処刑されたこと……

 

 左近も最初は、ふざけているのかと思っていたようだ。しかし、俺が説明を続けているうちに信じてくれたようだ。左近いわく、真面目な三成がこのようなおふざけを延々とするわけがない。とすれば、真実だろうと。 


「しかし……貴殿をなんと呼べばよいのだろう? 体は三成、心は未来から来た者……」


 俺の話が一段落したところで、左近が尋ねてきた。確かにそれは困惑して当たり前だ。

 島? それは同じ苗字だし、なんとなく紛らわしい。清太郎? うーん。やっぱり、体は三成なんだし……


「今のまま、殿と呼んでくれれば……」

 

 殿がやっぱり一番いいだろう。これなら、名前と体が一致しないという違和感もないし。


「なるほど……では、呼称は殿のままといたして……」


 左近が一度、話を切る。


「これからどういたす?」

「うーん。とりあえず……歴史通り、上杉家と連絡を取り合おうと思っている」


 つい、語尾に「んだけど」と付けかけたが、やめた。話し方も武将らしくするほうがいいんだろう。


「ふむ。それは名案ですな」


 左近も同意する。


「しかし……たしか殿の世界の歴史では、関ヶ原の本戦では一進一退の状況で戦いを進めていたところ、金吾中納言の裏切りで敗戦したとのこと。あやつをどうにかせねば、またその通りになるのでは? 」


 左近の言う通りだ。小早川秀秋、別名、金吾。彼の裏切りで西軍の敗北は決定的になった。もっとも、もう一人の裏切り者の吉川広家もどうにかしないと関ヶ原では勝てないだろう。


「ううん、とりあえず説得しよう。もとから東軍に内通していたらしい……」

「なに、内通? 金吾め……」


 左近が恨めしそうに天を仰ぐ。


「しかし……このような時には、家臣一同に、殿のことをしっかりと理解してもらわなければならぬ」

「それは、そうなんだが……さっき言っても、全く信用してもらえなかった」


 それは事実だ。いまだに左近以外からは記憶喪失扱いにされているだろう。未来のことは仲間に伝えておいたほうがいいだろう。場合によっては、態度があいまいなやつの脅迫や説得にも役立つはずだ。


「ふむ。それでは、この左近めが一緒に説明に上がりましょう」

「え? いいのか?」

「当然のこと。心が誰であろうとも殿は殿。その殿が内府などに負け、処刑されるなぞ、あってはならんことです」


 左近が言う。やはり、忠臣だ。これほど心強いことはない。俺は左近とともに大広間へと向かい始めた。着いたら、家臣一同と家族を呼ぶように言おう。いい加減に事実を認識してもらわなければ。俺は、石田三成、治部少輔ではなく、島清太郎というしがない未来から来た大学一年生だということを。この時代には大学なんてなかっただろうから、なんて説明するべきなのかはわからない。だが……未来を変えるにはこれが最善の策だろう。

歴史小説を書くのはこれが初めてです。ご感想、ご指摘を頂ければ嬉しいです。

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